
⽇本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
身障者福祉法指定医
1993年 私立開成中学・高校卒業
1999年 昭和大学医学部卒業、東京女子医科大学病院 脳神経外科入局
2005年 東京女子医科大学大学院脳神経外科学修了 脳神経外科 助教
北海道、関東にて各救急総合病院 脳神経外科医長等歴任
2011年 平成立石病院 脳神経外科勤務
2016年 寿町クリニック 院長
患者さんの訴えに耳を傾け、信頼されるクリニックを目指す。
脳神経外科を筆頭に、神経内科、糖尿病内科の分野で患者さんにとって有益な情報発信を心がけている。
あなたは過度な耳そうじをしていませんか?
適切な耳そうじの回数は、一か月に2回ほど、つまり2週間に1回のペースです。
そんな「耳のさわりすぎ」がきっかけになるともいわれる病気「鼓膜炎」について、医師の教える「正しい耳そうじの方法」と合わせて解説します。
放置すると危険な場合も…鼓膜炎の種類と症状
1.どんな病気?
鼓膜に炎症が起きる病気
鼓膜炎は名前のとおり、耳の鼓膜に炎症が起こる病気です。
耳は外側から内側にかけて「外耳」「中耳」「内耳」に分かれています。鼓膜はその中の外耳と中耳との境界部分にある器官です。
20代~40代の女性に多い
鼓膜炎を多く発症するのは20代~40代の女性です。大人も十分注意する必要があります。
また、両側の耳に同時に鼓膜炎を発症することは少なく、片側の耳にのみ発症することが多いです。
症状によって2種類に分けられる
症状によって、『水疱性(すいほうせい)鼓膜炎』(急性鼓膜炎)と『肉芽性(にくげせい)鼓膜炎』(慢性鼓膜炎)の2種類に分けられます。
2.水疱性鼓膜炎(急性鼓膜炎)とは
鼓膜に水ぶくれができる
鼓膜炎の中で、鼓膜に水膨れができるものを『水疱性鼓膜炎』といいます。痛みが激しいのが特徴です。一方で、耳から液体が流れ出る『耳だれ』はあまりありません。
中耳炎や他の病気を引き起こすことも
放置してしまうと中耳炎を引き起こすことがあるので、注意の必要な病気です。特に、発熱や耳鳴りがともなう場合は、他の病気も同時に発症している可能性が高いです。これにより難聴や内耳に影響を与えることもあります。
3.肉芽性鼓膜炎(慢性鼓膜炎)とは
鼓膜にただれや「肉芽」が生じる
鼓膜に『肉芽』(赤く柔らかい粒状の結合組織)や『びらん』(ただれ)が生じるものは、『肉芽性鼓膜炎』です。水疱性鼓膜炎と反対に、痛みはあまりありませんが、耳だれが続きます。その他にも耳のかゆみや耳鳴り、耳が詰まったように感じることもあります。
中耳炎の影響で発症していることも
中耳炎の影響を受けて肉芽性鼓膜炎を発症していることもあるため、診断には慎重を期します。基本的には、鼓膜を注意深く観察することで発見できますが、判断が難しい場合は側頭骨CT検査も行います。
鼓膜炎の原因と予防法
1.鼓膜炎の起こる原因
鼓膜炎が起こる原因は、次のものだといわれています。
・水疱性鼓膜炎…ウイルスや細菌の感染
・肉芽性鼓膜炎…細菌の感染
実際のところ、そこまで原因が明確なわけではありません。ゆえに、鼓膜炎は「原因不明の炎症性疾患」とも呼ばれています。
2.鼓膜炎を予防する!正しい耳そうじ
耳のいじりすぎが鼓膜炎のきっかけに
鼓膜炎の明確な原因は分かっていませんが、きっかけとして多いのは『耳のいじりすぎ』です。
耳そうじは月に2回で十分!
耳の一番外側の部分である外耳には、もともと自浄作用が備わっています。外耳より奥に耳垢ができることはありません。そのため、耳掃除は月に2回程度で十分です。耳掃除をしすぎると、かえって耳の中の皮膚が厚くなり自浄作用が低下するともいわれています。
耳かきは使わず、綿棒で優しくこする
また、耳かきを使う必要もありません。綿棒で軽くこする程度で大丈夫です。過度な耳そうじは鼓膜炎だけでなく、ほかの病気の原因にもなります。月に2回以上耳そうじをしている方は、控えるようにしてください。
鼓膜炎の治療法
1.薬物療法
水疱性鼓膜炎の場合
水疱性鼓膜炎は、炎症を抑える『抗菌薬』と、痛みを抑える『消炎鎮痛薬』で治療します。いずれも内服薬です。難聴をともなう場合は、ステロイドやビタミン剤を用いることもあります。
肉芽性鼓膜船の場合
肉芽性鼓膜炎は、耳だれから原因となる菌を調べ、それに応じた『抗菌薬』で治療します。点耳薬を使うのが一般的です。点耳薬をさす時は横向きに寝転がります。点耳薬を浸透させるために、さした後もしばらく同じ姿勢を保ってください。
2.手術療法
水疱性鼓膜炎の場合
水疱性鼓膜炎で手術を行うことはほとんどありません。ただ、痛みが強い場合は水膨れをつぶすこともあります。
肉芽性鼓膜船の場合
肉芽性鼓膜炎は抗菌薬で治療しても繰り返すことの多い病気です。そのような場合は、肉芽の除去を行うことで根本的な治療を図るケースもあります。
手術では、まず鼓膜の表面に麻酔をします。その後、はさみに似た手術器具や、トリクロリールという薬剤を用いて肉芽を取り除きます。
完全に取り除くことができれば、耳だれは快方に向かいますが、再発するケースもあります。手術を受けた後も、引き続き注意は必要です。
まとめ
異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科へ!
もし耳に異常を感じたら、早めの診療を心がけてください。特に肉芽性鼓膜炎の場合は、痛みがないためになかなか病院へ行かないこともあるかと思います。しかし、たとえ痛みはなくとも、耳のかゆみ・つまり・耳鳴りなど少しでも異常を感じた場合は、すみやかに耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。
鼓膜炎の診断を受けたら、風邪や喉の負担を避ける
また、「鼓膜炎」の診断を受けた場合は、症状を悪化させないために、風邪をひかないようにしたり、喉に負担をかけないようしたりすることも大切です。
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