
浜松医科大学 同大学院修了 医学博士
神経分子病理学の研究に従事
埼玉医科大学精神医学教室
ジョンズ・ホプキンス大学医学部に短期留学
石心会狭山病院精神科部長
2011年 武蔵の森病院院長
2019年 日本医療科学大学兼任教授
「薬を処方するだけの医療でもなく、かといって話を聞くだけのカウンセリングでもない」医療を目指す。
『統合失調症』は、だれでも発症する可能性がある病気です。
統合失調症というと、「不治の病」や「普通の話も通じなくなる病気」など、誤った認識を持っている方も多くいます。しかし、薬物療法や、家族や周囲の人の協力によって回復することができる病気です。
治療のためには、正しい知識と早期発見・早期治療がとても大切です。
この記事では、『統合失調症』の早期発見にもつながる「セルフチェック法」などをご紹介いたします。
統合失調症について
1.統合失調症とは、どんな病気?
統合失調症とは、脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなる病気です。
通常私たちの脳は、思考や行動・感情・気分などの精神機能を、意識下・無意識下で統合して、コントロールしています。
統合失調症は、これらの機能を一つの目的に沿って統合する能力が障害された状態だと考えられています。
2.統合失調症の特徴とは?
統合失調症になると、情報や刺激に敏感や鈍感になりすぎ、精神機能のネットワークがうまくいかなくなります。
そのため、幻覚や妄想などの症状が特徴で、日常生活に支障をきたすこともあります。
3.早期の治療が再発のリスクを抑える
統合失調症は、代表的な精神疾患の一つです。
日本は諸外国にくらべて、統合失調症の発病から受診までの期間が長いことが指摘されています。
現在では、治療効果の高い薬も開発されているため、早期に適切な治療を開始することが可能です。回復が早ければ早いほど、再発するリスクを抑えることができます。
4.発症の原因やきっかけは?
脳の情報処理機能がうまく働かない
はっきりとした原因はわかっていませんが、脳の情報処理機能がうまく働かないことや、度重なるストレスが大きいといわれています。そのほか、遺伝や生活環境も関係があるとされています。
大きなライフイベントがきっかけで発症することも!
進学・就職・独立・結婚など、大きなライフイベントが発症のきっかけになることも多くみられます。
環境が変化することにより、情報や刺激に敏感になり、それが過剰なストレスとなって発症することがあります。
日々のストレスが限界まで積もって発症
日常生活の中で溜まったストレスが、気がついたときには限界となって発症してしまうこともあります。
とくに、思春期から青年期に、アイデンティティーとよばれる自意識をうまく確立できず、ストレスが溜まって発症するケースが多くみられます。
統合失調症の症状チェック。自分&家族用
※注意:あくまでもセルフチェックですので一つの目安です。このチェックだけで診断の代わりとなるものではありません。診断は必ず医師から受けてください。
1.統合失調症のセルフチェック
以下の質問に「はい」か「いいえ」でお答えください。
- 自分を責める声が聞こえてくる
- 悪口を言われたり、嫌がらせを受けていたりすると感じる
- 誰かに操られているように感じる
- 極度の不安や緊張を感じるようになった
- 人と話をするのが億劫、苦痛になり話さなくなった
- 外に出ず部屋に引きこもりがちで、1日中ぼんやりと過ごすことが多くなった
- 独りで笑ったり、独り言が増えたりした
- 頭の中が騒がしく不眠になったり、過眠になったりすることがある
- 直前のことが思い出せなくなったり、考えがまとまらなかったりすることがある
- 誰かに監視、盗聴されており、狙われていると思う
- 些細なことが気になり興奮するようになった
- 喜怒哀楽の感情が湧かなくなった
- 何をするにも億劫で意欲や気力がわかない
- ひとつの事に集中することや、とっさに判断することができなくなった
- 自分の考えていることが周囲にもれていると感じる
- ここ1か月で判断力が鈍くなったと感じる
以上の質問について「はい」の数が2つ以上あり、その症状が1か月以上続いている場合は『統合失調症』の可能性があります。
統合失調症は早期発見・早期治療が重要な病気です。少しでも疑いのある場合は早めに精神科のある病院を受診しましょう。
2.家族や周りの人による統合失調症のチェック
統合失調症は本人だけでなく、家族や周囲の近しい人が気付くことで、早期発見・早期治療につながることがあります。次のチェックリストを参考にして、少しでも疑いがある場合は早めに病院を受診させましょう。
- 実際には受けていないが、監視や盗聴をされているという
- 命令する声が聞こえると言う
- 実際には何も言われていないが、悪口を言われたと言う
- いつも不安そうにしていたり、緊張したりしている
- 独り言が多かったり、にやにやと独りで笑ったりすることが多い
- 話にまとまりがなく、相手の話もつかめない
- 集中して作業ができない
- 趣味や今までの楽しみに興味を示さなくなった
- 部屋にこもることが増えた
- 感情の動きが少なくなる
- 無気力で何もしようとしない
- 他人の感情についての理解が苦手になる
統合失調症の検査について。何科?診断方法は?
統合失調症の検査方法や、病院を受診するさいの注意点について、解説します。
1.何科を受診するべき?
統合失調症の受診は、『精神科』に!
統合失調症が疑われる場合は、精神科を受診しましょう。
入院の可能性がある場合は、入院設備が整っている精神科専門の病院がおすすめです。
個人クリニックでは通院治療が中心で、入院設備が整っているところは少ないといえます。しかし、必要であれば入院可能な医療機関を紹介してもらうことも可能です。
ほかの病気もある場合は?
ほかの病気もある場合は、内科などが併設されている総合病院が便利です。
しかし、精神科のベッドのある総合病院は全国的に限られており、入院の対象者が限られているところも少なくありません。
症状が比較的軽い場合は、自宅や利用する駅の近くのクリニックがおすすめです。
症状や状況に合わせて病院を選ぶことが大切
症状や状況に合わせて病院を選び、通院がつらくならないように工夫することも大切です。
あまり遠い病院だと通院が負担になってしまうので、自宅から通いやすいことも重要です。
仕事や学校帰りなどに通院する場合は、駅から近いクリニックを利用するとよいでしょう。
受診の際はつき添ってもらいましょう
受診の際は家族などにつき添ってもらうとよいでしょう。統合失調症の特徴である「考えがまとまらない」という症状が、診察や治療に影響を及ぼす可能性もあります。
その際は、第三者の意見を参考にすることも多く、治療の手助けになります。
2.統合失調症は、どうやって検査・診断するの?
本人や家族への問診を基準に診断
統合失調症は、本人に病気だという認識がない場合も多いため、必要な所見がとれないこともあります。そのため、家族などの周囲の人からの情報が重要です。
症状がはっきりしない場合は診断が出ないことも
統合失調症の特徴である、幻聴や妄想が生じるなど、明らかな症状がある場合は診断しやすいです。しかし、症状がはっきりしない場合は診断が難しくなることもあります。
ほかの病気の可能性がある場合はさらに検査を
意欲や気力が消失している、引きこもりがちになっているという場合は、統合失調症の症状ではありますが、ほかの病気の疑いもあるため、診断が難しくなります。
可能性としては、『うつ病』や『発達障害』、脳に障害がある『器質性精神病』などです。
病気の判別には、知能検査などの心理テスト・CT・MRI・髄液検査・血液検査をおこなうこともあります。
最終的な診断について
精神疾患においては、アメリカのアメリカ精神医学会(APA)が発刊しているDSM-5という診断基準と、世界保健機関(WHO)が発刊しているICD-10という2つ診断基準があります。
最終的には、これを用いて診断した結果と本人や家族に対する問診を照らし合わせて、総合的に判断します。
まとめ
統合失調症は、早期発見・早期治療を開始することで回復できる病気です。
しかし、本人に自覚がなかったり、気づきにくかったりする病気でもあります。
家族や周囲の人は、いつもとちがうと感じた場合は、チェック項目を参考に判断して早めに病院を受診させましょう。
家族の負担も重くなりがちな病気ですが、早期に治療を開始することで再発のリスクも抑えられます。「もしかしたら統合失調症かも?」と少しでも思ったら、できるだけ早く専門医に相談することが大切です。
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