ワンオペ育児でも子育てを幸せに!あるホルモンの分泌が鍵を握る

ワンオペ育児
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杉山教授写真1

監修者

杉山崇 教授

神奈川大学人間科学部 教授
心理相談センター 所長
臨床心理士(公益法人認定)
1級キャリアコンサルティング技能士(国家認定)

学習院大学大学院修了
精神科、教育、福祉、産業など各領域の心理職を経て日本学術振興会特別研究員に。
神経(脳)活動・心理過程・社会的関係の相互作用を考慮したうつ病研究を行う。
「心理学で幸せを増やす」をテーマに教育研究および心理・キャリア相談に従事する一方でテレビや雑誌などメディアを通じた啓発活動の実績も多数。

「仕事は男の本懐。子どもの教育は妻に任せている。」という価値観、あなたはどう思いますか? 実はこの価値観が高度成長期を通して日本の男性の間では主流でした。

高度成長が極まったバブル期には「24時間戦えますか?」をキャッチコピーにしたCMが人気を博するほど、日本人男性は仕事のために生きることを讃えられていたものです。

こんな価値観も今は昔。この25年で、仕事だけひたすらがんばってお金だけをひたすら稼いでも幸せにはなれないことが明らかとなりました。

その結果、暮らしを大事にしたいと願う男性も増えてきています。可愛い盛りの子どもを中心に夫婦で育児を楽しむ…。人生の輝かしい絶頂期の一つですよね。多くの方にこのような幸せを味わっていただきたいものです。

子育ての幸せを実感しにくい日本の労働環境

しかし、価値観の変化に職場環境の変化が追いついていません。日本人男性の労働時間は世界的にも高いままです。

特に子育て期の男性は職場で試される立場です。高度成長期の価値観の中で育った世代が、今後の昇進や昇任を左右する実権を持っていることも少なくありません。必然的に仕事に家庭の事情を持ち込みにくい雰囲気が職場で作られます。

結果的に子どもがいてもいなくても同じように仕事に熱中することを求められてしまいます。夫婦で子育てを楽しむという素敵な日々を願っても、父親は仕事へのハードコミットメントを求められてしまうのです。

必然的に母親は夫の居ない家の中で、孤独な子育てを強いられることになるのです。

ワンオペ育児による母親の孤立感

その中で生まれた言葉が「ワンオペ育児」です。ワンオペとは本来は複数で取り組む作業を、ツールやプロセスの改良によって一人でこなせるようにすることです。企業にとっては人件費削減を達成できるので、いい言葉として使われていました。

しかし、実務に当たる側としては孤独な作業を強いられるわけで、必ずしも幸せなわけではありません。母親の孤立感や心細さを表す言葉として、ここ数年であっという間に日本の育児環境の象徴になりました。

子育てと仕事は本来であれば天秤にかけるようなことではありません。どちらも大切なものなので、それを望むなら当たり前のように両立できる社会が理想です。

しかし、日本では現在の職場環境が続く限り、母親がワンオペ育児を強いられる状況は変わらないようです。

子どもを「かわいい」と思うことが最も大事

では、日本の母親や父親はどうすればいいのでしょうか? もちろん、現在の価値観を変えて子育てを楽しめる社会を作るべきです。

しかし、職場や世の中を変わるには時間がかかります。今できる手立てが必要です。そこで心理学的に有効な手立てを考えてみましょう。

まず、育児において最も大事なことは子どもを「かわいい」と思うことです。

「オキシトシン」というホルモンを味方につける

私たちは「かわいい」と感じ、愛情あふれる気分になれると「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。

このホルモンは私たちを幸せな気分にするだけでなく、免疫力を高めたり、体のダメージを修復したり、老化を防止してくれたり、といい影響をたくさん与えてくれます。

特に子どもの可愛さは別格です。私たちは本能的に子どもを「かわいい」と感じるように作られているのです。子育ては私たちにたくさんの幸せを与えてくれますが、心と体に与えてくれる最大の福音はオキシトシンの恩恵に浸れることといえるでしょう。

逆に言えばオキシトシンの恩恵がないと子育ては過酷な重労働になってしまいます。子どもをかわいいと思えないという母親のお悩みに応じることがありますが、実は子どものお世話は重労働です。

オキシトシンでダメージを回復できなければ、日々の疲れがどんどん蓄積します。

疲労はストレスなので、子育てが辛くなってきます。この状態でワンオペ育児だと、孤立感が心の苦痛を高めるので心身ともに疲弊した状態に陥ってしまいます。このような状況はぜひとも避けたいですね。

ご主人の支えが、母親の心の余裕を生む

ここで大事になってくるのが母親の心の余裕です。日本では母性本能という神話が比較的根強いようですが、実は母性本能の存在は科学的には証明されていません。

男女を問わず子どもを見ると「かわいい」「なにかしてあげたい」という本能があることは示唆されていますが、「女性は母性本能で子育てに喜びをかんじるようになる」「子どもを育てていれば女性は幸せなはず」と信じることは女性という存在を一般化しすぎです。

本当に大事なことは子育てを幸せと感じられるように女性を母親として支えることなのです。

心理的な支えのなさは心の余裕を奪い、子どもをかわいいと思う気持ちも損ねてしまいます。するとオキシトシンの恩恵も奪われてします。そこで、心の余裕を得るためのいい方法をご紹介しましょう。

SNSを活用する

私たちの研究では母親の心の余裕はご主人の支援的な気持ちや思いやりを実感することで生まれます。そして、ご主人が話を聞いてくれることが最も効果が高いことも示唆されました。

ただ、お仕事に時間もエネルギーも取られているご主人が母親のお話を長々と聞くことは困難です。

そこで、私はSNSの活用をおすすめしています。SNSであればお仕事の合間にもリアクションできますし、SNSでちょっとした労いの言葉や感謝の言葉をかけて、子どもの可愛さを一緒に喜ぶだけでも母親は支えられている気持ちを持つことができます。

忙しいお仕事の合間にSNSまで気にするのはご主人に負担なように思われるかもしれません。

しかし、お仕事の合間の数分のことで、母親が心の余裕を取り戻してオキシトシンの恩恵を十分に得ることができれば、母親と子どもの作る家庭の雰囲気がより愛情豊かなものになることでしょう。

ご主人も子育てに依るオキシトシンの恩恵をより受けやすくなります。ぜひ、子どもをかわいいと心の底から思える心の余裕を大切にしてください。

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