自分の子どもは大丈夫?正しい発音が困難な「構音障害」克服のためのトレーニング法【言語聴覚士コラム】

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執筆者

澤田久美子 先生

言語聴覚士

北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻

耳鼻咽喉科ののはなクリニック
横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属病院 耳鼻咽喉科
東京慈恵会医科大学付属第三病院 耳鼻咽喉科

こんにちは、言語聴覚士の澤田久美子です。

最近の臨床場面で発音が気になって受診されるお子さんが増えています。しかし、言語聴覚士からみると両極端のように思います。

発音が完成する前の3~4歳で親御さんが心配して受診されるお子さんもいれば、一方で、小学校に入学してから指摘されて受診されるお子さんもいます。

発育途中のお子さんの発音に受診が必要かどうかは、何を基準に判断すればよいのでしょうか? 今回は、構音障害についてご説明いたします。

目次

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構音とは

言語治療の分野で用いられる用語で、その定義は言語学の分野で用いられる「調音」とほぼ同様です。一般的には「発音」と呼ばれています。

人は、下顎・舌・唇・軟口蓋などを動かし、声の通る道の形を変えることで話し言葉を生み出します。この話し言葉を生み出す過程を「構音」と言います。

日本語の音は、「あいうえお」の母音とそれ以外の子音で成り立っています。構音の中で、母音は唇のすぼめ具合、舌と口蓋の距離(舌の高さ、前後)で作られます。

一方、子音は声帯を通った空気の流れを舌や唇の細かい動きによって、遮断したり狭めたりすることによって作られます。

空気に妨げが起こる場所を構音点と呼び、例えば「ぱ」は、肺からの空気を上唇と下唇を閉じてせき止めた後に、一気に吐き出すことで作られます。

構音の発達と獲得する年齢

言葉の発達は、一定の決まった順序で概ね進んでいきます。同様に、構音の発達にも順序性があり、年齢に応じた発達段階があります。

以下、構音を獲得する年齢の大まかな目安です。

2~3歳代:母音、た、て、と、ぱ行、ま行、や行、ん
2~5歳代:ば行
3~4歳代:か行、が行、な行、ち、ちゃ行、だ、で、ど、は行、わ
4~6歳代:さ行、ざ行、つ、ら行

構音障害とは

同じ発達年齢の人が正しく発音できる音を習慣的に誤って発音している状態を言います。もちろん、幼い子どもたちはうまく発音できない言葉があります。

しかし、その発音がうまくいかない背景には、発音に関わる器官や発達を支えるものに何らかの課題が隠れていることもあります。

発音の誤りや不明瞭さの原因は一人一人異なるため、背景を探る必要があります。そして、適切なアドバイスや治療、指導を受けることで改善する可能性が広がります。

構音障害の分類

①発症のメカニズムによる分類

器質性構音障害

・発声発語器官の形態異常
・聴覚障害(独立して扱う場合もある)

機能性構音障害

器質的原因がみつからない、あるいは原因の特定ができない構音障害

運動障害性構音障害

神経疾患による構音障害

②発症時期による分類

発達性構音障害

正常に発達していても誰もが通る構音の誤りのことです。

構音の獲得年齢で言うと、例えば「おかあさん」を「おたあたん」と3歳で言っていても問題ないですが、音が正しく言えているかどうかを問われれば間違っています。

このような発達の途中でみられる構音の異常のことを言っています。

後発性構音障害

一度正しく構音が獲得された後に、何らかの原因によって構音に誤りがみられた場合を言います。

③対象者の年齢による分類

・子どもの構音障害
・大人の構音障害

日本小児科学会では18歳までを子ども(小児)の対象と考えています。

器質性構音障害

生まれつき、あるいは事故や病気などの後天的な理由により、唇・舌・口蓋などの形に問題があり、うまく発音できない場合を言います。

①口蓋裂・口唇裂・口唇口蓋裂

先天性異常のひとつで、日本では500人から600人に1人の頻度で出現します。

口蓋とは口腔内の上の部分、口唇とは唇をさします。乳幼児から就学時までの期間中に何度か手術を行い、同時に言葉の指導を行うことで、現在では80%以上が正常構音を獲得できるといわれています。

②舌小帯短縮症

先天性異常のひとつで、口腔底から舌の下面へ走っている小帯(舌の裏側のスジ)が舌の先の近くに付着していて、舌の動かしづらさがある状態です。

保険適用で手術や訓練をすることができ、多くの場合、正常構音が獲得できるといわれています。

③その他の器質性構音障害

器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。

④聴覚障害

上記①~③とは独立して扱われることがあります。

慢性中耳炎や先天性の一側難聴、軽度・中等度難聴、低音域の難聴が原因となっていることがあります。

機能性構音障害

構音にかかわる器官の形態、神経や筋、聴力に問題が見出されない、また、その他の疾患や障害が無いにもかかわらず構音に問題がある場合、機能性構音障害に分類されます。

主に幼児期にみられます。自然治癒が望めない場合も、指導・訓練を受けることで改善する可能性が広がります。

運動障害性構音障害

脳卒中や頭部外傷、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、ジストニアなど神経や筋に病変が生じることにより、話すことに必要な運動機能に障害が起きる場合を言います。

この場合、構音障害だけではなく、声やリズム・速さ・アクセント・イントネーションの異常を伴うことがあります。

子どもの構音障害

器質性構音障害は先天性のことが多く、近年では治療技術の進歩により構音障害の残存は少なくなってきています。

「発音がおかしい」というお子さんの多くは機能性構音障害です。この場合、見極めが必要になります。先にも述べたように、構音は年齢とともに発達し獲得する順序があります。

「さ」が「た」になるといった獲得年齢に達していないがために正しく発音できない未熟構音なのか、「エレベーター」が「エベレーター」になるような構音の誤りではなく音の入れ替わり(音韻認識の誤り)なのか、あるいは、知的障害や言葉の遅れといった他の疾病や障害がないか鑑別しなくてはなりません。

未熟構音や音韻認識の誤りは個人差がありますが、5~6歳で消失するといわれています。ところが、それがいつまでも残っていると指導・訓練の対象になってくるのです。

「発音がおかしい」と思ったら

子どもの構音障害を担当する言語聴覚士がいる医療機関や「発音教室」「言葉の教室」といったところで相談してみましょう。

耳鼻咽喉科での受診

耳鼻科外来で医師が行うこと

・生育歴などの聞き取り
・聴力検査を含めた器質的問題はないか診察・検査を行う
・言語発達スクリーニング検査
※この検査を行うことで、おおまかな聴力、言語理解力、音声表出能力をみることができます。
・発達質問紙記入依頼
・必要に応じて小児科や他部署との連携

言語聴覚士が行うこと

・生育歴などの聞き取り
・構音検査
・構音訓練

構音訓練の方法

検査・診察結果、お子さんの発達年齢を考慮して、構音訓練が必要か否か判断します。

以下は、機能性構音障害について説明します。

訓練開始時期

構音訓練を始める時期は、5歳を目安にしています。年齢的に発音できなくても不思議ではない音を早々に訓練しても意味がありません。

小学校入学という新しい節目までに正しい構音が獲得できるように、逆算すると5歳前後から開始するのがいいと考えています。

大体5歳頃には日本語の音が言えるように構音器官が発達しコントロールできるようになります。また、この年齢になると、数十分椅子に座った状態で行われる訓練に応じられるようになるため適しています。

訓練頻度・期間

獲得が進むと頻度が減ってきますが、週に1回、1~2年と長いスパンで考えていただくのが一般的です。一朝一夕には身につかないからです。

私たちは話をする時、「この音はこうして発音しよう」などと考えながら話をしているわけではありません。無意識に話をしています。

つまり、今できていないことを、意識しなくてもできるようになるにはそれなりの訓練期間が必要です。発音はいかに習慣化するかが鍵となります。

練習方法

系統的構音訓練といわれる方法で行うことが多いです。系統的構音訓練とは、正しい音を作り、それを習慣化させて日常会話で自由に使えるようにするための練習方法です。

単音({s})、単音節(例「さ」)、無意味音節(例「さぱ」)、単語(例「さめ」)、短文(例「ささやくような あさせのせせらぎ」)、文章、歌、会話など段階を追って訓練を進めていく方法です。

まとめ

以上のことから、子どもの構音障害、特に機能性構音障害は5歳を目安に障害の有無を判断し、必要であれば訓練につなげていけるのが理想です。

心配し過ぎる必要はありませんが、日常会話において、話の内容だけでなく発音にも関心が向けられればいいと思います。

 

【参考資料・URL】

浅野和美 「小特集-子どもの音声― 子どもの構音障害」日本音響学会誌(2012)
68(5),pp.248-253
岡崎恵子「機能・器質性構音障害」言語聴覚士指定講習会テキスト 財団法人医療研修推進財団監修 医歯薬出版(1998)第2編 9,pp.203-208
東京都立心身障碍者口腔保健センター「センターだより 発音に問題のある子どもの構音障害について知ろう」(平成29年)第28号
日本口腔外科学会ホームページ https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_senten/

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