
1999年 日本医科大学産婦人科教室入局
日本医科大学付属病院
産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院
(現 横須賀市立うわまち病院)
産婦人科
2002年 東京都保健医療公社
東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院
女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院
女性診療科・産科 助手
現在は石野医院の副院長
専門は漢方(東洋医学)、産婦人科
患者さん一人ひとりに合った薬を作るため、自由にさじ加減ができる煎じ薬を第一と考える。
診療では一人ひとり丁寧に症状の診断を行い、情報の発信を行う。
生理前になると、イライラする、情緒が不安定になる、という女性は多いのではないでしょうか。
身体の不調が出やすく、憂うつに感じる人も多いでしょう。
このように、生理が始まる3~10日前に毎月繰り返し不快感があらわれるようなら、『月経前症候群(PMS)』の可能性があります。
この記事では、多くの女性が悩んでいる『月経前症候群(PMS)』について解説します。
『月経前症候群 (PMS)』とは
1.こんな症状があれば、PMSが疑われます
『月経前症候群(PMS)』とは、月経前に起こる心身の不快や不調のことです。
症状には個人差があり、月経が始まるとおさまっていくのが特徴です。
生理が始まる3~10日前に、毎月くり返し何らかの不快感がある場合は、PMSの可能性が高いといえるでしょう。
症状は数100種類以上もあるとされていますが、まずはその例をいくつかご紹介します。
月経前症候群(PMS)の精神的な症状
イライラ感、不快感、攻撃的になる、急に不安になる、気持ちが落ち込んでいく、食欲が増す、不眠や過眠などの症状があらわれます。
精神的な症状は、無理な我慢は禁物です。
心から楽しんでリラックスできる時間をつくりましょう。
症状がひどいときは医療機関を受診して、『低用量ピル』や『漢方薬』、『精神安定剤』などを処方してもらうと落ち着くことがあります。
月経前症候群(PMS)の身体的な症状
腰痛、下腹部や乳房の張りや痛み、足のむくみ、頭痛、肩こり、肌荒れ、便秘、下痢、疲れやすいといった症状があらわれます。
身体的な症状には、適度な運動やストレッチがおすすめです。
汗をかいて、身体の水分代謝を促進させましょう。マッサージをして全身の血行をよくするのも効果的です。
また、精神的な症状と同じように、低用量ピルや漢方薬で症状をやわらげることもできます。
2.PMSの原因は?どんな人がなりやすい?
女性ホルモンの変化が関係すると考えられる
PMSの原因は、はっきり解明されていませんが、排卵後の女性ホルモンの変化が関係していると考えられます。
2種類の女性ホルモンについて
女性ホルモンには、『エストロゲン(卵胞ホルモン)』と『プロゲステロン(黄体ホルモン)』という2種類のホルモンがあります。
『エストロゲン』は子宮内膜を増殖・肥厚させ、『プロゲステロン』は子宮内膜からの分泌物を出やすくします。
それぞれ生理周期に合わせて分泌量(作り出される量)が変化します。
分泌量の変化が、PMSを引き起こす?
とくにプロゲステロンの分泌が多くなるとイライラすることが多くなるといわれています。
しかし、プロゲステロンの分泌が減りはじめる月経直前に症状が出ることから、プロゲステロンがどこまで関係しているかはわかっていません。
そのほかにも、『セロトニン』や『ビタミンB6』が関係しているといわれています。
要注意!PMSになりやすい人とは
PMSは、飲酒や喫煙の習慣、コーヒーをよく飲む、間食が多い、几帳面、負けず嫌い、神経質、我慢しやすい、などの特徴がある人に多いとされています。
自律神経の乱れは、女性ホルモンの乱れにつながる
日ごろから無理をしすぎず、自律神経を安定させることが大切です。それだけで、症状が軽くなることもあります。
3.PMSを放置した場合のリスク
PMSは、女性の約8割が経験するといわれています。
しかし、症状によっては、婦人科の病気やPMSだと気づいていない場合も多々あります。
気づかずに放っておくと、そのうち日常生活に支障を与えるほどの精神的・身体的症状が出ることがあります。
また、40~50代になったときに、そのまま更年期障害になってしまうなどのリスクが高まります。
月経前症候群(PMS)とうまくつき合う方法
バランスの良い食事を摂る
一日三食、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
とくに、肌に良く、女性ホルモンの働きを高める『ビタミン』やイライラ防止に効果的な『カルシウム』や『ミネラル』を積極的に摂ることをおすすめします。
外食や間食が多い人は、『糖分』・『脂肪分』・『塩分』の摂り過ぎに注意しましょう。
体を冷やさない
身体が冷えると、自律神経の働きが乱れてホルモン分泌のバランスも崩れてしまいがちです。
薄着や冷たい飲み物の摂り過ぎなどに気をつけましょう。
無理なく、生活に運動をとりいれる
運動不足になると、体力だけでなく免疫力も低下してしまい、ストレスに対して弱くなります。
負担にならない程度に、日々の生活に軽いストレッチや運動を取り入れてみましょう。
ストレスを上手に発散する
過度のストレスはPMSを悪化させる大きな原因の一つです。
できるだけストレスを溜めないよう、上手に発散する方法を見つけましょう。
月経前症候群(PMS)の診断基準と治療について
1.PMSの診断基準とは?
次の項目を満たした場合、PMSであると診断されます。
・精神的症状と身体的症状どちらかもしくは両方、少なくとも過去3周期以上の期間症状がある
・月経が始まってから4日以内に症状が軽くなり、13日目までは再発しない
・ホルモンの内服や薬物、アルコールが原因ではない
・2周期目(次の月経時)にも同様の症状がある
・症状により日常生活に支障がある
2.PMSと診断されたら、どんな治療をする?
低用量ピル
『低用量ピル』で排卵を止めて、プロゲステロンの分泌を抑える治療をおこないます。
PMSとは、排卵後にプロゲステロンが大量分泌されることに対して心と身体が反応している状態です。
そのため、低用量ピルを使用してPMSの症状の軽減をはかります。
長期的にいくつかの不快な症状が出ている場合は、ほとんどが低用量ピルでの治療になります。
漢方薬
PMSの治療に、『漢方薬』が使われることもあります。
漢方薬の場合、症状の緩和は期待できますが、根本的な治療にはなりません。
抗不安薬
不安感や憂うつ感など、精神的な症状の場合には『抗不安薬』が使用されます。
鎮痛剤
下腹部の痛み、腰痛、頭痛など身体的な症状があらわれた場合には、『非ステロイド抗炎症薬』という鎮痛剤が使用されます。
月経前症候群(PMS)ではない病気の可能性も
PMSに症状の似た、他の病気について解説します。
1.月経困難症
月経困難症は、PMSの症状とよく似ていて、吐き気・腹痛・下痢などの症状が日常生活に支障を与えます。
PMSは月経前に症状があらわれ月経が始まるとおさまっていきます。
しかし、月経困難症は月経中にだけ症状があらわれ、月経開始後2~3日目に最も症状が重くなるのが特徴です。
2.月経前不快気分障害(PMDD)
憂うつになる、イライラするなど、PMSと似た心の不調が強くあらわれます。
PMDDの場合は、感情を抑えられなくなるなど、PMSに比べて精神状態が重くなります。
3.更年期障害
疲れやすい、頭痛、だるい、イライラするなど、PMSと同じような症状があらわれます。
月経前の同じ時期に症状があらわれた場合は、PMSとの区別が難しいといわれています。
4.自律神経失調症
心の状態もふくめ、全身に不調があらわれます。
腹部や乳房の張り・頭痛・むくみ・体重増加・食欲の急激な増加・睡眠不足などの身体的な症状が毎月決まって起こるようになるとPMSの可能性が高くなります。
5.うつ病
PMSもうつ病も、過度のストレスが原因となって症状があらわれます。
PMSの代表的な症状はうつ病の症状とほぼ同じで、ちがいは症状があらわれる期間です。
PMSは月経前のみに症状があらわれますが、うつ病は月経に関係なく症状があらわれます。
6.妊娠初期(妊娠5週目)
最終生理日から1週間後以降の妊娠初期(妊娠5週目)には、PMSに似た症状が出やすくなります。
具体的には、頭痛や下腹部の鈍(にぶ)い痛み、腰痛、微熱、吐き気、吹き出物、イライラしやすい、などです。
まとめ
症状を自覚しながらもPMSとわからずに、つらい思いをしていた女性は多いのではないでしょうか。
しかし、PMSは早めの治療や対処をすることで改善される病気です。
そのためにも、まずは自分自身の身体の状態をしっかり知ることが大切です。
そして、今までの生活習慣を見直し、適切な治療をおこなうことがPMS改善の第一歩になります。
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