1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入局 外科研修
(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年 岡村医院、医師として勤務し現在に至る
2012年 岡村クリニック開院
※計15年心臓血管外科医として勤務
大学病院および関連病院において、心臓血管外科医として勤務。
外科領域のみならず内科医としての経験を生かし、循環器領域疾患を始め、患者さんがお悩みに感じることなど気軽に何でも相談できるような地域のかかりつけ医院を目指す。
『ウィルムス腫瘍』は、特殊な小児がんのひとつです。同時に、小児三大固形悪性腫瘍のひとつでもあります。
この記事では、ウィルムス腫瘍とはどんな病気か、症状や転移の可能性について解説します。
ウィルムス腫瘍とは
1.ウィルムス腫瘍って?どんな病気?
腎臓に悪性腫瘍ができる
『ウィルムス腫瘍』は、子どもの腎臓にできる悪性腫瘍です。腎臓に発生することから『腎芽腫(じんがしゅ)』とも呼ばれます。
5歳までの発症が9割を占める
特に乳幼児に多く、全体の9割が5歳までに発症します。とはいえ、成人もかかります。また、まれに新生児に発症することもあります。
左右の腎臓のうち、片方にできることが多い
ウィルムス腫瘍の多くは、左右にある腎臓のうち片方に発症します。両方発症するのは5%ほどです。
また、ウィルムス腫瘍を発症する割合は、1.5万人に1人ほどです。性別による発症割合の差はほとんどありませんが、女児の方が少し多い傾向があります。
2. ウィルムス腫瘍の原因
ウィルムス腫瘍の原因は、多くが『遺伝子異常』です。
『がん抑制遺伝子』という遺伝子があり、そこに異常があると、がんが生じます。
また、遺伝子異常によるその他の合併症も多数報告されています。たとえば、腎臓の奇形や、泌尿器科系の病気、手足の奇形などが挙げられます。
3.ウィルムス腫瘍の症状
無症状のことが多い
ウィルムス腫瘍にかかっても、ほとんどが無症状です。子どもの自覚症状から気づく、ということはほぼありません。
お腹のしこりや、お腹のふくらみが生じる
親や周りの人がわかる症状としては、『お腹にしこりがある』、『お腹が少し大きくなっている』などです。わずかな変化で、なかなか気づきにくいです。
そのほか腹痛や嘔吐、発熱、血尿などが生じることも
そのほか、『腹痛』や『嘔吐』、『発熱』、『血尿』などの症状があらわれることもあります。また、子どもが不機嫌で調子が悪いような場合は、なんらかの不調を訴えていることもあります。注意して見守りましょう。
ウィルムス腫瘍の治療法について
1.まずは小児科や内科を受診!
子どもの異変に気づいたら、小児科や内科、総合病院などを受診し、医師に相談しましょう。
2.ウィルムス腫瘍の検査
超音波やCT、MRIを使って検査する
ウィルムス腫瘍が疑われる場合、『超音波』や『CT』、『MRI』をもちいて検査します。
超音波検査では、腫瘍を確認するとともに、周りのリンパ節の状態も確認します。CTやMRIでは、腫瘍の場所や大きさ、リンパ節への転移の有無など、詳細な検査をおこないます。
肺など、他の部位の転移を調べることも
そのほか、肺転移について調べるために、肺の『X腺検査』や『CT検査』を行なうこともあります。同様に、肝臓や骨、脳などにも転移が考えられます。症状に合わせて検査を実施していきます。
3.ウィルムス腫瘍の治療法
摘出手術
ウィルムス腫瘍にかかると、ほとんどの場合で手術が必要になります。
腫瘍の大きさと転移の有無が、手術で腫瘍だけを摘出するのか、腎臓ごと摘出するのかの決め手になります。
<腫瘍が大きくなく、転移もない場合>
腫瘍がそこまで大きくなく、転移もみられなければ、先に抗がん剤治療を行ない、腫瘍を小さくしてから摘出することが多いです。先に腫瘍を小さくすることで、腎臓をそのまま残して、腫瘍だけを摘出できるようになります。
<腫瘍が大きく、転移などがみられる場合>
腫瘍が大きい、転移などがみられる、といった場合は、腎臓ごと摘出することもあります。その場合も、抗がん剤治療と並行して手術をすることが多いです。
放射線治療
<ステージ1~2の場合>
ステージ1~2であれば、基本的に放射線治療を行なう必要はありません。しかし、腫瘍の予後が不良の場合は、ステージ1~2であっても、放射線治療を行なうことがあります。
<ステージ3~4の場合>
ステージ3〜4の場合は、放射線治療を行ないます。
放射線治療の目的は、腎臓を超えて広がった腫瘍や、手術で完全にとり除けなかった腫瘍を減らすことです。
化学療法(抗がん剤治療)
先に解説したように、抗がん剤治療は、手術と併用されることが多いです。
手術の前に少しでも腫瘍を小さくするために行いますが、小さくならない場合は、摘出手術や放射線治療を行なうことがあります。
ウィルムス腫瘍の転移や生存率について
1.転移の可能性
ウィルムス腫瘍は、転移する可能性があります。
血液の流れにのって転移していく(『血行性転移』)ため、肺や脳、肝臓などに転移することがあります。
2. ウィルムス腫瘍の生存率について
ウィルムス腫瘍は、早期発見で転移がない、もしくはステージ1の場合の、2年生存率は95%です。予後の悪い腫瘍の場合の2年生存率は、85%~90%と考えてください。
ただし、特殊な場所に腫瘍ができている、他の病気を併発しているなどの場合には、生存率が変動してきます。
まとめ
ウィルムス腫瘍は、子どもに多く発症する病気です。
なかなか気づきにくく、発見が遅れがちですが、早期発見が大切です。子どもに気になる症状があれば、すぐに小児科や内科を受診しましょう。
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