1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入局 外科研修
(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年 岡村医院、医師として勤務し現在に至る
2012年 岡村クリニック開院
※計15年心臓血管外科医として勤務
大学病院および関連病院において、心臓血管外科医として勤務。
外科領域のみならず内科医としての経験を生かし、循環器領域疾患を始め、患者さんがお悩みに感じることなど気軽に何でも相談できるような地域のかかりつけ医院を目指す。
『上大静脈症候群』は、血管にかかわる病気です。
主に、心臓に近い静脈に起こり、上半身のむくみなどが生じます。
この記事では、上大静脈症候群の症状や、進行度別の治療法、原因となる病気について解説します。
上大静脈症候群について
1.上大静脈症候群とは
上大静脈が閉塞したり、狭くなったりする
『上大静脈症候群』とは、『上大静脈』自体が閉塞する、もしくは血管の外からの圧力で狭くなる病気です。
そもそも、「上大静脈」って?
『上大静脈』は、頭や腕をふくむ、上半身の静脈血を右心房に戻す血管です。心臓へ戻ってくる大きな静脈は、この上大静脈と、足や内臓など下半身の静脈血を右心房に戻す『下大静脈』の2本です。
静脈血の流れが阻害され、さまざまな症状があらわれる
上大静脈が閉塞したり、狭くなったりすると、頭や腕から流れてくる静脈血の流れが阻害されます。これによって発生する、さまざまな症状を総称したものが、『上大静脈症候群』です。
2.原因について
肺がんなど、胸部の悪性腫瘍が8割
上大静脈症候群の原因となる病気の8割は『肺がん』や『縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)』など、胸部にできる悪性腫瘍です。
特に、肺がん患者は約2~3%に上大静脈症候群がみられます。近年肺がんの増加にともない、上大静脈症候群が注目されてきてきます。
そのほか、原因となる病気
そのほか、『悪性リンパ腫』、『転移性肺がん』、『胸腺腫』、『胸腺がん』、『血栓性静脈炎』、『胸部大動脈瘤』、『悪性甲状腺腫』、『心外膜炎』、『ベーチェット病』なども上大静脈症候群の原因になる可能性があります。
カテーテルを使った治療が原因になることも
治療のさいに、医療用の細い管を静脈内部におく『カテーテル留置』によって、血栓が生じることもあります。この血栓が、静脈の流れを滞らせます。
3.上大静脈症候群の症状
上半身に「うっ血」や「腫れ」が生じる
上大静脈症候群にかかると、腕や頭部などの上半身に『うっ血』や『腫れ』の症状が生じやすくなります。
こうした症状は、静脈が閉塞したり狭くなったりすることで、静脈圧が上昇し、周辺臓器を圧迫するためあらわれます。
上大静脈の閉塞が進行した場合の症状
上代静脈の閉塞が進行すると、腕や頭部がうっ血し、さらに『むくみ』も引き起こされます。また、静脈血が本来とは異なるルートを流れ、下大静脈を通って、右心房へと流れ込むようになります。
4.合併症について
上代静脈の閉塞にともなって、『低心拍出』が起こります。低心拍出とは、心収縮力の低下により、心拍出量が減少している状態です。
それにより、『呼吸困難』や『せき』、『声のかすれ』、『胸の痛み』、『頻脈』、『頭痛』、皮膚が青紫色になる『チアノーゼ』、『血の混ざった痰』などの症状があらわれます。
上大静脈症候群の治療法について
1.どんな検査をする?
静脈圧や、血管が狭くなっているかを調べる
『静脈圧』の計測をおこないます。静脈の閉塞がある場合、腕の静脈圧が上昇します。また、『静脈造影』によって、血管が狭くなっているかどうかを確認します。
肺がんや動脈瘤がないか検査することも
また、症状から上大静脈症候群が疑われる場合、上代静脈の血の流れを妨げるような、肺がんや動脈瘤などがないかも検査します。
その場合、『胸部レントゲン』や『CT』、『MRI』などの画像検査を用います。
2.上大静脈症候群の治療法
ごく初期の場合の治療法
ごく初期の場合、治療として尿の排泄をうながす『利尿剤』や血行を改善する『マッサージ』、外から強い圧力を加え、静脈圧の上昇を抑える『弾性着衣』などが選択されます。
上大静脈内に血栓が形成されている場合
上大静脈内に、血栓が形成されている場合、『血栓を除去する手術』や、人工血管を用いた『バイパス手術』が検討されます。
手術は困難でも、経皮的血管形成術の適応がある場合
手術は困難な場合でも、『経皮的血管形成術』の適応があれば、これを選択されることもあります。経皮的血管形成術は、先端が風船状になっている『バルーンカテーテル』などを使用して、閉塞している部分を広げ、『ステント』と呼ばれる器具を留置し、拡張した状態を保つ手術です。
原因となる病気に合わせた治療をおこなう
上大静脈症候群の原因となる病気がわかれば、それぞれに合わせて治療を行ないます。
まとめ
上大静脈症候群は、上半身のむくみに気づいた時には、原因となる病気が進行している可能性が高いです。
むくみが改善しないなど、思い当たる症状があれば、早めに内科や循環器内科を受診し、医師に相談しましょう。
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