難聴について解説!子どもや家族の“聞こえ”を助ける【言語聴覚士コラム】

難聴
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監修者

澤田久美子 先生

言語聴覚士

北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻

耳鼻咽喉科ののはなクリニック
横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属病院 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属第三病院 耳鼻咽喉科

音を聞き取るということは、人が生活するうえでとても大切な要素です。相手の声がよく聞こえないということになると、コミュニケーションにも影響を及ぼします。

今回は「聞こえ」のしくみに加え、子どもやお年寄りの難聴についても詳しく解説し、対応策についても紹介していきます。

「聞こえ」の仕組み

人の耳は、下記のイラストのように外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分けられます。

人の耳内部

【出典】オーティコン補聴器カタログ

そして「なぜ聞こえるのか」、その流れは以下の通りです。

① 空気を伝わって音の波が外耳道に入る
② 鼓膜が音の波によって振動する
③ 鼓膜の振動が中耳内の耳小骨に伝わり、耳小骨は鼓膜の振動を大きくする
④ 鼓膜の振動が内耳に伝わり、蝸牛の中にあるリンパ液が振動し、有毛細胞がその動きを感知する。有毛細胞は感知した振動を電気信号に変換し、聴神経に伝える。
⑤ 聴神経を通じ、電気信号が脳に伝わる
⑥ 伝わった信号を音(言葉)として認識する

年代別聴き取り度合い

【出典】オーティコン補聴器カタログ

難聴の種類について

難聴とは、聴覚に何らかの問題があり、音が聞き取りにくくなることをいいます。

難聴にはいくつかの種類があります。障害される部位によって、①伝音難聴、②感音難聴、③混合性難聴に分けられます。

伝音難聴

障害部位:外耳や中耳の音を伝える部分の障害

原因:鼓膜外傷、滲出性中耳炎、急性中耳炎、頭部外傷、外耳中耳の先天性形成不全、耳硬化症など

難聴の程度:軽度から中等度

・耳をふさいだ時のように周りの音が小さく聞こえる
・通常は一時的難聴であり、内服や治療より改善することが多い
・場合によっては手術が必要になることがある

感音難聴

障害部位:内耳(蝸牛と有毛細胞)や内耳より奥の聴神経の障害

原因:先天性形成不全、遺伝性、頭部外傷、加齢、角の騒音、特定の薬剤による障害

難聴の程度:軽度から重度

・こもって聞こえる
・音が割れて言葉として聞こえにくく感じる
・最も深刻な場合(重度難聴)では何も聞こえない

混合性難聴

障害部位:伝音難聴と感音難聴の両方の障害

難聴の程度:軽度から重度

小児難聴は早期の対策を

小児難聴は、成人(高齢者)難聴と異なり言葉の発達に影響を与えるため、早期発見・早期療育が必要です。

言語やコミュニケーション能力は生後2~3年のうちに急速に発達するため、難聴の発見が遅れるとこれらの能力の発達も遅れてしまう可能性が高くなるからです。

小児難聴の原因には、遺伝によるものとそうでないものがあります。遺伝によらないものには出生時やその前後の病気も含まれます。

また、難聴の原因がわからないものもあります。難聴をもった子どもの90%は聞こえが正常な両親から生まれているといわれています。

小児期に発見される難聴は主に①先天性難聴、②滲出性中耳炎、③慢性穿孔性中耳炎・中耳奇形・中耳真珠腫が挙げられます。

小児難聴_子ども

先天性難聴

先天性難聴は新生児約1,000人に1人の確率で発症します。以前は、先天性難聴は3歳児健診などに「ことばの遅れ」などで発見されていました。

しかし、現在では日本全国の約70%の産科施設で新生児が退院する前に、新生児聴覚スクリーニング検査が行われるようになりました。

これにより、ごく早い段階で赤ちゃんの聴力異常を発見することができ、両親と一緒に医療者側は最良の治療計画を立てたり、赤ちゃんが話し言葉を学べるよう早くから育児や教育の面で働きかけたりすることが可能となりました。

滲出性中耳炎

「なんとなく音に対する反応が鈍い」などといった症状で耳鼻咽喉科を受診することが多いです。鼓膜の内側にあたる中耳に浸出液が溜まるため、軽度から中等度の難聴を生じます。しかし、治療により改善する難聴です。

慢性穿孔性中耳炎・中耳奇形・中耳真珠腫

みみだれや難聴などを訴えて耳鼻咽喉科を受診される場合が多いです。手術適応になることがあります。

「難聴」とお子さんが診断された場合

お子さんが難聴と診断された場合、難聴の程度や難聴になった年齢によっては、耳で聞く訓練を受けなければなりません。

この際、私たち言語聴覚士が中心となって進めていきます。小児の難聴は、言葉や音を知覚し認識する能力や言葉の発達を遅らせ、コミュニケーション障害をもたらすことがあります。

子どものそれらの能力は学習によって身につくため、先天性難聴や高度難聴の場合は、生後6か月頃までに補聴器をつけ、少なくとも1歳6か月頃までには適切な言語指導が開始されることが理想とされています。

これまでの研究報告によると、このように早期から治療されたお子さんは、聞こえに特に問題ないお子さんと同じ程度のコミュニケーション能力を身につけることも可能であると言われています。

中耳に水が溜まっている場合などは一時的な軽度の難聴(多くは伝音難聴)になり、長引く両耳の感染の場合は言語発達が遅れてしまう可能性があります。そのため、治療が最優先されます。

必要な治療で症状が落ち着き、それでも難聴が改善されない場合は補聴器を両耳に装用して、聞こえと言葉の教育を受けます。

補聴器は、音を増幅し言葉を聞いて言葉の能力を発達させる役割を持っています。小さなお子さんにはお子さんの成長に合わせて調整がしやすい耳掛け型の補聴器をすすめることが多いです。

重度の感音難聴の場合は、まずは補聴器で言語獲得を促進するよう指導していきますが、手術も選択肢のひとつとなるかもしれません。人工内耳とよばれる器械を手術で内耳に埋め込むことも可能です。

老人性難聴の特徴と対策

加齢によって誰にでも起こりうる難聴です。多くは感音難聴です。聞こえ方には個人差がありますが、加齢により高い音から聞こえにくくなります。

日本語は母音と子音から構成されていますが、高い音が聞こえにくくなると子音が聞き取りにくくなり、聞き間違えをしやすくなります。

例えば、「さ」は子音・高音の{s}と母音・低音の{A}で構成されています。老人性難聴になると、子音・高音の{s}が聞き取りにくくなり、7時(しちじ)が1時(いちじ)に聞き誤るなど『何か言っているということはわかるが、何て言っているのかわからない』という状況になります。

また、加齢とともに入ってきた音を処理・分析する能力も低下します。聞こえの低下は30歳代から始まるともいわれています。

しかし、徐々に聞こえにくくなっていくため自覚しにくいのが特徴です。ご家族に「テレビの音が大きくなった」とか「聞き返しが多い」などと指摘されるようになり、ご本人以上にご家族がコミュニケーションをとる上で苦労されていることが多いです。

上記のことを踏まえ、聞こえが不自由な方には声の大きさ以上に「ゆっくり・はっきり正面から」話すことが大切です。

老人性難聴

 

さらに、最近のトピックスとして、2015年に厚生労働省が発表した「新オレンジプラン」では「難聴が認知症の危険因子のひとつである」とされています。

また、2017年7月にロンドンで開かれた「第29回国債アルツハイマー病会議」では、「予防できる要因の中で、難聴が認知症の最も大きな危険因子である」と発表されました。日本では2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。

耳が聞こえなくなると脳に伝えられる情報量が減るために、認知症の発症や進行に影響すると考えられています。

会話は耳からの情報をもとに行われます。難聴になるとコミュニケーション力が低下し、人との会話を避けるようになります。

二次的な影響を避けるためにも早期発見、早期対応が必要です。まずは医療機関を受診し、必要であれば補聴器の装用をおすすめします。

まとめ

難聴は成人、小児を問わず早期発見・早期治療が重要です。「いつもと違う」「あれ?」と思ったら、まずは近位耳鼻咽喉科を受診してださい。

成人であれば、すぐに広告や眼鏡屋さんで補聴器を購入してしまう前に、小さいお子さんをもつ親御さんであれば、心配し不安に思っているのであれば、まずは受診をおすすめします。必ず相談に乗ってくれます。

 

【参考資料】
・オーティコン補聴器カタログ
・「聞こえと脳のトレーニング -補聴器で脳を鍛えて、聞こえを改善させましょうー」リオネット補聴器
・「難聴でお困りの方へ 人工内耳のご紹介」 株式会社日本コクレア 2016.06.30
・「耳鼻咽喉科疾患ビジュアルブック」 落合慈之監修 学研 2011

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