自分の声が今までと違う!?変だな…と思ったら「音声障害」の可能性も【言語聴覚士コラム】

音声障害
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執筆者

澤田久美子 先生

言語聴覚士

北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻

耳鼻咽喉科ののはなクリニック
横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属病院 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属第三病院 耳鼻咽喉科

こんにちは、言語聴覚士の澤田久美子です。

私たちは普段、当たり前のように声を出し、言葉を発しています。しかし、風邪をひいたり長時間声を出し続けたりすると声がかすれ出にくくなることがあります。

今回は、声はどのように作られるのか「発声のメカニズム」に触れ、その後に成人の音声障害について説明することで理解を深めていただきたいと思っています。

そして最後に、小児の音声障害について解説していきます。

目次

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声とことば

人間は話しことば(speech)を用いてコミュニケーションをとることができ、その話しことばは、声帯よりも上の共鳴腔(口腔、鼻腔)で作られる音で、文字に対応した意味を持った音となります。

これに対し、音声(voice)は喉頭の内部の声帯のレベルで作られる音であり、声をきけば、その人の性別や年齢、あるいは感情などがある程度推定できます。

発声の解剖

ここで「発声」について解説していきます。下記のイラストをご参照ください。

肺からの呼気が声帯で原音となり、共鳴腔(体の中に存在する声が反響する空洞部分のこと)で音に変化を加えることで声が作られます。

息を吸うと肺が膨らむのですが、膨らむためには吸気筋(息を吸う際に動く筋肉のこと)といっていくつかの筋肉が働くことで、胸郭(肋骨)が広がり、横隔膜が下に下がることで肺が広がります。

息を吸って、今度は吐きますが、吐くときは横隔膜は弾性の力で戻ります。肺も胸郭も復元力のみで行われ、呼気筋は働きません。

ちょうど、膨らませた風船の口を離すと何もしなくても空気が出て風船がしぼんでいくのと同じ原理です。発声時には肺や胸郭の収縮の程度を調節して、呼気圧を一定に保つ操作が常に行われます。

そして、肺から出された空気は、次に喉頭の中にある声帯を通ります。

女性ではわかりにくいのですが、男性ではちょうど喉仏のところに声帯が位置しています。声帯は層構造をもち、硬い筋肉(声帯筋)をやわらかい粘膜(声帯粘膜)が覆っています。

声帯は2枚の扉のようなものを1秒間に120~300回というスピードで開けたり閉じたりして、呼気の気流の疎密波を作ります。これが、呼気流が音に変わる瞬間、つまりここで初めて空気の流れが「声(原音)」になります。

声帯で作られた音は、声道を通る間に日本語のそれぞれの音になります。声道とは、喉の奥や口腔、鼻腔などの空気の流れが通る道で、声道の形の変化によって、さまざまな音が生み出されます。

声の生成のメカニズム

ここでは、声はどのようにして作られるのかを解説します。

木管楽器のリードを想像してみてください。木管楽器では吹き口のところにリード(発音体=振動体)が付いていて、この部分が音源となっています。

オーボエやファゴットのリードは二枚のごく薄い木片を重ね合わせたもので、吹く息がその隙間を通る時、息の圧力とベルヌーイ効果のバランスでリードが開閉して気流が断続されます。その結果、空気の粗密波が生じて音が作られます。

正常な声が作られるための条件

正常な声が作られるためには、声帯のところで規則的な振動(準周期的な声門開閉運動)が起こる必要があります。そのための条件として以下のようなことが挙げられます。

①声門(吸気時に大きく開き、発声時に閉じる)が適度に閉じていること
②肺からの呼気が声門を通過して流れること
③声帯に適度な緊張があること
④声帯粘膜がやわらかく、十分な粘性や弾性があること
⑤声帯粘膜が適度に濡れていること
⑥左右の声帯の形や性状が対称的であること

これらの条件が整っていれば正常な音声が得られます。

また、声は音であるので、高さ、強さ(大きさ)、音色(音質)などの性質を持っています。声の高さや強さは、声帯の性状、発声する時の生理的な調節によって変化します。

また、音質の異常は専門的に嗄声(させい)と呼ばれ、音声障害の主症状となることが多いです。

音声障害とは?

風邪をひいた時や長時間話した時に、自分自身の声が普段と変わってしまったと感じることがあると思います。また、人の声を聞けば、その人がその人の年齢、性別からみておかしいとか、普通の人の声と違うと判断することはそう難しいことではないと思います。

このように、これまでの状態と変わってしまった、あるいは声が正常範囲からズレている、という状態を総合して音声障害と呼んでいます。

特に、音質の変化、異常(嗄声)が、ここでいう“ズレ”の主体となることが少なくありません。また、声が自分のニーズに合わないとか、声を出す時に不快なこと、例えば痛みなどがある場合も広い範囲で音声障害と言えるでしょう。

成人の原因疾患の内訳

「廣瀬肇監修『STのための音声障害診療マニュアル』2008」によると、音声障害と最終的に診断されるのは、耳や鼻の病気を含めて耳鼻咽喉科外来を受診する患者の約5%程度ですが、声の変化、異常は感冒(上気道炎)から喉頭がんに至るまで、多くの疾患の初発症状として訴えられることがあります。

喉頭の悪性腫瘍と診断された例や、単に咽頭などの異常な感じを訴えるだけで音声障害とは関係ないと考えられた症例を除くと、音声障害の原因と考えられる要素は以下の3つに分けられます。

①声帯の器質的異
②声帯の運動麻痺
③音声障害があるのに検査上声帯にははっきりした異常が認められなかったもの

①には声帯ポリープ、声帯結節が多い傾向にあります。②については、その原因はさまざまであり、麻痺の程度や声帯の固定位置も異なります。

③については、機能性発声障害および痙攣性発声障害が多いとされています。このグループに属するその他の病態として、変声障害や運動障害性構音障害に伴う音声障害、性同一性障害なども含まれています。

成人の音声障害はどうして起こるのか?

音声障害が起こるのは、正常な発声メカニズムがうまく働かないためであると言えます。主として声帯レベルの変化によって発声障害が起きていることが多く、声帯震動の異常=発生メカニズムの破綻と考えられます。

この場合の異常とは必ずしも「振動パターンそのもの」の異常をさすのではなく、例えば、男性の声が高すぎたり、逆に女性の声が引きすぎるというような時には、振動パターンは正常で、単にその周波数(声帯振動数=声の高さ)だけが標準より高かったり低かったりしているのです。

このような症例を除くと、ほとんどの症例で声帯が正常に振動しないことが音声障害の原因となっています。具体的には以下のことが挙げられます。

①声門が十分に閉じなかったり、強く閉じすぎたりする
②声帯の構造的、物理的な性質が変化してしまう
③左右の声帯の対称性の異常
④その他、緊張度の異常など

成人の代表的な5つの病態

①声帯結節

声の乱用があると、声帯前1/3の部分が繰り返し激しく衝突し合うために、その部分が限局的な粘膜の肥厚(いわゆるタコ)が生じる。声変わり前の男児や職業的に声を使う若い女性が多い。

②声帯ポリープ

声帯粘膜内の微細な血管が破れて出血し、その部分が球形に膨らんだ状態。はじめは血豆状であるが、時間が経つと肉芽のようになる。

③喉頭炎

声帯粘膜の炎症で、粘膜の発赤・浮腫・分泌物の増加などがみられる。

④ポリープ様声帯

声帯粘膜直下に滲出液が溜まって膨らんだ状態。喫煙歴の長い人に多い。

⑤声帯溝症

声帯の内側縁(振動部分)に溝が生じた状態。声帯縁が硬くなって声帯震動が妨げられ、また声門閉鎖が不十分になる。先天性の場合もあるが、老化によるものもあり、原因はさまざまである。

小児の音声障害

小児の音声障害は時期により原因が異なります。

新生児から乳児期

先天性形態異常(喉頭横隔膜症など)、声帯運動障害(声帯麻痺や輪状披裂関節強直症など)、喉頭腫瘍(乳頭腫や血管腫など)などが音声障害の原因となります。

また、一見関係なさそうに思われますが、難聴があると言語発達が遅れることが多いのですが、これとは別に、幼児期に自分の声を聞いて発声の調節法を身につけることが最初からできないため、発声も異常になります。

難聴があると、ふだんの声が大きくなりがちで、自分の声が聞こえないほど難聴が重いと、発声活動そのものが発達しない傾向があります。

幼児期から学童期

小児結節とも呼ばれる声帯結節が最も多くみられます。活発な男の子に多く、10歳以下に発症のピークがあります。大声で怒鳴る、泣きわめくなどの声の乱用がきっかけになり、野球やサッカー、剣道などのスポーツを行っていることも多くあります。成人でありふれた疾患である声帯ポリー プや声帯嚢胞は少ないです。

変声期以降

徐々に成人と同様な疾患による音声障害がみられるようになります。この時期に特徴的な疾患として、変声期の経過が異常で、声の翻転や裏声が遷延化する変声障害があります。

声変わりは第二次成長の一つの生理現象で、思春期のはじめに現れ、男子では14~15歳頃に、女子ではこれより早期に始まります。男子では喉頭上下前後径が急速に増大し、喉頭隆起が前方に突出します。

女子では主に上下に伸びます。変声期に声はガラガラのしわがれ声となり、響きが異なりますが、通常3ヶ月から1年以内に消失し成人の声に移行します。これにより男子は声域が1オクターブ低下、女子は低音域が3度程度低下します。

検査

喉頭病変を確認するために喉頭内視鏡検査を行います。しかし、特に小児のように検査の協力が得られにくく内視鏡検査が困難な場合は、CTやMRI、超音波などの画像検査を行います。

その他、聴覚的印象評価(声のかすれ具合の評価)、声の高さと強さの検査(話声位、声域などの検査)、空気力学的検査(最長持続発生時間、声門下圧の測定など)、音響分析(声のゆらぎ、雑音成分の分析など)など検査実施可能なものを行っていきます。

治療としては発声練習を行います。低い声を出すように練習を行い、甲状軟骨喉頭隆起を下後方に圧迫する方法や頭部を後屈させながら発声する方法、甲状軟骨を左右から圧迫する方法などがあります。

治療(成人を中心に)

医師が行う外科的治療(手術)の他に、私たち言語聴覚士が行う治療として「間接訓練」と「症状対処的音声治療」の2つがあります。

①関節訓練

声の衛生指導ともいい、ほとんどの方が対象になります。

これは、音声障害の要因となるような発生習慣や声の乱用を除去・回避させ、音声障害を軽減、または防止することが目的です。

具体的な内容としては、声の安静、発声・発話のコントロール、生活の環境面での注意、精神面を含め身体の健康に気をつけるなどです。

効果的な声の衛生指導を行うためには、音声障害の要因を把握する、患者さんに発声のメカニズムと現状を理解してもらう、患者さん一人一人に合わせた具体的な対策を立てることが重要と言われています。

しかし、大人と異なり、小児では特に声の安静を保つことが難しい場合があります。その場合は、全体的な発声量の低下と正しい楽な発声方法を身につけてもらうことを優先する場合もあります。また、学校との連携も必要に応じて行っていきます。

②症状対処的音声治療

音声の聴覚心理的な異常に対して、症状に応じて、症状に適した訓練を行っていきます。大きく分けて、発声時の緊張、声の高さ、声の強さを変える訓練の3つが挙げられます。

小児の代表的な疾患の治療

ここでは、小児の代表的な疾患に対する治療法について説明します。

声帯結節(小児結節)

外科的治療は再発が多く、現在は保存的治療が主流となっています。ほとんどが変声期に自然治癒するため、経過観察のみとする場合が多いです。

家族構成や日常の遊び、習い事、スポーツなどの生活環境を聴取し、不適切な発声をしている場合は注意するよう保護者に話しておきます。

ただし、過度な注意は精神発達上問題があるので、避けた方がいいです。嗄声が高度で、学業や習い事に影響がある場合は、音声治療やステロイド吸入、外科的治療などを行います。

年齢や性格によっては音声治療が困難であるが、遊びを取り入れながら、よくない発声法を認識させたり症状対処的音声治療を行います。

変声障害

音声治療として裏声を抑えて、地声を出させる訓練を行います。治療開始前に発声の生理や変声に関する一般的知識、現在の状態と治療の目標を伝えておきます。強い咳払いや硬起声発声で低い地声を誘導できたら、本人にフィードバックしていきます。

いったん地声の発声ができるようになったら、日常生活でも使い慣らしていきます。通常は数回の訓練で声は改善しますが、治療に抵抗する症例では、カウンセリングが必要となる場合もあります。

声帯麻痺

小児の一側性声帯麻痺では自然回復や健側の代償により治療が不要となる場合が多いため、しばらく経過観察を行います。嗄声が高度であったり、誤嚥する場合は、外科的治療の対象となります。

訓練を必要とする小児の音声障害は決して多いわけではありませんが、成人同様、日常生活に支障をきたすこともあります。そのような時は、耳鼻咽喉科を受診し、相談してみてください。残念ながら、音声障害を専門にする耳鼻咽喉科医、言語聴覚士は少ないですが、必要に応じて紹介していただけます。

 

<参考文献>
宇高二良ら「児童生徒と教員の音声障害の検討」日本小児耳鼻咽喉科学会 2016; 37(3): 250-255
小宮山荘太郎編集『耳鼻咽喉科外来シリーズ2 発声障害外来―嗄声の診断と治療―2000 MEDICAL VIEW
榊原健一「やさしい解説 発声と声帯振動の基礎」日本音響学会誌 71巻2号 2015 ),pp .73−79
二藤隆春「小児の音声・言語障害の診断と治療」日本耳鼻咽喉科〔専門医講習会テキストシリーズ〕pp.121-1431
廣瀬肇『音声障害の臨床』1998 インテルナル出版
廣瀬肇監修『STのための音声障害診療マニュアル』2008 インテルナ出版

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