1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入局 外科研修
(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年 岡村医院、医師として勤務し現在に至る
2012年 岡村クリニック開院
※計15年心臓血管外科医として勤務
大学病院および関連病院において、心臓血管外科医として勤務。
外科領域のみならず内科医としての経験を生かし、循環器領域疾患を始め、患者さんがお悩みに感じることなど気軽に何でも相談できるような地域のかかりつけ医院を目指す。
皆さんも一度くらいは、腕や脚の『むくみ』を経験したことがあるのではないでしょうか。
むくみの多くは、皮膚のすぐ下にある『リンパ管』の中でリンパの流れが滞ることによって起こります。
こちらの記事では、そんなむくみを引き起こす病気、『リンパ浮腫』の病院で行う治療法や、普段の生活で気をつけるべきことについて解説します。
リンパ浮腫とは
1.どんな病気か?
『リンパ浮腫』は、リンパ液の流れが悪くなり、腕や脚にむくみが出る病気です。放っておくと悪化する可能性があり、むくんでいる部分を切除することもあります。
『乳がん』や『子宮がん』、『卵巣がん』、『前立腺がん』などの病気の治療が原因で起こることがほとんどです。稀に、それ以外の原因でかかることもあります。
2.リンパ浮腫の症状
リンパ浮腫にかかっても、初期段階であれば自覚症状は少ないです。しかし重症化するにつれて症状は重くなり、日常生活にも支障をきたすようになります。
軽度の症状
軽度な症状の場合は、はっきりとした自覚症状が少なく、むくみに気が付かないことも珍しくありません。
むくみ始めると、皮膚の厚みが増して、腕や脚の静脈が見えにくくなります。
中程度の症状
中程度になってくると、むくみのあるところを指で押したときに、痕がくっきりと残ります。
がんの治療前に比べて、腕や脚が太くなり、腕や脚が重い、疲れやすいなどの症状がみられます。
重度の症状
症状が進行し、重度になると、皮膚が乾燥しやすくなり、厚みも増して硬くなります。
むくんでいる場所が腫れあがり、関節が曲がりにくくなって、動くたびに違和感を覚えます。痛みを感じることもあります。また、皮膚が細菌に感染しやすい状態のため、『リンパ節炎』や『蜂窩織炎』といった病気にかかりやすいです。
むくみの起こりやすい部位とセルフチェック
1.むくみはどこに起こる?がんの種類ごとに解説
乳がんの治療後
がんのあった方の肘の上下、上肢、胸部あたりがむくみやすいです。
子宮がんや卵巣がん、前立腺がんの治療後
下腹部、陰部、脚の付け根、下肢のあたりがむくみやすいです。そこから徐々に指先やつま先へと、むくみが広がっていきます。
2.リンパ浮腫かも…と思ったら!自分でできるチェック法
リンパ浮腫にかかっているかどうか、自分でチェックする方法を紹介します。次の項目について、左右の腕や脚を見比べたり、手で触ったりすることでチェックしていきましょう。
「太さ」に変化がないか計測する
左右の腕や脚の太さを測りましょう。
腕や脚の太さは、時間帯によっても異なります。毎日決まった時間に、同じ姿勢で同じ部位を測ることで、むくみの有無がわかります。
皮膚をつまんで「しわ」や「厚み」、「硬さ」を調べる
皮膚を自分の指でつまみましょう。むくみがあると、皮膚にしわがよりにくくなります。左右で、皮膚の厚みや硬さに違いがないかも合わせて確認してください。
「血管の見えかた」の違い
むくんでくると、今まで見えていた静脈が見えにくくなります。
左右の見えかたの違いや、昨日までと変化がないかを確認してください。
「下着や靴下の痕」が残りやすくないか
むくんでいると、下着や靴下のゴム痕が残りやすくなります。いつもより痕が残りやすく、なかなか元に戻らないようであれば、注意する必要があります。
リンパ浮腫の治療法
1.症状があらわれたら、まずは内科へ!
リンパ浮腫をうたがわれる症状がみられたら、まずは内科を受診しましょう。
2.治療法の種類
リンパ浮腫の治療法には、リンパドレナ―ジ、圧迫療法、リンパの流れを良くする運動(圧迫を行わない運動、圧迫しながら行う運動)の複合的治療や、局所麻酔・小切開で行う超微細手術があります。
リンパ浮腫の治療には、むくみを改善し、重症化を防ぐことが大切です。症状に合わせて、治療法を組み合わせながら治療します。
リンパドレナージ
美容や健康のために行うようなマッサージとは異なる、治療目的のマッサージです。
むくんだ腕や脚をやさしくマッサージして、リンパ液の流れを良くします。
圧迫療法
腕や脚に『弾性包帯』や『弾性着衣』などをつけて圧力をかけることで、リンパ液のたまりを防ぐ治療法です。症状によって、圧迫の方法が異なります。
軽度~中等度の場合は弾性着衣(腕:弾性スリーブや弾性グローブ 脚:弾性ストッキング)を用いて圧迫します。重度の場合は、弾性包帯を用いて圧迫を行います。
圧迫をした状態での運動
弾性包帯や弾性着衣をつけ圧迫した状態で、ゆっくりと大きく筋肉を動かすように運動する治療法です。ゆっくりと運動することで、むくみを改善します。
むくみが腕の場合は、ゆったりと手を握ったり開いたりします。ひじやひざ、手首や足首にむくみがある場合は、関節の曲げ伸ばしを繰り返します。
過度な運動は、かえって症状を悪化させてしまいます。専門的知識を持つ医療者の指導の下で、正しく行うようにしましょう。
リンパの流れをよくする運動療法
リンパの流れを良くする運動療法は、関節や筋肉を動かしてリンパ液の流れを良くします。
肩まわし運動、足首の底背屈運動、自転車こぎ運動、ウォーキング、水泳などの運動を実施します。
弾性包帯や弾性着衣をつけた状態で行うと、さらに効果が期待できます。
外科手術(局所麻酔・小切開で行う超微細手術)
『顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術』を局所麻酔や小切開で行います。顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術は、リンパの流れを改善する手術で、むくみの緩和が期待できます。術後の痛みも少なく、体の負担が軽い外科手術です。
圧迫療法やリンパドレナ―ジなどと、あわせて行うことで、さらにリンパの流れを改善することが期待できます。(治療可能な施設は限られています。)
その他、原因となる病気があれば、その治療を優先する
がんがリンパ節に移転するときに、リンパ浮腫が起こることがあります。むくみとともに、痛みやしびれなどの症状もあらわれます。その場合は、原因となる病気の治療が優先です。むくみについては、医師と相談しながら対処していきましょう。
3.普段の生活で気をつけること
日常生活では、むくみの改善や予防のために、次のことに気をつけましょう。
・皮膚を清潔にし、保湿を心がける
・虫刺されなどで皮膚を傷つけないようにする
・体重が増加しないようにする
・減塩を心がけ、栄養バランスのよい食事をとる
・アルコールを飲みすぎない
・きつい下着や靴下の着用は避ける
・寝るときにむくみのある部位を高くする
・仕事や家事をするときは休みながら
・長時間の同じ姿勢は避ける
まとめ
リンパ浮腫は、早めに発見し、治療することが大切です。
がんの治療を受けたかた全員にリンパ浮腫が起こるわけではありませんが、治療後は手や脚のむくみに気を配るとよいですね。
また、日常生活でも先に解説したことを心がけ、リンパ浮腫の予防や改善につとめましょう。もし症状が悪化したら、速やかに医療機関を受診しましょう。
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