
【職務経歴】
平塚共済病院
小田原銀座クリニック
久野銀座クリニック
4人に1人が患っているという、もはや国民病とも言える花粉症。年々花粉症有病者は増加し、さらに花粉症発症年齢の低下も起こっています。
花粉症の原因となる花粉は、日本ではなんと50種類以上も存在し、1年中何かしらの花粉が飛んでいますが、その中でも、花粉症を持っている人の70%が、スギによる花粉で罹患しています。
そんな花粉症の症状や治療法についてご紹介していきます。スギ花粉がピークとなる春に辛い思いで過ごしている方は、自分に合った治療法や予防で症状を軽減させるコツを見つけてください。
花粉症の3大症状と、風邪との違い
花粉症の3大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。
花粉という異物が鼻に入ることで、防御機能が過剰に反応(アレルギー反応)し、このような症状が起こります。
1.くしゃみ
花粉が鼻に入ってくると鼻の粘膜にあるアレルギー細胞が刺激され、アレルギーを引き起こす『ヒスタミン』が鼻粘膜表面の神経を刺激し、くしゃみがでます。夜10時くらいはヒスタミンが過敏に反応しやすいので、夜に症状がひどくなる人も多くいます。
2.鼻水
くしゃみが起こると、反射的に鼻水の分泌が盛んになります。
とくに、朝起きた時に鼻水がでるという人が多くいます。これは、『モーニングアタック』といって、寝ているときに吸い込んだ花粉が蓄積されていることや、床にあった花粉が部屋に舞うことが影響し、鼻水の症状が悪化して起こります。
3.鼻づまり
鼻づまりの症状は、ヒスタミンが鼻の血管を刺激し、血管を拡張させたり、循環障害を起こしたりすることで発症します。
また、ヒスタミンと一緒に『ロイコトリエン』という物質も分泌され、鼻水、鼻づまりを悪化させてしまいます。鼻水おなじように、朝方が一番辛いという人が多くいます。
その他にも、花粉症の症状には、かゆみ、ドライマウス、不眠などがみられます。
4.風邪との見分け方
花粉症の症状と似ているのが風邪。風邪も花粉症の3大症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こるもの。ではどのように見分ければ良いのでしょうか。
花粉症と風邪の違い見てみましょう。
花粉症 | 比較 項目 | 風邪 |
花粉シーズン中 | 発症期間 | 1週間程度 |
連続して 何回もでる | くしゃみ | 立て続けては出ない |
透明でサラっとしている | 鼻水 | 初期は透明、 その後黄色っぽく粘性がある |
重症のことが多い | 鼻づまり | 比較的軽い |
ほとんど発熱しない、微熱程度 | 熱 | 発熱・高熱 |
ほとんどない | 痛み | 喉や関節に 痛みが生じることが多い |
目、鼻、喉、まれに皮膚などにかゆみがでる | かゆみ | ほとんどない |
もちろん、風邪も万病の元なので、風邪でも花粉症でも早めに医療機関へ行って適切な処置をしてもらいましょう。
どこで診てもらうべき?花粉症の相談ができる4つの科と選び方
1.耳鼻咽喉科
鼻水、鼻づまりがひどい場合は、耳鼻咽喉科がお勧めです。痰が絡んで辛い時も耳鼻咽喉科で相談してください。鼻や喉の奥までしっかり診てもらうことができます。
2.アレルギー科
アレルギー症状があるものの、何のアレルギーか不明な場合はアレルギー科がおすすめです。また、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど、全ての症状が同じくらい辛い場合にもおすすめです。アレルギー科であれば、より専門的に診てもらうことができます。
3.眼科
目のかゆみがひどい場合は、眼科がお勧めです。目のこすりすぎでできてしまった眼球の傷や充血具合について、細かく診てもらうことができます。
4.内科
症状があまり辛くない初期症状の段階では、内科がおすすめです。内科は他の科よりも医院数が多いため通院しやすいメリットもあります。花粉症の症状を総合的に診てもらうことができます。
花粉症の治療法・処方される薬
1.舌下免疫療法
舌下免疫療法とは
辛い花粉症を根本から治す『舌下免疫療法』は、アレルゲン免疫療法の1つで、アレルギーの原因物質となる花粉を含むエキスを舌の下に投与し、粘膜から体内に吸収させる方法です。保険適用となっているスギ花粉症の治療薬もあります。
対象者・対象年齢
12歳以上が対象となっています。上限の年齢はありませんが、持病がある方やご高齢の方はしっかり主治医と相談しましょう。
治療開始時期
花粉が飛散する前からの投与がお勧めです。2月には花粉が舞い始めるので、3ヶ月前の11月くらいからスタートするといいですね。
注意事項
下記の方は投与ができません。
・妊娠されている方
・喘息や気管支喘息の症状が強く出ている方
・重症の口腔アレルギーの方
・抜歯後などの口腔内の術後、傷や炎症などがある方
・ステロイドや抗がん剤、β阻害薬使用など特定の薬を使用されている方
・医師が適していないと判断した方
また、治療は3年間程度毎日継続することで、治療効果が発揮されます。
2.薬による治療
花粉治療には、大きく2つ、対症療法と根本療法があります。
対症療法 | ・内服薬による全身療法 ・点眼、点鼻薬などによる局所療法 ・鼻粘膜への手術療法 |
根治療法 | ・原因抗原(花粉など)の除去と回避 ・舌下免疫療法 |
使用される薬
花粉症の治療薬としては、『抗ヒスタミン薬(第一世代、第二世代)』、『化学伝達物質遊離抑制薬』、『ロイコトリエン受容体拮抗薬』などの作用があるものを使用します。
症状によって、内服や点鼻、点眼、そしてステロイド薬の点鼻、点眼などが組み合わせられます。
種類 | 作用 | 代表的な薬一覧 |
抗ヒスタミン薬 第一世代 | くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどを引き起こすヒスタミンの作用を抑制 | アタラックス、ポララミン、レスタミン 等 |
抗ヒスタミン薬 第二世代 | 抗ヒスタミン薬 第一世代に比べ、脳内に入りにくく改良されてもので、ヒスタミンの作用を抑制しつつ、副作用の眠気が軽減されたもの | アレグラ、アレジオン、クラリチン、ザイザル、ジルテック、タリオン、ザジテン 等 |
化学伝達物質遊離抑制薬 | 花粉が体内に入ったとき、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンが出るのを抑える | リザベン、インタール、アレギサール 等 |
ロイコトリエン受容体拮抗薬 | 鼻粘膜の腫れを引き起こすロイコトリエンが、免疫細胞から放出されるのを抑制 | オノン、シングレア、キプレス、アコレート 等 |
血管収縮薬 | 粘膜の血管を収縮させて粘膜の腫れを取り除く | コールタイジン、プリビナ、ナーベル 等 |
点鼻ステロイド薬 | 症状が強いときに使用し、免疫反応を抑える | フルナーゼ、アラミスト、ナゾネックス、エリザス 等 |
対象者
多くのものは15歳以上からとなっていますが、もちろん子供用のものもあります。
注意事項
『抗ヒスタミン薬』は、眠気を誘うものが多いので、運転や集中したいときなどは避けてください。
また、持病があると使えないこともあります。薬の効果には個人差があるので、 自己判断で使わず、主治医、薬剤師としっかり相談をして、用法用量を守って使いましょう。
まとめ
花粉症治療は、花粉がピークになる1ヶ月前から医療機関へ行くのがお勧めです。
また、セルフケアも重要です。花粉症用マスクは約1/6、花粉症用めがねは1/4程度に花粉の影響を減らせますので、マスク、めがねで防備しましょう。また、帰宅したらすぐに着替えることも、症状を軽減させるコツです。
花粉治療は、シーズン前からの初期療法と、シーズン終了までの継続療法がポイント。暖かい春を心地よく過ごすために、早めの治療がおすすめです。