1995年 群馬大学 医学部医学科卒業
2007年 東京大学大学院医学系研究科
呼吸器病態学専攻 修了(医学博士)
2012年より加藤医院 院長
地域のかかりつけ医として内科全般と呼吸器領域の診療に従事。
日本内科学会内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医の資格を持つ。
咽頭炎には、うつるものとうつらないものがあります。
そもそも『咽頭炎』とは、のどの『咽頭』とよばれる部分の粘膜に炎症が起こった状態です。
この記事では、どのような咽頭炎はうつるのか、また、赤ちゃんにうつらないようにする方法、かかったときの対処法について解説します。
咽頭とは?
咽頭とは、いわゆる「のど」の部分のことです。
大きく口を開けたときに奥に見える粘膜は咽頭の後ろ側の壁です。上は鼻の奥につながっていて、下は喉頭(気管の入り口)と食道の分かれるところまで広がっています。
咽頭には、リンパ組織である扁桃(へんとう、いわゆる「へんとうせん」)が付属しています。
咽頭炎とは?
咽頭炎とは、この咽頭に炎症を起こすもので、ものを飲み込むときや安静時ののどの痛みや熱、体のだるさなどの症状が出ます。
咽頭炎は急性咽頭炎と慢性咽頭炎に分けられます。
咽頭炎はうつるのか
1.急性咽頭炎は「うつる」
『急性咽頭炎』は、人にうつります。
急性咽頭炎はウイルスや細菌などの病原微生物が咽頭の粘膜に感染して症状を起こすものを指します。ウイルスでは「アデノウイルス」やその他風邪の原因になるウイルス、細菌ではA群β溶血連鎖球菌(溶連菌(ようれんきん)、英語圏ではGASと略す)が主な原因です。
急性咽頭炎はしばしば同時に急性扁桃炎も合併します。
風邪と咽頭炎の違いが気になるのではないかと思いますが、同じ原因ウイルスでも、症状が咽頭のみのものを咽頭炎、せきや鼻水など咽頭以外の症状も見られる場合に風邪と表現することが多いです。
ウイルスによる咽頭炎は「のど風邪」と言ったりもします。ウイルスのタイプや感染の状況により症状の出方が変わってくると考えられます。
以上のことから、急性咽頭炎は風邪と同じように人から人へうつります。
溶連菌性咽頭炎について
一般的に、細菌性のものはウイルス性に比べるとうつりにくいですが、溶連菌性咽頭炎は家族内感染や季節的な流行をすることで有名です。溶連菌性咽頭炎は抗生物質による治療が必要で、またリウマチ熱や腎炎などの合併症のチェックが必要です。
急にのどの痛みとだるさ、熱っぽさなどの症状が出たときは一度医師の診断を受けることをおすすめします。特に5歳~15歳のお子さんが急にのどが痛くなって熱が出るような場合は、早めに医師の診断を受けましょう。
2.慢性咽頭炎は「うつらない」
『慢性咽頭炎』の場合は、人にうつりません。
「慢性咽頭炎」はのどの違和感や痛みが長引く状態に対してつけられる病名です。急性咽頭炎や扁桃炎を繰り返して、症状が慢性化した状態や、喫煙や飲酒、排気ガスなどにより咽頭が炎症を起こした状態と考えられます。
似たような症状で逆流性食道炎、咽頭アレルギー、咽頭がんなどが原因のこともあるため、症状が長引く場合は一度医師の診察を受けることをおすすめします。以上から、慢性咽頭炎は基本的に人にうつることはないと考えられます。
急性咽頭炎はどうやってうつる?感染経路について
1.急性咽頭炎の感染経路
たんや鼻水、せきによってうつる(飛沫感染)
急性咽頭炎の症状である『たん』や、くしゃみやせきをしたときに飛ぶ『唾液』には、ウイルスや細菌などの病原体が含まれています。それが他の人に飛ぶことでうつる『飛沫感染』によって、感染が広がります。
ウイルスが手すりなどに付着し、触った人にうつることも(接触感染)
また、唾液やたんに含まれる病原体が皮膚や器具、手すりなどに付着し、それを触った人がうつることもあります。
急性咽頭炎に感染すると…体の中で起こること
鼻腔や咽頭に付着したウイルスや細菌などの病原体は粘膜細胞に侵入して、増殖し、『感染症』を起こします。
感染の結果、粘膜が障害され、また病原体に対する人間の防御能力(免疫)が働く過程で熱を持ったり、のどの粘膜が腫れます。
2.急性咽頭炎の感染を予防したい!どうしたらいい?
急性咽頭炎を予防する鍵は、先ほど解説した「感染経路」にあります。
たとえば、飛沫感染の予防のためにはマスクの着用や部屋の換気、適度な距離をとること、接触感染の予防のためには、こまめな手洗い・うがいを心がけましょう。
また、普段から栄養バランスの良い食事をとる、疲れやストレスをためないようにするなど、免疫力が低下しないようにすることも大切です。
3.パパ・ママ必見。赤ちゃんの急性咽頭炎の予防について
外から帰ったら手を拭き、人混みやほこりは避ける
赤ちゃんが急性咽頭炎にかからないようにするためには、家に帰ったら手をふく、人混みやほこりを避けるなどの対策をとる必要があります。
赤ちゃんは、手の届くところにあるものは何でも触ったり、口の中に入れたりして、それが何なのかを確かめようとします。これは赤ちゃんに必要な行動ですが、ウイルスや細菌が手から口へと入り、感染することもあります。特に外出時は、大人がしっかり見るようにしてください。
ご家族が咽頭炎に感染したら…!注意すること
ご家族の方が急性咽頭炎にかかったら、赤ちゃんにうつらないよう注意しましょう。
口うつしでご飯を食べさせないようにして、料理をするときは、使い捨ての手袋を着用することも、感染予防になります。
赤ちゃんの様子を確認!
加えて、普段から赤ちゃんの様子を観察することも大切です。
病気にかかっても早く気づけるように、次のことを特に確認しましょう。
・機嫌は良い?表情がいきいきしているか
・普段通りの食欲があるか(咽頭炎でのどが痛いときは、ミルクが飲みたくても痛くて飲めないので、普段よりミルクを飲む量が減り、機嫌が悪くなるでしょう。)
これらを朝の着替えや、おふろ上がりなどに確認するようにしましょう。
朝の着替えやおふろ上がりのあとなどに確認すると病気に早く気づくことができます。
赤ちゃんの咽頭炎や風邪について知っておいていただきたいこと
赤ちゃんは生後6か月を過ぎたころからお母さんからもらった抗体の効果が薄れてきて、咽頭炎にかかったり、風邪をひいたり、熱が出る病気にかかりやすくなります。
一部はワクチンで予防できますが、多くのウイルスにはワクチンはありません。しかし、風邪をひいてもしっかりと直していくことで免疫がついていきます。
赤ちゃんが発熱したり、お風邪をひいたら、こじらせないようにしっかりと療養しましょう。
咽頭炎になったら…自分でできる対処法
1.咽頭炎の痛みを和らげるには、どうしたらいい?
咽頭炎でのどが痛いときは、『うがい』をしたり、乾燥を防ぐため『加湿器』や『マスク』をつけたりすることをおすすめします。
2.食欲がないときは、喉ごしのよいうどんやおかゆを!
咽頭炎にかかると、食欲が落ちることも
咽頭炎にかかると、のどの痛みから食欲が落ちることがあります。
咽頭は、食べ物の通路である『食道』でもあります。中でも咽頭は、食べ物を飲み込む役割をになっているため、炎症が起こることでのどが腫れ、食欲の落ちる原因になります。
水分が多く、やわらかい食べ物がおすすめ
咽頭炎にかかったら、水分が多く、やわらかいものを食べることをおすすめします。そうした、のどごしの良いものの方が飲み込みやすいです。『うどん』や『おかゆ』、『野菜スープ』などがおすすめです。
3.熱があるときは、水分補給をしっかりおこなう
咽頭炎にかかり、熱があるときは、脱水症状の予防を心がけましょう。
『経口補水液』や『イオン飲料、スポーツドリンク』は、水分に加えて発汗や食欲の低下によって不足する塩分も補給できるため、脱水症状を防ぐために効果的です。
経口補水液は吸収も早いことが知られており、脱水症状の治療に効果的とされています。一方、一般的なスポーツドリンクは糖分を多く含むため美味しく飲めるのですが、吸収については必ずしも早くないようです。
高齢者の場合は、のどの渇きを感じにくいため、のどが渇いていなくても、こまめに水分をとりましょう。
4.赤ちゃんが咽頭炎にかかったら、どう対処する?
赤ちゃんは脱水症状になりやすい
赤ちゃんが咽頭炎にかかったら、少量ずつでも水分をしっかりとることを心がけましょう。
赤ちゃんの場合は熱や下痢から、脱水症状を起こしやすいので注意する必要があります。
のどが痛くて通常より食べたり飲んだりがしにくいため、水分量、栄養が減りがちです。
そのような場合は辛いもの、酸っぱいもの、油濃い食べ物、熱い食べ物を避け、おかゆやうどん、スープなど、消化が良くのどごしの良い食べ物を少しずつ食べさせてください。
食事がとれない場合は無理に食べさせず、水分をこまめに与えるようにしてください。
水分がとれないようであれば、早めに小児科へ
水分がなかなかとれないようであれば、早めに小児科を受診してください。
まとめ
咽頭炎には急性咽頭炎と慢性咽頭炎があります。急性咽頭炎は感染症によるものであり、人から人へうつります。のどの痛みやだるさ、発熱が主な症状です。
原因にはウイルス性と細菌性があります。ウイルス性咽頭炎は「のど風邪」とよばれることもあり安静にしていれば自然に治ることが多いです。
細菌性咽頭炎では溶連菌性咽頭炎が重要で、正確な診断と抗生物質による治療が必要です。身近に溶連菌性咽頭炎の患者が出たあとに自分ものどが痛くなった際や、急な発熱と強いのどの痛みがあるときは医師の診断を受けましょう。
赤ちゃんが咽頭炎になったときは自分で症状を伝えられないので、機嫌やミルクを飲む量、体温などから推測しましょう。
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