
医療法人社団 優恵会
銀座よしえクリニック
総院長 廣瀬嘉恵
とびひは伝染性膿痂疹ともよばれ、幼児や子供によく見られる皮膚の病気として知られています。
「飛び火」と呼ばれるのは、広がるスピードが速いためで、その名の通り、いつの間にか湿疹が広範囲になっていることがあります。とびひは子供だけでなく、大人でもみられる場合があるため注意が必要です。
子供との症状の違いや、大人のとびひも子供のとびひと同様に人に感染するのかについて解説します。
大人のとびひの症状は?とびひには2種類ある!
細菌感染によって、手や足、色々な部分に直径1~2mm程度の小さな水泡が集まってできるのがとびひの初期症状です。
とびひ(伝染性膿痂疹)は、症状によって、「水泡性膿痂疹」と「結痂性膿痂疹」の2種類に分けられます。
大人のとびひは主に結痂性膿痂疹(けっかせいのうかしん)です。
結痂性膿痂疹(けっかせいのうかしん)は、痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)ともいいます。
1.結痂性膿痂疹(けっかせいのうかしん)
大人にあらわれることが多い
季節や年齢に関係なく1年中症状があらわれ、小さい水泡や膿疱(膿をもった水泡)から始まり、すぐに黄色っぽい痂疲(かさぶた)となります。これがどんどん広がっていきます。大人にあらわれることが多いとびひです。
熱が出たりのどが痛くなることも
膿疱や痂疲の周囲は、はじめから赤みがあり、熱が出たりのどが痛くなることもあります。また、近くのリンパ腺が腫れることがあります。とびひができる場所は、顔や手足といった露出している部分にできることが多く、粘膜(鼻孔、口腔内、生殖器、肛門など)にはできません。
2.水泡性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
感染力が強い
主に乳児や幼児など、子供に多く見られ、薄い透明の膜に覆われた水泡ができます。梅雨時の暑くてじめじめとした時期から夏にかけて多く見られます。感染力が非常に強く、水泡が破れることで中身の汁が他の皮膚についたり、接触することによって感染がたちまち広がります。
通常は1週間から10日ほどで改善する
小さな水泡をそのまま放置していると、数日で指の頭ぐらいの大きさまで大きくなります。
水泡が破れるとじめじめとした肌があらわれ、肌が乾燥していきます。
乾燥するとかさぶたができて、数日たてばかさぶたが取れて治ります。
1週間から10日くらいで改善するのが特徴です。
3.大人と子供のとびひ、違いの原因は何?
大人に多い結痂性膿痂疹と、子供に多い水泡性膿痂疹は、原因菌が違います。
大人のとびひに多い結痂性膿痂疹は主に「連鎖球菌」が原因で、子供のとびひに多い水泡性膿痂疹は「黄色ブドウ球菌」が原因です。
とびひの感染から完治までの期間は?
1.とびひの潜伏期間
とびひの潜伏期間は、2日~10日間とされています。長くなることもあります。
2.治癒までの期間は?
治癒するまでは、約1週間といわれています。なるべく触らないようにすることが、治療期間を短くすることにつながります。患部をかきこわさないように、爪を短く切っておくようにしましょう。
3.重症化すると…
しかし、重症化すると大変です。全身に広がってしまうと、発熱、顔、首回り、脇、胴体部分がやけどをしたように赤くなり、痛みが出るようになります。
下着と接触し、摩擦を受けやすい部分は角質層が著しく傷む、赤むけになってしまいます。
4.日常生活で気をつけること
湯船に入ることは控えて
患部は清潔に保ち、細菌を減らすようにしましょう。
お風呂はシャワーのみにし、湯船に入るのは控えましょう。シャワーを浴びる際は、とびひからの分泌物を洗い流すようにし、石けんはしっかり泡立ててていねいに洗うようにします。
タオルの共用は禁止
周りの人や家族にうつすこともあるので、タオルの共用は控えるようにします。洗濯物は一緒に洗濯しても問題ありません。
大人のとびひの治療。会社はいつから大丈夫?
1.何科にかかればいい?
とびひの治療は皮膚科を受診します。
2.治療について
結痂性膿痂疹の治療は、主に内服点滴や、抗菌薬の軟膏にて治療を行います。
3.注意点は?
会社に行くことはできますが、細菌が原因なので人への感染を避けるため、のどの痛みなどの症状が治まるまでは自宅で安静に過ごすようにしましょう。医師の指示に従って下さい。
4.合併症について
結痂性膿痂疹は、糸球体腎炎の合併症を引き起こすことがあります。腎臓の糸球体が炎症を起こし、タンパク尿や血尿、発熱などが生じる病気です。病院から処方されている薬はしっかりと服用し、症状が治まってからも10日間程度は内服を続けるようにします。
湿疹やあせも、虫刺されなどの小さな傷は、膿痂疹の原因となるので早めに治療するようにして下さい。夏場は汗をかきやすいので、汗をかいたらシャワーをするなど皮膚を清潔に保つようにしましょう。
まとめ
とびひには二種類あり、大人がかかることが多いのは結痂性膿痂疹と呼ばれるとびひです。しかし、免疫力が低下している時には、水溶性膿痂疹と呼ばれる子供に多いとびひに大人もかかる場合があります。
小さな傷から感染して発症することがあるので、ひっかき傷やあせも、虫刺されなどには注意が必要です。
膿痂疹の症状が疑われたら、悪化しないうちに早めに病院を受診するようにしましょう。