
執筆者
松成紀公子 さん
株式会社ピーカブー 代表取締役
子供のための紫外線対策協会 会長
子供のアトピー発症がきっかけで紫外線対策ウエアブランドEPOCHAL(エポカル)を立ち上げ16年。
ブランドのプロデューサーとして、企画、製品デザイン、カメラマンも務める。
協会では「子どものための紫外線対策」の講師を行い啓蒙活動を行っている。
監修協力:小田原銀座クリニック 長谷川佳子 先生
ここでは、紫外線を適度に浴びることで起きる好影響と、「UVインデックス」を活用した紫外線対策についても紹介していきます。
「悪いことばかりではない」紫外線について
紫外線を浴びることは、悪いことばかりではありません。実は「紫外線は、百害あって“一利あり”」と言われています。
一利…それは、ビタミンDの生成です。
紫外線を含む太陽光線の利としていくつか挙げてみましょう。
生態リズムの調整
胃腸の動きを快調に
気分の爽快感
消化液の分泌
暖かさ・血行をよくする
神経・筋肉の緊張をほぐす
光合成
殺菌
花や果実の色素合成
新陳代謝の促進
上記は容易に想像がつくと思いますので、お話を控え、ビタミンDについて簡単にお知らせしましょう。
体内でのビタミンDの作られ方
体内でコレステロールが作られる途中でできる「7-デヒドロコレステロール」という物質は皮膚中にたくさんありますが、これに紫外線があたることでプレビタミンD(ビタミンDの前駆物質)ができます(非酵素的)。
その後、時間をかけてビタミンD3(コレカルシフェロール)となり、血液中に取り込まれます。
皮膚でできたビタミンD3や食事から摂ったビタミンD3は、肝臓と腎臓で2段階の反応(ヒドロキシル化)を受けて、活性化ビタミンD3(ジヒドロキシビタミンD3、カルシトリオール、1,25(OH)2D3)か不活性型のビタミンD3(24,25(OH)2D3)ができます。
体内で作られるビタミンDの作用はこの活性型ビタミンD3によるものですが、通常、血液中の活性型ビタミンD3の量は厳密に調節されています。ビタミンDは人体にとても重要で、小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、骨の形成と成長を促します。
では、どのくらいの紫外線を当たればいいの?という疑問がわきますよね。8月ならば手のひら(手の甲)くらいの肌面積に10~15分程度(関東)です。要するにそれ以上は、「過剰な日焼け」になる可能性があります。
紫外線の強さは「UVインデックス」で確認
いろいろな紫外線の強さの見方がありますが、世界共通は「UVインデックス」です。
たくさんの報道やWEBページなどに「今日の紫外線」などの評価が上がっています。これに一定の物はないの?と、思われたことはありませんか?紫外線指数には世界共通のものがあります。それが「UVインデックス」です。
UVインデックスとは、世界保健機関(WHO)がUVインデックス(UV指数)を活用した紫外線対策の実施を推奨しています。 UVインデックスとは紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したものです。
環境省の「紫外線環境保健マニュアル」から見てみましょう。
※気象庁「UVインデックスに応じた紫外線対策(参考:環境省「紫外線環境保健マニュアル」)」の図を加工して作成
とても分かりやすい図ですね。どんな対策をしてよいか、がはっきりとわかります。
気象庁では毎日、UVインデックス値を確認することができます。
※気象庁ホームページより
住まいに近い場所のUVインデックス値を見ることができますので、度合いに応じて自身で対策をする必要があります。
今年の夏は、気温も、UVインデックスも目を見張るほどの高さです。特に熱中症には気を付けたいですね。
5つの有効な紫外線対策
あなたの紫外線対策の仕方はなんでしょうか?
紫外線.com(子供のための紫外線対策協会)では、有効な紫外線対策の方法として5つの事柄を簡潔に唱えています。
1.UVの強い時間の外出を避けよう
2.日陰の利用をしよう
3.帽子をかぶる習慣を身に着けよう
4.UVカットウエアを着用しよう
5.サンスクリーン剤を有効に使おう
紫外線対策は「サンスクリーン剤」だけでいいでしょ?という感覚の方は多いと思います。
しかし、WHO(世界保健機関)は、サンスクリーン剤に頼ってはいけないと述べています。紫外線.comでも、「UVカットウエアでどうしても出てしまうところだけ補助的に使いましょう」と伝えています。
それはなぜでしょうか?理由は、3つあります。
1つ目は、検査で出たデータ、例えば「SPF50++++」などは、相当の量を塗らなければ実現できないということ。皆さんが気持ちよく塗っているその量は、2分の1~3分の1ほどしか塗れていないのが分かっています。
もう1つの理由は、「かなり落ちやすい」ことです。そして最後に、「塗り方を間違えている」からです。
サンスクリーン剤の塗り方を間違えないために
では、塗り方のポイント(紫外線対策5か条)をお教えしましょう。
1.出かける20分前に塗る
2.タップリと2度塗りする
3.日焼けしやすくどうしても肌の露出しやすい場所に塗る
4.野外活動や汗のかきかたなどを考慮し、最低2時間に1度塗る
5.塗るときに擦らない
1.の「出かける20分前に塗る」というのは、今年の2月オーストラリアで学びました。国内ではこのようなことを言っているところはありませんが、紫外線対策大国であるオーストラリアでは、当然のことなのです。
私は、皮膚科医やオーストラリアの専門機関(がん協議会)などにもこの理由を問い合わせました。
1の理由は、肌に定着させ、皮脂膜を作りはがれづらくするためです。そして、2度塗りするのは、むらをなくして適量に塗るためです。
身体の凸の部分は特に日焼けします。例えば、鼻、頬、肩、腕など、自分の日焼けしやすいところにはたっぷり、何度も塗りましょう。それでも、サンスクリーン剤では日焼けをするのです。それは“落ちやすいから”です。
私たちは、酸化チタンを練りこんだ繊維と素材を使ったUVカットウエアを製作しています。洗濯を繰り返しても、その効果は落ちることがありません。
破れるまでUV遮蔽率は続くのです。ですが、UVカットウエアで守れる場所は決まっています。手の甲や顏、首など、どうしても露出してしまう場所は、上記の塗り方を知り、上手にUVケアをしてください。
紫外線対策5か条は、そのうちの2つを実行すれば、皮膚がはがれ、真っ赤になり、水ぶくれで痛くて眠れないような、将来的に皮膚ガンを招くひどい日焼けにはならないでしょう。
「予防医学」の観点で皮膚を守る
このようにいろいろな面で、自分の皮膚を守ることは「予防医学」だと言えます。紫外線対策は、予防のみ!
予防医学とは、「健康なうちに病気にならないように予防する生活習慣や行動」をいいます。病気になってからの治療ではなく、病気にならないように意識し、行動することを「医療」と捉えることです。
紫外線は、肌トラブルの原因になるだけではなく、長期間浴びることで遺伝子や免疫機能にダメージを与えることはご紹介してきたとおりです。
私たちは、紫外線による身体への影響を伝え、「肌を守る」「健康を守る」という想いを根底に活動しています。それは、成長過程のワンシーンだけではなく、「予防医学」の観点ですべての世代に置いて生かすことのできる紫外線対策をお伝えしていければと考えています。
猛暑が続きますが、自分独自のUVケアの方法を見つけて、健やかな夏、そして秋をお過ごしください。
この記事は役にたちましたか?
- すごく
- いいね
- ふつう
- あまり
- ぜんぜん