
2006年 北里大学大学院卒
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
早期発見、早期治療を心がけ、健康で心豊かな人生を歩んでいただくことを願っており、内科・消化器内科を中心に幅広い情報の発信に努める。
溶血性尿毒症症候群は、おもに子どもにかかる病気です。腸管出血性大腸菌O-157に感染することで発症します。
この記事では、溶血性尿毒症症候群にかかる原因や検査、治療について解説します。
溶血性尿毒症症候群について
1.溶血性尿毒症症候群とは
『溶血性尿毒症症候群』は、腎臓や脳に影響を与える病気です。貧血や血小板の減少、腎不全などを引き起こします。
基本的に子どもにかかります。おもに『腸管出血性大腸菌O157』に感染することで発症します。
2.溶血性尿毒症症候群の原因
溶血性尿毒症症候群の原因には、先天的なものと後天的なものがあります。
O-157に感染すること
後天的な原因は、O-157に汚染された食べ物を食べ、O-157に感染することです。感染すると、はじめは胃腸炎の症状があらわれます。その後感染から5~10日経つと、約5%の子どもに溶血性尿毒症症候群が発症します。
遺伝子変異
先天的な原因としては、遺伝子変異によって溶血性尿毒症症候群にかかることがあります。
まれに、成人にもHIVや抗がん剤が原因で発症する
他にも、成人では、稀ではありますがHIVに感染していたり、抗がん剤治療を行っていたりすると、合併することもあります。
3.溶血性尿毒症症候群の症状
おもな症状は、貧血や腎不全など
先に解説したように、溶血性尿毒症症候群の症状は『貧血』や『血小板の減少』、『腎不全』などです。腎不全にかかると、尿の量が減り、『透析』が必要になることもあります。
脳に影響がおよんだ場合の症状
また、脳に影響がおよぶと、『けいれん』や『意識を失う』といった症状があらわれます。重症の場合は、死亡することもあります。
O-157に感染すると、激しい腹痛や血便をともなう下痢にかかります。それにより赤血球が破壊されたり、血小板が減少したりして、貧血などの症状を引き起こします。
溶血性尿毒症症候群の治療
1.ひどい腹痛や嘔吐、下痢がみられたら病院へ!
強い腹痛や下痢、嘔吐などの症状がみられたら、早めに小児外科や内科を受診しましょう。
2.溶血性尿毒症症候群の検査
細菌検査でO-157にかかっているか判断
まず、『便の細菌検査』をして、症状がO-157によるものかどうかを判断する必要があります。
溶血性尿毒症症候群へ進行しているか調べる
O-157への感染が判明したら、『血液検査』や『尿検査』によって、溶血性尿毒症症候群への進行がみられるかを調べます。
感染からの日数も考慮して検査する!
先に解説したように、溶血性尿毒症症候群を発症するのは、感染から5~10日後です。検査は感染からどれだけ経っているかも考慮しながらおこないます。
3.溶血性尿毒症症候群の治療
胃腸炎の場合は、水分補給を十分おこなう
胃腸炎の症状にとどまっている場合は、十分な水分補給を心がけましょう。水分補給をすることで、嘔吐などによる脱水症状を防ぐとともに、菌や毒素の排出を促します。
溶血性尿毒症症候群へ進行していたら、入院が必要!
溶血性尿毒症症候群への進行がみられたら、2週間ほどの入院が必要です。
輸血や人工透析など、症状に合わせて治療する
貧血が進行している場合は、『輸血』をおこないます。腎不全の症状がみられたら、『人工透析』をおこなうこともあります。
溶血性尿毒症症候群は95%以上が助かる病気
溶血性尿毒症症候群は、正しい検査と治療がおこなわれれば、95%以上の子どもが助かる病気です。
4.完治まできちんと通院を!
溶血性尿毒症症候群の症状がおさまり、治ったと思っても、長期にわたって腎臓の障害に悩まされることもあります。
定期的に検査や診察をうけ、医師の指示にしたがって、しっかりと完治させることが大切です。
溶血性尿毒症症候群の予防について
1.O-157の発生源は?
O-157は、生肉や、加熱の十分でない肉、殺菌処理のされていない牛乳、チーズなどから感染します。
2. 溶血性尿毒症症候群を予防するために
肉を食べる場合は、しっかりと火を通し、安全性に気を配ってください。また、子どもが気づかないうちに井戸水などを口にすることがないよう、保護者がしっかりとみていましょう。
まとめ
溶血性尿毒症症候群は、完治させないと、腎臓の機能に後遺症が残ることもあります。
子どもに下痢や発熱、嘔吐などの症状がみられたら、すぐに病院を受診して診療を受けましょう。また、O-157の感染を予防するため、食品にしっかり火を通すことも大切です。
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