月経の仕組みと不順「エストロゲン」の役割~婦人科スポーツドクター高尾美穂が答える!【連載】第3回

高尾美穂先生コラム連載Vol.3
  • LINEで送る
  • すごく役に立った
  • 役に立った
  • 普通に役に立った
  • あんまり役に立たなかった
  • ぜんぜん役に立たなかった
高尾美穂先生

取材協力

高尾美穂 先生

医療法人社団プラタナス
女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 婦人科
【医院公式サイト】https://www.ihc.or.jp/

東京慈恵会医科大学大学院修了
東京慈恵医大病院 勤務
イーク表参道 副院長

日本産科婦人科学会専門医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本抗加齢医学会専門医

【高尾先生公式サイト】http://www.mihotakao.jp/

産婦人科医でありながら、スポーツドクターならびにマタニティヨガの指導者としても活躍中の高尾美穂先生によるコラムをお届けします。

第3回目は『月経の仕組みと不順!エストロゲンの役割』をテーマにお送りします。

10代~40代までの各年代の「月経不順」、更年期の向き合い方と対処法についても高尾先生が解説してくれます。

女性にはとても大切な「エストロゲン」が月経周期に大きく影響していることがわかります。

目次

目次を開く

月経サイクルは「エストロゲン」の影響が大きい

女性の身体について理解するうえで欠かせないのが、女性ホルモンである「エストロゲン」です。月経のサイクルには、このエストロゲンが大きく影響しています。

高尾先生は「『エストロゲン』がたくさん分泌されることで、排卵が起こります。

卵巣からホルモンが出て、子宮では赤ちゃんが“乗るためのベッド”を準備します。妊娠が成立しなかった場合、不要なものとして排出される」のが月経(生理)であると説明してくれました。

また、初めて生理が来る年代についてはこう話します。

「初めての生理が来る年代は10歳~12歳くらいです。生理が来てほしい区切りの年齢は、できれば15歳までに来て欲しいですが、絶対に生理が来てほしい年齢は18歳までです」

大人の骨へと成長させる役割も

エストロゲンの働きは女性が妊娠するうえで大切ですが、実は成長期の子どもから大人の骨へと成長させる役割も担っています。

「エストロゲンが骨の伸びを止めるために『骨端線(こったんせん)』を閉鎖させます。

生理が始まると骨幹部の長さは伸びません。骨端線を閉鎖させることによって骨の伸びを止めるのも、大切なエストロゲンの働きです。

骨の伸びが止まってから初めて骨密度が増えていきますので、骨を強くするためには、そもそも骨の伸びが止まらないといけない訳です」

骨の部位の説明~骨端線について

kenko-pita_150092_02

大人の女性へと成長していくためには、エストロゲンがいかに重要であることがわかります。

10代~40代の「月経不順」

10代の月経不順

高尾先生は、10代の月経不順についてはこう説明します。

「運動を習慣的にしていない子であれば、18歳までは生理が来るのを待っていて構いません。その後、生理が来てから2年くらいは排卵が安定していないため、月経不順でもそれはよくあることです」

ただ、この時期に無理なダイエットをしてしまうと「1度生理が来ても、その後の生理が続かないというケースがある」と注意を促します。

「身長が伸びて体重が増えて、そのうち横ばいになるのが望ましい年代に、ダイエットで体重を落とすのは意図的な変化なので望ましくありません。

10代はそもそも“成長期”と思って欲しい。必要なエネルギー量はきちんと摂りましょう」とアドバイスしてくれました。

では、運動をしている子であれば、何歳までに生理が来るのが望ましいのでしょうか?

運動を習慣にしている子は、できれば15歳までには生理が来てほしい。15歳~16歳くらいは、骨密度が低いために骨が折れてしまう『脆弱性骨折』になりやすく、脆弱性骨折の発症は16歳がピークと言われます。そのため、16歳よりも早い段階で生理が来ることが望ましいです」

20代・30代の月経不順

次に20代・30代の月経不順についてお聞きしました。

「20代・30代で一番多い月経不順は2つのパターンです。1つが『多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)症候群』で、これは上手く排卵ができないために、生理がなかなか来ない状態のことです。

もう1つが、ダイエットなどによりエネルギーが足りないために生理が来ないケースです」

この2つのパターンについては「女性ホルモンの血液検査」で判断でき、もし必要な場合は婦人科でチェックすることが可能だそうです。

40代の月経不順

最後に40代の月経不順と、閉経のタイミングについても解説してくれました。

「40代後半における月経不順の多くは、完全にエストロゲンの分泌が低下する、いわゆる『更年期」と呼ばれている時期の不順です。更年期の定義というのは、閉経の前後5年間ずつ(合計10年間)です。

閉経の中央値は50.5歳なので、日本人の女性においては大体45歳~55歳が更年期と言うことになります。

また、閉経の前後2年間ずつを『周閉経期』と言います。この3~4年間が、更年期の症状がもっとも強く出る時期と考えられています。なので、10年間ずっと更年期で困るわけではありません。

閉経の定義は12ヶ月間生理がない状態のことなので、例えば49歳の9月に生理が来て、その後50歳の9月まで生理が来なければ49歳で閉経ということになります」

受診の目安

ここまでの説明を踏まえ、実際に月経不順で受診した方が良いという目安についてもお聞きしました。

「例えば45歳以降で出血量が減ってきても、受診する必要はないと言えます。

ただ、出血量が多過ぎる場合(蛇口をひねったような量の場合)や、出血が2週間以上続くような場合は、一つの目安として受診した方が良いと思います」

更年期を上手に乗り越えるには?

更年期の定義については詳しく解説していただきましたが、実際に女性は更年期をどのように乗り越えたらよいのでしょうか?

まずは更年期を迎えた場合、どのようにして向き合っていくべきか、症状を分けて説明していきます。

更年期との向き合い方

「更年期との向き合い方として、身体の内側で起きている変化を知ってくれたらなと思います。

それはエストロゲンの大事な働きである、お肌や髪の毛、血管、コレステロール、骨などいろいろなものにプラスに作用していたホルモンの分泌がだんだん減ってくるという変化のことです。

もう一つが汗やほてりを代表とするような自律神経失調状態が目立つ『更年期症状』です。これは誰もが起きる訳ではなく、100人のうち60人くらいが症状を感じます。

さらに、その60人のうち30人くらいが『更年期障害』と呼ぶ、治療が必要な方たちを指します。

つまり、生理が来なくなったけど、特に身体の変化が何もない人が残り40人いる訳です」

世間では『更年期』という時期を指す言葉と、『更年期症状』と『更年期障害』を一括りにしてしまいがちですが、実際は高尾先生による説明が正しい考え方です。

更年期の対処法について

更年期と向き合い、それを乗り越えるためにはどんな対処法があるのでしょうか?

ここでは主に『ホルモン補充療法(HRT)』と『エクオール』について詳しく紹介していきます。

ホルモン補充療法

婦人科で最初にすすめられる治療法として高尾先生が挙げたのが、エストロゲンを補充する『ホルモン補充療法(HRT)』です。

「エストロゲンが足りなくなったために困っているのだから、これを足してあげるというのがまずシンプルな考え方です。

実際には、エストロゲンを単独で足すと乳がんや血栓症のリスクが心配なので、プロゲステロンを一緒に足して治療を行います。

内服ですと必ず肝臓を通るためリスクが上がるので、肝臓を通過しないようパッチ剤や塗り薬を使った経皮吸収をすすめています。これによりリスクが上がるのを防ぎます」

ホルモン補充療法については、重大な病気のリスクを避けるために細心の注意が払われています。

『エクオール』と呼ばれる植物由来のエストロゲン様物質

高尾先生が次に挙げたのが「植物由来のエストロゲン様物質」を身体に取り入れる方法です。

その中で、近年ではエストロゲンと似た構造を持つ『エクオール』という物質が注目されています。

このエクオールを摂取するにはどうしたら良いのか、解説してもらいました。

「『エクオール』という物質は、身体の中で大豆イソフラボンから代謝されて作られます。これは腸の中で、ある腸内細菌によって代謝されますが、この腸内細菌は2人に1人しか持っていません。

この腸内細菌を持っている人は、1日コップ一杯の豆乳や納豆1パックなどで十分摂取できますが、持っていない人はエクオールの状態のサプリを摂取することで、更年期症状が3ヶ月程度で改善されることがわかっています」

あくまで植物由来の成分のため、ホルモン補充療法で挙げたようなリスクの面を心配する必要もありません。

※エクオールを作れる腸内細菌を持っているかどうかは「尿検査」によって診断が可能です。

漢方や運動療法

紹介した2つの方法の他にも『漢方』による改善の方法もあります。

ただ、漢方の特性として各個人によって効果が異なり、更年期の症状の場合でも一部の症状にしか効果が見込めない場合があります。

また、『運動』による改善の方法も高尾先生が話してくれました。

「『更年期症状』のある人の7割程度が運動によって改善されたというデータがあります。

ただ、ポイントとしては『更年期障害』くらい症状が重い方の場合は、運動だけで改善するのは難しい。さらには、継続して運動しないと効果がない」と説明します。

おすすめは「週に3回くらいの運動で、強度が高過ぎない運動」だそうで、ホルモン補充療法やエクオールとプラスして、適度に行うことが望ましいようです。

更年期の症状に対する運動の重要性について「汗やほてり、冷えなどといった『自律神経失調症状』が運動によって改善される」という可能性も口にしてくれました。

 

女性らしく生きるために大切な「エストロゲン」の役割を正しく理解することで、更年期の症状を上手に乗り越えることができるかもしれません。

まずは自分の身体に起きた症状と向き合い、対処法を考えていくことが大切です。

 

取材協力:イーク表参道 高尾美穂先生

この記事は役にたちましたか?

  • すごく
  • いいね
  • ふつう
  • あまり
  • ぜんぜん
不正確な情報を報告

不正確な情報を報告

メールアドレス:任意
※メールアドレスをご入力いただいた方には、改善結果をご報告致します。
コメント(オプション):