1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入局 外科研修
(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年 岡村医院、医師として勤務し現在に至る
2012年 岡村クリニック開院
※計15年心臓血管外科医として勤務
大学病院および関連病院において、心臓血管外科医として勤務。
外科領域のみならず内科医としての経験を生かし、循環器領域疾患を始め、患者さんがお悩みに感じることなど気軽に何でも相談できるような地域のかかりつけ医院を目指す。
妊娠中や授乳中だと薬が飲めないと思っていませんか?
しかし、病院を受診して処方されたものであれば飲める薬も多くあります。
この記事では、妊娠中や授乳期でも飲める風邪薬について解説しています。
※紹介する薬剤については、「一般商品名」「(成分の一般名称)」を併記しています。
妊娠中や授乳中でも飲んで良い風邪の薬
風邪の諸症状に対処する、妊娠中や授乳中でも赤ちゃんへの影響が低いといわれている薬はいろいろあります。
薬を飲んで良いかは、患者さんの状態や医師の治療方針に沿って決められます。
妊娠期間中であれば産科医に処方してもらうのが望ましいのですが、内科を受診する場合、妊娠後期以降は妊娠週数をしっかりと伝えるようにしましょう。
必ず薬が処方されるという訳ではなく、医師の判断次第では薬を使用しない場合があります。
1. 鎮咳薬
咳を止める薬です。
安全に使用できる薬剤
安全性に関しては「米国FDA基準」「豪州ADEC基準」で安全が確認されたものを使用するべきです。
- メジコン(デキストロメトルファン臭化水素酸塩)
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- アスベリン(チぺピジンヒベンズ酸塩)
- アストミン(ジメモルファンリン酸塩)
- フラベリック(ベンプロペリンリン酸塩)
- コルドリン(クロフェダール塩酸塩)
2.去痰剤
痰を取り除く薬です。
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- ビソルボン(ブロムヘキシン塩酸塩)
- プロモザイム(ドルナーゼ アルファ)
- ムコダイン(カルボシステイン)
- ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)
3.解熱鎮痛、抗炎症薬
これらの薬は妊娠後期には制約があるのですが、授乳者に関してはほぼ安全と判断されています。
安全に使用できる薬剤
- カロナールやピリナジン(アセトアミノフェン)
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)
- ブルフェン(イブプロフェン)
- セレコックス(セレコキシブ)
ただし、これらは妊娠後期以降には服用しない方が良いとされています。
4.アレルギー系の薬
抗ヒスタミン薬
アレルギーを引き起こすヒスタミンの作用を抑制する薬です。
安全に使用できる薬剤
- ポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)
- レスタミンコーワ(ジフェンヒドラミン塩酸塩)
- ベネン(ベナトリプロリジン塩酸塩)
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- ハイスタミン(ジフェニルピラリン塩酸塩)
- タベジール(クレマスチンフマル酸塩)
抗アレルギー薬
アレルギーを抑える薬です。
安全に使用できる薬剤
- ジルテック(セチリジン塩酸塩)
- ザイザル(レボセチリジン塩酸塩)
- クラリチン(ロラタジン)
- インタール(クロモグリク酸ナトリウム)
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- アレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)
- ディレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩やブソイドエフェドリン塩酸塩配合物)
- アゼプチン(アゼラスチン塩酸塩)
- アコレート(ザフィルルカスト)
- シングレアやキプレス(モンテルカスト)
5.含嗽:うがい薬
治療上の有益性が危険性を上回る場合
- アズノール(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物)
6.消化性潰瘍治療薬
胃痛の際に胃薬として処方されることが多いです。
H2ブロッカー
「ヒスタミンH2受容体拮抗薬」で、おもに胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍の治療に用いられます。
- ガスター(ファモチジン)
- ザンタック(ラニチジン塩酸塩)
PPI
「プロトンポンプ阻害薬」で、こちらもおもに胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍の治療に用いられ、H2ブロッカーよりも強力な胃酸分泌抑制作用を持っています。
また、分泌抑制作用は用量に依存し、H2ブロッカーよりも長時間持続するのが特徴です。
- オメプラール(オメプラゾール)
- ネキシウム(エソメエプラゾールマグネシウム水和物)
その他
- ムコスタ(レバミピド)
- セルベックス(テプレノン)
- アルサルミン(スクラルファート)
7.抗菌薬
細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬です。
その中でも微生物が作った化学物質を『抗生物質』『抗生剤』と称します。
風邪はウイルスによる感染が多いため、抗菌薬は必要にならないことが多いです。
しかし、風邪に伴う症状で抗菌薬を使用することはあり、ほぼ安全に使用できるものが多くあります。
ペニシリン系
- ペントシリン(ピペラシリンナトリウム)
- サワシリン(アモキシシリン水和物)
- ビクシリン(アンピシリン水和物)
セフェム系
開発された世代によって薬剤が持つ抗菌作用に違いがあり、第1世代から第4世代に分類されます。
第1世代に近いほど黄色ブドウ球菌(化膿性皮膚疾患の原因菌)などの『グラム陽性菌』に対しての作用が強く、第4世代に近いほど緑膿菌(呼吸器感染症や尿路感染症などの原因菌)に対しての『グラム陰性菌』に対しての作用が強くなっています。
第1世代
グラム陽性菌に強く、グラム陰性菌に弱いことが特徴です。
- ケフレックス(セファレキシン)
- セファメジンα(セファゾリンナトリウム水和物)
第2世代
グラム陽性菌にやや強く、グラム陰性菌にやや強いことが特徴です。
- パンスポリンT(セフォチアムヘキセチル塩酸塩)
- セフメタゾン(セフメタゾールナトリウム)
第3世代
グラム陽性菌に弱く、グラム陰性菌に強いことが特徴です。
- フロモックス(セフカペンピボキシル塩酸塩水和物)
- メイアクトMS(セフジトレンピボキシル)
- セフゾン(セフジニル)
第4世代
グラム陽性菌に強く、グラム陰性菌に強い
- ファーストシン(セフォゾプラン塩酸塩)
マクロライド系
セフェム系のもとは別の種類の抗生物質の一群の総称です。
比較的副作用が少なく、抗菌スペクトルも広いのが特徴です。
リケッチア、クラミジアなどの細胞内寄生菌やマイコプラズマに対しては第一選択薬となります。
- エリスロシン(エリスロマイシンステアリン塩酸塩)
- ジスロマック(アジスロマイシン水和物)
ニューキノロン系
キノロン系の合成抗菌薬をもとに人工的に合成・発展させた抗菌薬です。
治療上の有益性が危険性を上回る場合用いられることがあります。
- タリビッド(オフロキサシン)
妊娠中、授乳中に風邪薬を飲むとき漢方薬ならよい?
1.漢方薬でも避けるべき時期はある
通常の薬には抵抗があっても、漢方薬ならよいと考える人も多いと思います。
しかし、漢方薬でも絶対過敏期(受精後2週間以上8週未満:妊娠4週-9週)の使用は控えたほうがよいです。
医師や、漢方医、産科医とよく検討してからの使用をお勧めいたします。
2.赤ちゃんへの影響の少ない漢方薬と注意事項
絶対過敏期以外の妊娠中や、授乳中にも問題なく飲めるとされている漢方薬を紹介します。
- 香蘇散(コウソサン):胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期に適応。
- 参蘇飲(ジンソイン):感冒症状、咳嗽に適応、体力もつけてくれる漢方薬なので、風邪がなかなかすっきり良くならない時に適応。
- 桔梗湯(キキョウトウ):扁桃炎、扁桃周囲炎などの度が腫れて痛むものの諸般の症状に適応。
- 麦門冬湯(バクモントウユ):痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支喘息に効果。
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ):諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒症状などに適応
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ):感冒、流感・肺炎、肺結核などの熱性疾患に適応。
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ):気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、感冒における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽に適応。麻黄が含まれているため妊婦さんの長期使用はさけたほうが良い。
- 葛根湯(カッコントウ):感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎)、肩こり、じんましんなどに適応。麻黄が含まれているため妊婦さんの長期使用はさけたほうが良い。
麻黄の注意点
麻黄という生薬は、中枢神経や交感神経を活性化させる作用があります。
そのため、使用上の注意には不眠・発汗過多・動悸・精神興奮などが記載されています。
妊娠中に服用するリスクとしては「発汗による脱水症状」「堕胎血流の低下」「胎児の心拍数上昇」などがあげられるので注意が必要です。
妊娠中や授乳中に薬で悩んだときには?
この記事を読んでいる人で、実際に処方されて使用している薬には、上記に該当しないものもあるかもしれません。
また、上記で挙げた薬しか使用できないわけではありません。
使用している薬が安全なものかどうか心配なときは、処方医、薬局、かかりつけの産科医に相談しましょう。
参考サイト
「妊娠と薬情報センター」:国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
まとめ
妊娠中や授乳中でも使える薬があることがおわかりになったと思います。風邪の症状や辛さ、仕事や家庭の事情などもあります。
上手に薬を使って、日常生活を快適に送れるようにしましょう。
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