
1999年 日本医科大学産婦人科教室入局
日本医科大学付属病院
産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院
(現 横須賀市立うわまち病院)
産婦人科
2002年 東京都保健医療公社
東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院
女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院
女性診療科・産科 助手
現在は石野医院の副院長
専門は漢方(東洋医学)、産婦人科
患者さん一人ひとりに合った薬を作るため、自由にさじ加減ができる煎じ薬を第一と考える。
診療では一人ひとり丁寧に症状の診断を行い、情報の発信を行う。
20代や30代の頃と同じ食事や生活をしているのに、40代になってからなぜか太ってきたと感じていませんか?
とくに、45歳以降の女性は更年期が原因でぽっちゃり体型になっている可能性があります。
更年期とは閉経の5年前後の期間で、一般的に45歳~55歳くらいだと言われています。
この記事では、更年期になると太りやすい原因やむくみとの関係、病院で受ける更年期障害の治療法について解説しています。
更年期に太りやすい原因
更年期に太りやすい理由は、女性ホルモンと加齢が関係しています。
エストロゲンが原因
更年期に太りやすい理由のひとつに、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが急速に減少していくことが関係しています。
エストロゲンには、内臓脂肪をつきにくくしてくれる働きや、脂肪燃焼を助ける働きがあるのですが、急なエストロゲンの減少に身体が反応して太りやすくなります。
そのほかにも、イライラやほてり、動悸などの症状が表れます。
基礎代謝の低下
基礎代謝は歳を重ねるごとに徐々に低下します。このことが更年期と重なることも、太りやすい原因です。
基礎代謝とは、生命維持のために必要なエネルギーのことですが、消費されるエネルギーが少なくなったのに、20代や30代の頃と変わらない食事をしていると太りやすくなってしまいます。
更年期のむくみについて
更年期は太りやすいとともに、むくみやすい時期です。
更年期にむくみやすい理由
更年期には女性ホルモンが減少することで、血行不良になりむくみやすくなります。
「太っている」のと「むくんでいる」ことの違い
むくんでいるのに、太っていると勘違いしている女性も多いようです。
太ることは、体重の増加とともに体脂肪が増えることですが、むくみは体内に余分な水分が溜まることで体重も増えている状態です。
両者の決定的な違いは、体脂肪の増加があるかどうかです。
太っているのかむくんでいるのかを判断するには体脂肪率の計測をするのが良いのですが、家庭用の体脂肪計では正確な数値をはかることは難しいようです。
健康診断などの際に、正しい体脂肪率を把握しておくことをおすすめします。
自分でできる更年期のむくみの対処法
むくみによるまぶたの腫れには、タオルやアイマスクなどで温めたり冷やしたりすると効果的です。
また、脚の場合は軽くマッサージをしてみてください。
更年期障害の治療法
更年期の肥満やむくみは、エストロゲンの減少が影響しているので、更年期障害の治療を行うことで症状を改善できる可能性があります。
年齢的に更年期に当たる人で、頭痛や肩こり、のぼせ、イライラなどといった心や身体の不調が見られる場合には、まずは婦人科を受診して更年期障害の検査を受けてみましょう。
症状によっては、ほかの診療科を受診するようにすすめられるかもしれませんが、その際には医師の指示に従ってください。
ここでは、更年期障害の主な治療法を3つ紹介します。
ホルモン充填療法
ホルモン充填療法は、更年期障害の治療法の第一選択です。
減少しているホルモンを補充する方法で、症状の緩和が期待できます。
しかし、副作用があるので必ず医師の指示のもと、用法や用量を厳守してください。
市販のホルモン剤の注意点
ホルモン剤には「飲む・貼る・塗る」タイプがあり市販もされています。
海外ではサプリメントとして販売していることもありますが、どちらにしても薬剤師や販売登録者に相談の上、用法や用量は厳守しましょう。
漢方薬
妊娠の可能性がある人や原因不明の不正出血がある人、肝疾患や心疾患、乳がんや子宮内膜がんおよびそれらの既往歴のある人は、ホルモン充填療法ができません。
また、人によってはホルモン充填法で十分な効果が見られないこともあります。
このような場合には、保険適用で次のような漢方薬の処方を行います。
・温経湯(うんけいとう)
・五積散(ごしゃくさん)
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など
とくに、更年期によるむくみが気になる人には、当帰芍薬散がおすすめです。これらは、ドラッグストアでも手軽に買うことができます。
抗うつ薬・抗不安薬
更年期障害でも精神的な症状が強く、うつや不安と言った症状がある人で、ホルモン充填法で十分な効果が見られない場合には、抗うつ薬や抗不安薬といった薬を処方することがあります。
自分でできる更年期障害の対処法
更年期障害は生活習慣や食事内容を見直すことで、症状の緩和が期待できます。
そのために、するべきことについて説明します。
生活習慣の見直し
次のことを見直してみましょう。
睡眠時間
女性ホルモンは睡眠中に作られるので、睡眠を十分にとることが大切です。
毎日のように睡眠不足が続いている人は要注意です。
質の良い睡眠をとるために、寝る直前をリラックスして過ごすことや、スマートフォンを見ないといったことを心がけましょう。
ストレスをためない
自律神経を整えるためにも、ストレスをためないことは大切です。
自律神経が乱れていると、緊張状態が続き身体に負担をかけます。
日頃からリラックスする時間を作るようにしてみてください。
喫煙習慣
喫煙していると、血管が収縮するだけでなく、老化にもつながります。
更年期障害の症状を悪化させるので、喫煙習慣のある人は「禁煙」を心がけましょう。
食事の見直し
更年期障害の改善には食事の内容も重要なポイントです。
次に挙げる食べ物や栄養素を積極的に摂るようにすることをおすすめします。
これらをよく嚙んで、腹八分にとどめることで更年期障害の対策にもなるのでぜひ取り入れてください。
女性ホルモンを作る食品を摂る
女性ホルモンを増やす「イソフラボン」を含む食材は、とくに大豆や大豆製品に多く含まれています。
タンパク質はホルモンを作るもとになるので、肉類・魚類・乳製品を積極的に摂りましょう。
骨を丈夫にする食品を摂る
閉経すると、女性ホルモンの減少が関係して骨がもろくなります。
そこで、骨を丈夫にするためにカルシウム・ビタミンD・マグネシウムを積極的に摂りましょう。
カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品や、小魚・豆腐や豆類などに多く含まれています。
また、ビタミンDは、鮭やしらすなどの魚類やきのこ類に、マグネシウムは豆腐や豆類・海藻類などに多く含まれています。
ホルモンの吸収や合成を助ける食品を摂る
体内でホルモンの吸収や合成を助ける働きがある緑黄色野菜や淡色野菜を組み合わせて、1日で350gほど摂るようにしましょう。
まとめ
気づかないうちに更年期障害の症状が表れていることもあります。
45歳~55歳くらいの間に体調不良やほてり、イライラなどの精神症状が続いたときは更年期障害を疑いましょう。
更年期には基礎代謝が低下しているのにもかかわらず、20代・30代のときと同じ食生活を続けることから太りやすくなります。また、女性ホルモンの減少により血行不良を起こしやすく、むくみやすいときでもあります。
更年期障害の治療を行うとともに、生活習慣や食生活の見直しを行うことで症状の緩和につながります。
執筆者:医療法人社団 石野医院 石野博嗣 先生
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