
2006年 北里大学大学院卒
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
早期発見、早期治療を心がけ、健康で心豊かな人生を歩んでいただくことを願っており、内科・消化器内科を中心に幅広い情報の発信に努める。
「胃がもたれる」「胃が痛い」「食欲がない」…こうした症状を放っておいていませんか?
この記事では、胃炎と胃潰瘍の症状や原因、改善するためのポイントについて解説しています。
胃炎・胃潰瘍かも!空腹時の痛みと主な症状
1.胃のはたらきと胃酸について
胃は、食道から送られてきた食べ物を消化し、十二指腸へと送るはたらきをしています。
胃から分泌される『胃液』は、食べ物を消化すると同時に、胃自体を溶かしてしまうほど高い酸性を持っています。普段は、アルカリ性の粘液を出すことで、中和し、胃は健康な状態に保たれています。
2.胃炎の症状
胃炎には『急性胃炎』と『慢性胃炎』があります。
急性胃炎の症状
急性胃炎にかかると、『胃が重い』、『みぞおちが痛い』、『食欲不振』、『吐き気』などの症状があらわれます。重症化すると、『吐血』や『血便』が生じることもあります。
慢性胃炎の症状
慢性胃炎の場合、急性胃炎ほど強い症状はあらわれません。『胃もたれ』や『胃痛』、『胸やけ』、『げっぷ』などの症状が継続します。
3.胃潰瘍の症状
胃炎がさらに悪化すると、『胃潰瘍』になります。
多い症状は、空腹時のみぞおちの痛み
胃潰瘍の症状として多いのは、『空腹時のみぞおち付近の痛み』です。そのほか『胸やけ』や『げっぷ』、『吐き気』、『嘔吐』、『おなかの張り』などの症状もみられます。
重症化すると、吐血や血便がみられ、意識をなくすことも
重症化すると、『吐血』や『血便』もみられます。胃潰瘍で出血を起こす割合は、20~30%です。出血量が多いと、血圧が低下して意識がなくなったり、臓器不全を起こしたりすることがあり、注意の必要な病気です。
4.胃潰瘍が重症化した「腹膜炎」は死に至ることも…
腹膜炎って?
腹膜炎は、腹腔内をおおう『腹膜』に炎症が起こった状態です。腹膜とは、臓器を包むように覆う、半透明の膜のことです。
胃壁に穴があいた状態を放置することでかかる
胃潰瘍にかかっている状態で、暴飲暴食をすると、胃壁に穴があく『穿孔性潰瘍(せんこうせいかいよう)』にかかる恐れがあります。穿孔性潰瘍になると、胃の中の飲食物が穴から腹腔内へと流れ出します。この状態で20時間以上放っておくと、『腹膜炎』を起こし、死に至る危険性もあります。
激しい腹痛が生じたら、すぐに病院へ
穿孔性潰瘍になると、『激しい腹痛』が起こります。時間の経過とともに痛みはひどくなり、ショック状態に陥ります。激しい腹痛を覚えたら、すぐに病院へ行き、処置を受けましょう。
胃炎と胃潰瘍の原因について
1.胃炎の原因について
急性胃炎の原因は、暴飲暴食やアルコール、ストレス
急性胃炎の原因は、『暴飲暴食』や『病原菌がついた飲食物の摂取』、『サバ・卵などによるアレルギー』、『アルコール・香辛料など刺激の強い食べ物』、『ストレス』などです。
胃はとてもデリケートな臓器です。こうした原因によって胃液の分泌量が増えることで、胃の粘膜に傷がつき、急性胃炎が起こります。
慢性胃炎の原因はヘリコバクター・ピロリ菌
慢性胃炎の原因は、『ヘリコバクター・ピロリ菌』という細菌に、子どもの頃に感染することです。ヘリコバクター・ピロリ菌は、感染から長い時間をかけ進行し、慢性胃炎を引き起こします。
また、慢性胃炎の一種である『萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)』は、加齢とともに胃の粘膜が萎縮し、薄くなることが原因で発症します。
2.胃潰瘍の原因について。ストレスだけじゃない?
胃潰瘍の原因は、『胃酸』など胃壁を攻撃する要素と、胃の粘膜を保護する要素とのバランスが崩れることです。
このバランスが崩れる要因として挙げられるのが、先に解説した『ピロリ菌』や『ストレス』です。
胃炎・胃潰瘍の検査と治療
1.胃炎や胃潰瘍の検査
胃炎や胃潰瘍について調べるさいは、主に次の検査を実施します。
上部消化管X線検査
食道から十二指腸まで調べる検査です。
検査前に、胃のぜんどう運動を抑えるため、上腕に筋肉注射をします。その後『バリウム』と『発泡剤』を飲み、X線写真を撮影するベッドの上で、体勢を変えながら、病気の有無を調べます。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
胃にカメラを入れ、胃の粘膜の状態を観察します。
便、吐物検査
便や吐物から、病原菌や出血の有無について調べます。
胃液検査
胃の機能を調べる検査です。細いチューブを胃の中に挿入し、胃液を採取します。
2.急性胃炎の治療法
急性胃炎の治療として効果的なのは、『食事療法』です。
病原菌のついた飲食物や、アレルギーを起こす食べ物の摂取が原因の場合は、それらの飲食物を体内から排出させます。
まずは、丸1日ほど絶食してください。みぞおちの痛みなど、症状がある間は『白湯』や『果汁』、『スポーツ飲料』など、水分だけを摂取しましょう。
症状がだんだんとおさまってきたら、『野菜スープ』や『おかゆ』など、半流動食から食べ始めてください。
3.慢性胃炎の治療法
胃液の分泌量に応じた『薬物療法』と食事の改善をおこないます。
慢性胃炎の治療法は、胃炎の分泌量や、胃液の分泌が少ない『無酸』状態になっているかどうかによって異なります。
胃液の分泌量が多い場合
胃液の分泌量が多い場合は、胃液の分泌と、炎症を抑える必要があります。
食事は、『煮込みうどん』など消化の良い炭水化物や、『魚・鶏肉』など脂肪の少ないたんぱく質を取りましょう。反対に控えた方が良いものは、『生野菜』や『甘いお菓子』、『香辛料』、『アルコール』、『タバコ』です。
また、『制酸剤』や胃液の分泌を抑える『自律神経遮断剤』を服用することもあります。
胃液の分泌が少ない場合
胃液の分泌が少ない場合は、胃の働きを活発にする必要があります。『豆腐』や『白身魚』など、栄養価が高くて消化のよいものを食べましょう。
無酸の場合
無酸の場合は、胃液の殺菌能力が低下しています。そのため『生もの』は避け、『塩酸を補う薬』を服用します。
4.胃潰瘍の治療法
食事療法や薬物療法が一般的
胃潰瘍は、『食事療法』や『薬物療法』による治療が一般的です。
加えて、規則正しい生活や、休養と睡眠を十分取り、ストレスをためないようにしましょう。
手術が必要になるケースも
穿孔性潰瘍になった場合や、大量に出血した場合は、手術が必要になります。軽度であれば『内視鏡手術』で、患部に止血剤を塗ることで改善します。しかし、多くの場合は、『開腹手術』によって、胃の切除や穴をふさぐ処置が必要です。
ピロリ菌に感染していて、再発する場合の治療
ピロリ菌に感染していると、胃潰瘍の再発をくり返すことがあります。
その場合は、ピロリ菌の『除菌治療』をおこないます。除菌治療は、種類の薬剤を1週間服用して、一定期間経った後、除菌できたかどうか検査します。除菌率は約90%だといわれています。
5.胃炎や胃潰瘍を予防・改善するための7つのポイント
1日3食きちんと食べ、朝食を抜かない
朝食を抜き、空腹の状態だと、ストレスから胃酸の分泌量が増えてしまいます。これにより、胃炎や胃潰瘍にかかりやすくなります。
香辛料やコーヒー、アルコールは控える!
香辛料やコーヒー、アルコールなど、刺激の強い飲食物は控えましょう。
こうした飲み物や食べ物は、胃液の分泌量を増やし、胃の粘膜を傷つきやすくします。
塩分の多い食事や、脂っこい食事に注意
塩分の多い食事を好む人ほど、ピロリ菌の感染率が高いという説があります。また、塩分は高血圧や脳出血のリスクを高めます。摂りすぎないよう、注意しましょう。
脂っこい食事は、消化しづらいため、胃に負担がかかります。
暴飲暴食はやめる
食べ過ぎや飲みすぎは、胃液の分泌過多を招きます。
食事は腹八分目までを心がけ、よく噛んで食べましょう。
禁煙をおすすめ
タバコに含まれる『タール』は胃への刺激が強く、吸いすぎは食欲不振へとつながります。
休養をとり、ストレスをためない
心身のストレスは、急性胃炎や胃潰瘍の大敵です。十分に休養をとり、ストレス解消につとめましょう。
薬を服用して胃の調子が悪くなったら、医師に相談
『鎮痛剤』や『解熱剤』を服用し、胃の調子が悪くなった場合は、医師に相談しましょう。
薬を服用するさいに、一緒に飲む胃薬を処方されることがあります。処方されたら、医師の指示にしたがって、鎮痛剤や解熱剤と一緒に胃薬を飲むようにしましょう。
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