取材協力
薬剤師:石上和子 先生
静岡薬科大学出身
現在管理薬剤師として関東の薬局で活躍中。
子供から高齢者まで皆様が安心して、効果的にお薬を使用していただけるよう、日々調剤を行う。
まずは薬を飲まずに済むように自分自身で対策を取ること。そのために役立つ情報を発信していく。
インフルエンザのピークは、1月下旬から3月上旬がピークといわれています。11月に入ると、各医療機関で予防接種を行うようになりますが、もしもインフルエンザにかかってしまった場合、どのように治療するのでしょうか。
そんな中、2018年3月に発売された抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」が注目を集めています。この新薬について、管理薬剤師の石上和子先生にコメントをいただきました。
新薬「ゾフルーザ」の効果と注意点
これまでインフルエンザの治療薬として使われてきたのは、「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」の4種類です。そこに登場してきたのが、「ゾフルーザ」です。
この薬の効果について、石上先生はこう説明してくれました。
「今までの抗インフルエンザ薬とは違う、作用機序の『キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬』と呼ばれる新しい薬です。効果はタミフルと同様、有症状期間をおよそ1日短縮できます。
ウイルス検出期間をタミフルより2~3日短縮できるので、人にうつす可能性が減少します」
例年、感染拡大が懸念材料となるインフルエンザですが、他者にうつしてしまう可能性を減らすことができるというのは大きな効果といえるでしょう。
従来の治療薬との比較
抗インフルエンザ薬の比較表
薬品名 | 服用回数 | 服用の方法 |
---|---|---|
タミフル | 1日2回(5日間) | 飲み薬 |
リレンザ | 吸入 | |
イナビル | 1回 | |
ラピアクタ | 注射 | |
ゾフルーザ | 飲み薬 |
上記の比較表にも示したようにゾフルーザはタミフルと同じ飲み薬です。しかし、タミフルが1日2回を5日間続ける必要があるのに対し、ゾフルーザは1回の服用で済むという利点があります。
ただ、石上先生いわく「約1割の患者でウイルスに遺伝子変異が起こり、ウイルス検出期間が延びて症状が長引くことがあります」と説明してくれました。
服用できる年齢について
では、ゾフルーザは年齢に関係なく服用することができるのでしょうか。
「年齢制限はありませんが、最小単位の10mg錠が投与可能となるのは体重10kg以上からです」(石上先生)
ただ、3歳以下のお子さんは服用を控えた方がよいという専門家の意見もあるようです。これについてもコメントをいただきました。
「タミフルの場合も異常行動との関連の問題が指摘されていたように、(ゾフルーザも臨床データが少なく)どんな副作用があるかわからないため、3歳以下は控えるように考えている医師もいます」(石上先生)
タミフルの場合、異常行動は副作用ではなくインフルエンザによる症状との指摘もあります。しかし、副作用のリスクを招かないためにも、3歳以下のお子さんの服用は避けるようにしましょう。
インフルエンザに苦しまないためにも予防が大切
もしもインフルエンザにかかってしまった場合、症状を一日でも早く和らげるために抗インフルエンザ薬が存在します。
しかし大事なのは、薬を飲まずに済むように自分自身で対策を取ることです。
対策について石上先生は、「高齢者やハイリスク患者(免疫力が低い方)は予防注射が必要だと思います。手洗いやうがいなどは基本的に必要かと思います」と、やはり予防の大切さを訴えます。
「普段健康な人がインフルエンザにかかっても自然軽快するもので、かかってから48時間以内でないと抗インフルエンザ薬は意味がありません。
また、抗インフルエンザ薬を飲んだとしても症状が約半日から1日くらい短縮するだけです。医師によっては抗インフルエンザ薬を処方しない場合もありえます。やはりウイルスの変異が大きな問題となるかもしれません」
インフルエンザにかかってしまうと、学校や会社を休まなければいけなくなります。
まずは予防のための対策をしっかり行い、インフルエンザの症状に苦しまないためにもピークに備えることが大切です。
インフルエンザの感染経路や潜伏期間については、下記の関連記事をご覧ください。
全国の主要都市でインフルエンザの予防接種を受けられる医院を探すこともできます。
【関連記事】『インフルエンザのうつる期間や確率とは?学校や会社はいつまで休む?』
取材協力:管理薬剤師 石上和子先生
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