「小1プロブレム」について考える―臨床心理士が語る”子どもへの接し方”とは?

小1プロブレム
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執筆者

鎌田桃子 さん

臨床心理士 公認心理師

慶應義塾大学で社会学を専攻
大学卒業後、カナダで児童英語講師養成課程を修了
一般企業勤務、公立中学校教員を経て明治大学大学院臨床心理学専修修了

心理士としては適応指導教室、児童相談所、教育相談室に勤務し、主に子どもとその保護者の臨床をフィールドとしている。
男女二児の母として、臨床に携わりながら自身の育児にも奮闘中。

こんにちは、臨床心理士の鎌田桃子です。

この春お子さんが小学校にご入学された皆さま、おめでとうございます。

これまでとは勝手がずいぶん違う小学校での生活に慣れるのに親子共々どこか緊張のとれない毎日が続いたご家庭も少なくないのではないでしょうか。

慣れない環境ながらも、子どもが本来の自分を少しずつ出せるようになることは喜ばしいことです。

しかし、多くのお子さんが集団としてのまとまりを見せていく中で、「あれ?」と思うお子さんが浮かび上がってくるのも今の時期ではないでしょうか。

その1つの視点として今回は「小1プロブレム」についてお話しをしたいと思います。

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小1プロブレムとは?

学校といえば整然と並んだ席に座り、先生の話を聞いて授業を受ける。

そういったイメージがあると思いますが、そのイメージに反し、席に座っていることができずに教室内を歩きまわっている子がいたり、先生の話を聞かずにお友達とおしゃべりしたり、自分が好きなことをしていたりする子がいるかと思います。

中には教室から出て廊下や校庭を駆け回る子がいたりする状態が続くこと、一般的にはそれを「小1プロブレム」と呼んでいます。

小学校に入学した直後に見られる光景で、場合によってはそれが長引き、学級崩壊につながりかねない問題でもあります。

また、学校という枠になじめず、行き渋りにつながり、早くから不登校になるケースもあります。

とはいえ、当事者である子どもは先生に対する反抗心でやっているわけではなく、これまでとガラリと変わった環境に適応できずに困惑しているということを覚えておいていただければと思います。

環境の変化によっておこる小1プロブレム

小学校に入ると、これまで遊び主体で大人に手をかけてもらっていた保育園、幼稚園、こども園などでの生活が一変して、一人で登下校してチャイムで区切られた時間割にそって自分で動くことが求められます。

もちろん体育や図工といったこれまでも馴染みのある授業もありますが、多くの時間、黒板に向かって座って先生の話を聞いたり、ノートを書いたりしながら授業を受けることになります。

これは、子どもたちにとっては大きな変化です。

もちろん「小1プロブレム」が取りざたされるようになってからは、そうした教育スタイルのギャップを埋めるべく、幼保小連携に向けてさまざまな取り組みが実践されてはいます。

しかし、急に多くの場面で「自分ですること」や規律に合わせて動くことを求められるようになり、口頭での指示や説明が圧倒的に増えることで、その変化に追いつけず「小1プロブレム」は起こるのです。

「小1プロブレム」の背景にあるもの

経験不足

前述したように、就学前後の環境の変化は大きく、「小1プロブレム」の主たる原因はやはり経験不足です。

それは園のみならず、家庭でも言えることです。核家族化や共働き家庭が増え、昔は家庭で担っていたしつけも外に任される面が多くなってきたことで、小学校で求められるような振る舞いや動き方を学ぶ機会が減ってしまったのです。

本来は大きな環境の変化にさらされても、素直に教えられたことを吸収したり、ある程度の我慢をしたりすることが必要ですが、それができない経験不足が背景の一つにあります。

親子関係

小学校に入学する時点で、自他に対する信頼感や「自分は大丈夫」という自己肯定感が養われている必要があります。

そのベースはそれまでの親子関係にあり、困った時、不安な時にその気持ちを抱えてもらって「大丈夫」を積み上げてくることができるわけですが、残念ながらそれがなされていないケースもあります。

発達障害

入学前よりも時間や規律といった枠に従う場面や、口頭指示が増えたりすることによって、これまであまり顕在化してこなかった発達障害が明らかになるケースもあります。

本当に困っているのは子ども自身

「小1プロブレム」は多くの場合、先生が円滑なクラス運営をする上で「問題である」と考えられ、その対象である子どもは「問題児」であると捉えられがちです。

しかし実は小学校という環境に適応できず、一番困っているのはその子ども自身だという視点をぜひ忘れないでください。

「教室で座っていたけど先生の話は長くて何を言っているかよくわからない」「そう思っていたら窓の外にきれいな蝶々が見えたから気になって追いかけちゃった」「新しいお友だちがたくさんいて嬉しい」「お友だちとたくさんおしゃべりして仲良くなりたいな」「学校ってすごく大きいし、たくさん人がいてなんだか怖いし、ここにいるのしんどいな」

そんな風に子どもたちは思っているかもしれません。

しかし、小学1年生でそれを大人が分かるように自分から言語化できる子どもは少なく、代わりに行動で表しているのです。

そこには子どもたちなりの理由があるのに、「よく分からないけれど注意を受ける」「行動を制止される」ことで、理由がよくわからない子どもたちは困ってしまいます。

お子さんへの接し方

ここでは、お子さんへの接し方を具体例を挙げながら詳しく説明していきます。

まずはお子さんの気持ちに共感してあげること

もしもお子さんのことで学校から何か指摘を受けたら、まずは大変な状況にあるお子さんの気持ちを労い、ゆっくり話を聞いてあげてください。

そして、まずはお子さんの気持ちに共感してあげてください。もちろん中には気持ちをうまく言語化できないお子さんもいると思います。

そんな時はお父さん、お母さんが想像するその子の気持ちを言葉にして伝えてあげてください。その上で求められる学校でのルールを短く具体的に教えてあげましょう。

この時期の子どもは言葉だけでは理解しにくい場合も少なくないので、具体的な絵などがあると伝わりやすいお子さんもいます。

小さなことでもたくさんほめてあげる

また、お家で「学校ごっこ」をして遊びの中でルールを覚えるのも有効かもしれません。その時はぜひ、お父さんやお母さんも子ども役をやってみてください。

また、時間やルールを意識することをご家庭でも取り入れることはもちろん大切ではありますが、ご家庭では少しゆっくり息抜きできるようにしてあげてください。

そして、もしも少しでもできたことがあったら、小さなことでもたくさんほめてあげてください。そうすると、きっとお子さんは「こうすればいいんだ」と自信をもちながら適切な動きを増やしていけると思います。

発達障害のお子さんの場合

なお、学校適応を難しくしている要因が「発達障害」といったケースで、お子さんがもともと持っている認知特性による場合も少なくありません。

お子さんの特性を知ることで、より適切なサポートができる場合が多いので、うまく対応のヒントが見つけられない場合には、スクールカウンセラーや教育相談室といった専門家に相談してみることもおすすめします。

次なる心配は「小3の壁」

今はまだ入学したばかりで、目の前のことに対応することが最優先になると思います。もちろんそれが大切なのですが、実は小学校で次に子どもがつまずきやすいのは3年生のタイミングです。

年齢的に抽象的な物事についての理解が進んでくる頃ですが、それに合わせて学習も抽象度が上がり、人間関係もより複雑になってきます。

ここで壁にぶつかるお子さんも少なくないのですが、ここでもご家庭が安心して気持ちを吐露できる場であり、壁に立ち向かうエネルギーを貯める場であることが大切になってきます。

今ここでお子さんとそういった関係を築いておくことや、お子さんにあった対応方法を知っておくこと、またそれを学校と共有しておくことは次のステージへのリスクヘッジとなります。

お子さんのことで学校から何か指摘を受けるというのは、お父さんやお母さん自身にとってもショックなことかと思います。

しかし「小1プロブレム」は環境の大きな変化によるところが大きいものです。焦らず、自分を責め過ぎず、お子さんの話に耳を傾けて気持ちを受け止めてあげることからぜひ始めてみてください。

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