
2006年 北里大学大学院卒
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
早期発見、早期治療を心がけ、健康で心豊かな人生を歩んでいただくことを願っており、内科・消化器内科を中心に幅広い情報の発信に努める。
『巨大結腸症』は、便秘を引き起こす腸の病気のひとつです。
「便秘に悩まされたことがある」という人は多いでしょう。しかし「たかが便秘」と侮ってはいけません。腸に何かしらの異常が生じて、便秘になっている場合もあります。
この記事では、巨大結腸症とはどんな病気か、症状や原因、治療法について解説します。
巨大結腸症について
1.巨大結腸症とは?どんな病気?
大腸の中の『結腸』という部分に異常な広がりがある病気を総称して『巨大結腸症状』といいます。
生まれながらにして発症している『先天性』と、生まれてから何らかの原因によって起こる『後天性』とがあります。
先天性の巨大結腸症
先天性巨大結腸症は、『ルシュスプルング病』とも呼ばれ、難病に指定されています。生まれてくる約5,000人に1人の割合で発症し、とくに男の子の割合が多いです。
後天性の巨大結腸症
後天性の巨大結腸症には、『症候群結腸症』と『特発性巨大結腸症』の2つがあります。
『症候群結腸症』は、他の病気や代謝、筋肉、神経系の異常などをきっかけとして起こります。
一方、『特発性巨大結腸症』は、腸の機能や腸管壁内の神経節細胞に異常がなく、成人してから発症します。
2.巨大結腸症の症状
おもな症状は、長期の便秘
一般的に、1〜2週間以上の長期間の便秘を症状としてうったえる人が多いです。
通常であれば、食べた内容物を消化管の下の方へ移動させるために、脳と腸の神経細胞が働き、消化管を収縮させる『蠕動(せんどう)運動』がおこなわれます。
巨大結腸症になると、腸の神経細胞が働かず、腸管が萎んだままになり蠕動運動ができません。そうすると、便が腸内に溜まり、腸が拡張するので、お腹が膨れたように見えることもあります。
進行すると、『腸閉塞』という、腸が詰まった状態を引き起こしてしまいます。
後天性巨大結腸症は、軽症ですむことが多い
後天性巨大結腸症は迅速に対処すれば軽症ですむことがほとんどです。
先天性巨大結腸症は、深刻な症状になることも…
先天性巨大結腸症では、新生児や乳児期に症状が現れます。
後天性に比べて深刻な場合が多く、頑固な便秘、腹部膨満感による嘔吐、重症な腸炎、腸閉塞を引き起こします。嘔吐物が肺に入って肺炎になることもあります。また十分な栄養分が摂れないことによる栄養不足、発育障害が生じるケースもあります。
放置すると、腸の細胞が死んでしまったり、腸に穴が空いたりすることもあり、命に危険が及びます。
巨大結腸症にかかる原因
1.先天性は、原因が分からないか、遺伝子がかかわっている
先天性巨大結腸症の多くは原因がわかっていません。
しかし中にはある特定の遺伝子によるものや、遺伝子の突然変異によって起こるといわれているものもあります。
大腸の蠕動運動にかかわる神経節細胞が、生まれつき欠けていると、先天性巨大結腸症を起こしてしまいます。
このうち8割ほどは、S字結腸から肛門までの、肛門入り口付近の神経節細胞の欠損ですが、大腸全体まで、中には小腸まで欠損している例もあります。
2.後天性は、さまざまな異常や病気、薬など
後天性巨大結腸症は、代謝、筋肉、神経系の異常や、感染症、中毒性大腸炎などの病気が原因となって起きることがあります。
さらに、ストレスや精神安定剤、下剤の乱用による副作用でも巨大結腸症になることもあります。
また、結腸内の悪性腫瘍(がん)や臓器内の癒着から便やガスが留まることでも発症します。
巨大結腸症の治療
まず、巨大結腸症かどうか診断する検査をしてから、治療をおこないます。
巨大結腸症を引き起こす原因となっている病気があれば、優先的にその治療をして、拡大した腸に対しては、負担を和らげるよう治療します。
1.巨大結腸症の検査方法
巨大結腸症の診断には、次のような検査をします。
・注腸造影検査…大腸をX線撮影して詳しく調べる検査
・直腸肛門内圧測定検査…肛門の締まりの強さや直腸の機能を測定する検査
・直腸生検検査…直腸の粘膜の一部を採取して調べる検査
2.薬物療法
便秘には便を柔らかくして排便を促す『緩下剤』を用いて、腹部の膨れや張りには『消化管運動亢進薬剤』を用います。
3.外科的療法
先天性巨大結腸症の手術
・正常な神経節細胞のある腸管と、肛門を結ぶ
先天性巨大結腸症の手術では、生まれつき神経節細胞のない腸管を切り取って、正常な神経節細胞がある腸管と肛門を結びます。
神経節細胞がない部分が広範囲に及ぶときには、小腸移植や多臓器移植を行うこともあります。
・手術をしても、排便機能が完全に戻ることは少ない
手術で根本的に治療をしても、排便機能が完全に戻ることは少なく、腸炎を起こしたり、便秘になったり、失禁をしたりすることがあります。肛門の機能が低下してくると、将来的に人工肛門になることもあります。
・手術をするのは、成長して体力がついてから
先天性巨大結膜症では、基本的に、成長して体力がついてきた頃を見計らって手術を行います。
それまでは、チューブを通して流動食を投与したり、静脈に栄養を注入したりして栄養を補給します。同時に、浣腸や肛門拡張で便秘解消につとめます。
後天性巨大結腸症の手術
後天性巨大結腸症では、薬物療法での治療が難しい場合に、手術によって拡張している結腸を切除します。
まとめ
食事や運動で、便秘を解消しよう!
便秘はごく身近な症状ですが、同時に大病へとつながる恐れもあります。普段から便秘予防として、食物繊維の多い食事を摂る、水分をこまめにとる、適度な運動をして腸に刺激を与えるなど、排便習慣をつける工夫をしていきましょう。
安易な下剤の使用や、ストレスやに注意
便秘だからといって安易に下剤を使うのも巨大結腸症になるリスクを伴いますので、注意してください。
また、精神的ストレスも便秘や巨大結腸症につながります。適度に休息をとったり、リフレッシュをしたりしてこまめにストレスを解消できるといいですね。
慢性的な便秘が気になる場合は、病院へ
慢性的な便秘にお悩みの方は、生活習慣を見直すとともに、内科、消化器内科へ行って診療を受けましょう。
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