
管理栄養士(栄養学)
1999年 東京家政学院短期大学 生活科学科 食物栄養学科 卒業 準学士
1999年 調剤薬局にて栄養カウンセリング
2001年 管理栄養士 取得
2005年 健康食品・化粧品の会社にて学術担当
2012年 株式会社 Luce 代表取締役
山野美容芸術短期大学や服部栄養専門学校にて栄養学の講師を勤める。また、小田原銀座クリニックの栄養顧問など、栄養学・美容学の分野で活動。
その他、テレビや雑誌などを通して日常生活に密着した健康知識・栄養情報を発信中。
手軽に食べられて冬のビタミン補給にぴったりなみかんは、今が旬です。
お弁当にもそのまま持たせられ、りんごのように包丁で皮を剥く手間もないので忙しい主婦にとってはありがたい果物です。
この時季に店頭で見かけることも多いみかんには、どんなパワーが秘められているのでしょうか? また、みかんの白いすじは、取り除くべきか一緒に食べるべきかも気になるところです。
そこで管理栄養士の望月理恵子先生に、みかんの栄養や効果的な食べ方、みかんの皮にまつわる健康効果について詳しくお話を伺いました。
みかんの健康効果について
旬の食べ物は栄養価も高いうえ、美味しいことで知られていますが、みかんも例外ではありません。
みかんを旬の時季に食べることをおすすめするのにも理由があるようです。
望月先生に詳しくお聞きしました。
寒さが厳しい冬にこそみかん!
今では、季節を問わず果物や野菜を手に入れることができます。
あえてこの旬の時季にみかんを食べることのメリットや1日の適量について望月先生はこのように述べています。
「みかんが旬の冬は乾燥肌になったり、血管系の病気が多くなりがちです。
みかんには皮膚や粘膜を丈夫にし、血管を強化する栄養素が豊富に含まれているので、ぜひ寒さが厳しい今の時季に食べることをおすすめします。
1日2~3個(200g以内)を食べるだけで1日に必要なビタミンCが摂取できます」
では、みかんにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか?
望月先生は「抗酸化作用や免疫力向上に働きかけるビタミンCや、皮膚や粘膜を丈夫にするβーカロテン、腸内環境を整える水溶性食物繊維(ペクチン)、血管強化に働きかけるフラボノイドや疲労回復に働きかけるクエン酸など多くの栄養素が含まれています」と説明しています。
実はスゴい!みかんの「皮」や「白いすじ」
みかんの食べ方は人それぞれです。白いすじを取らずにそのまま食べる人もいれば、キレイに取り除く人もいます。
しかし、望月先生によると白いすじを取ってしまうのはもったいないとのことで、みかんは皮にこそ豊富な栄養素が含まれていると述べています。
そのことについて詳しく答えてくれました。
みかんの皮の健康効果
みかんの外皮はむいた後、捨ててしまうことがほとんどではないでしょうか?
しかし、みかんは皮にこそ多くのメリットがあるようです。
漢方薬にも使われている!?
みかんの皮は「陳皮(ちんぴ)」といって漢方薬にも使われています。
陳皮の効能については「血管強化や血行促進のヘスペリジン、香り成分のリモネンが含まれています。リモネンにはリラックス効果もあり、ストレス緩和に働きかけます。
漢方では冷え、胃もたれ、嘔吐、風邪による喉の痛み、せき、冷え症、肩こりなどの改善に働きかけ、消化促進、食欲増進などの効果もあるとされています」と説明しています。
皮に含まれる「オレンジオイル」の作用
皮に含まれる「オレンジオイル」は油汚れをキレイに落とすので、中性洗剤などの成分としても知られています。
では、健康には何か良い作用はあるのでしょうか?
望月先生は「皮に含まれるオイルは主に香り成分の『リモネン』です。お風呂に入れることでリラックス効果のほかにも保湿効果が期待できます。また、食べて摂取することで、リラックス効果のほかにも血行促進や免疫力向上などの働きもあります」と述べています。
白いすじの健康効果
みかんの白いすじは、根から吸い上げた水分や栄養分をみかんの果実に送る大事な役割を担っています。
しかし、繊維質で食べづらいため、取り除いて食べるという人も多いのではないでしょうか?
望月先生によると、「白いすじには『アルベド』という正式名称があります」とのことです。
また、白いすじには何か健康に良い作用があるのか聞いたところ、このように答えています。
「すじや皮は、ポリフェノールの一種『ヘスペリジン』というもので『ビタミンP』とも言われています。抗酸化作用があり、毛細血管の強化や血行促進の働きがあります。
ですから、すじが多い方がヘスペリジンは多いと言えます。しかし、『白いすじが多い=美味しい』とは限りません。」
さらに、白いすじには問題点もあり「消化されにくいものなので胃腸が不調なときは取り除いた方が良いです」と注意を促しています。
みかんの効果的な食べ方
みかんにはそのまま食べるほかに、ジュースや缶詰といった加工品、冷凍といった食べ方もあります。
地方によっては「焼きみかん」や「みかん鍋」といったように、加熱して食べるのがポピュラーなこともあるようです。
ここでは、みかんの栄養価を効率よく吸収できる食べ方についてお聞きしました。
加工や加熱で栄養価が変わる!?
みかんの効果的な食べ方について望月先生は「そのまま食べるのが栄養素を壊すことなく、無駄なく摂取できます。また、冷凍みかんも生で食べるのと、さほど栄養価は変わりません。
すじや皮に多いヘスぺリジンという成分は、血流改善や冷え軽減の働きがあるポリフェノールです。ジュースや缶詰だと、すじや皮が取り除かれてしまっています。また、食物繊維も減少してしまいます」と説明しています。
では、地方によって好まれている焼きみかんやみかん鍋などの「加熱みかん」はどうなのでしょうか?
望月先生によると「加熱時間が長いとビタミンCが減少します。また、水溶性食物繊維も加熱の仕方によっては流れ出てしまうことがあります」とのことです。
また、皮ごと食べられるマーマレードはおすすめだそうで、理由については「皮ごと食べられるようにする調理法は、栄養価も高く、効率的に摂取ができます」と述べています。
みかんは食べ過ぎても大丈夫?
旬のみかんは美味しいので、つい食べ過ぎてしまいがちです。
では、みかんを食べ過ぎることで何か問題はあるのでしょうか?
また、小さな子どもに与える際の注意点についても望月先生にお聞きしました。
「健康な人がたくさんみかんを食べてもとくに問題はありません。しかし、食べ過ぎは糖分の取り過ぎにつながります。水分やビタミンC の作用により一時的にお腹を下すこともあるので注意しましょう。
また、食べ過ぎると手が黄色くなることがありますが、これは『柑皮症(かんぴしょう)』と言い、とくに健康に問題はありません。黄色の色素であるβーカロテンが多いので一時的に顔の皮膚や手の平、足の裏などに沈着して黄色く見えることがあります。
摂取をやめれば自然に元に戻ります」
子どもに与える際の注意点
また、子どもに与える際の注意点については、「すじや皮は健康な大人であれば食べた方が良いのですが、消化しにくいので小さな子どもに与える際にはある程度取って食べさせましょう」 と説明しています。
白いすじを簡単に取る方法
小さな子どもにみかんを与えるときや、胃腸の調子が悪いときなどは白いすじを取った方が良いそうです。
簡単に取る方法についてたずねたところ、「ヘタ側から外皮ごと果実を4等分にしてから皮をむいていくと、すじが取れやすいです」とアドバイスをもらいました。
まとめ
この時季は、みかんが旬を迎えています。
みかんは白いすじや皮にも栄養が豊富にあり、すじは取らずに食べ、皮はお風呂に入れるなど再利用もできるので、ぜひ試してみてください。
また、みかんはジュースや缶詰といった加工品にしたり、地方によっては加熱したりして食べることもありますが、そのまま食べるのが一番、栄養素を効率よく吸収できます。
例えば、皮の栄養を丸ごと摂取できる「マーマレード」もおすすめです。
みかんはたくさん食べてもとくに問題はありません。しかし、糖分の摂りすぎや水分・ビタミンCの摂りすぎによりお腹を下すこともあるので1日2~3個程度を食べるようにしましょう。これで1日に必要なビタミンCも十分に摂ることができます。
取材協力:管理栄養士 望月理恵子 先生
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