横隔膜ヘルニアの原因と治療法について。子供と大人の違いを解説!

横隔膜 ヘルニア
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【職務経歴】
平塚共済病院
小田原銀座クリニック
久野銀座クリニック

ヘルニアという言葉を耳にし、なんとなく腰あたりの病気というイメージがある方が多いのではないでしょうか。

『ヘルニア』という言葉は「突出」という意味があり、体内の臓器が本来の場所で収まらず、突出してしまった状態をあらわし、部位によって、”◯◯ヘルニア”と名前がかわります。

この記事では、横隔膜(おうかくまく)に生じる『横隔膜ヘルニア』について解説します。

横隔膜ヘルニアとは

横隔膜ヘルニアとは、横隔膜に穴があくことで、周りの臓器の小腸、大腸、胃、脾臓(ひぞう)、肝臓などがとび出してしまう病気です。横隔膜は体の中心に位置する厚みを持った筋肉で、呼吸をするために、筋肉を伸び縮みさせます。

横隔膜ヘルニアには、生まれつき穴があいている先天性のものと、生まれた時は正常なのに何かしらの要因で穴があいてしまう後天性のものがあります。

横隔膜ヘルニアの種類や原因

1.新生児の横隔膜ヘルニア

新生児 横隔膜 ヘルニア

新生児の横隔膜ヘルニアは先天性のものがほとんどです。日本でも年に200~300人が発症している『先天性の横隔膜ヘルニア』は、指定難病になっています。

お腹の中にいる胎児の頃から臓器が胸の方へ出てしまう場合と、成長とともに出る場合があります。症状は、軽症・重症、様々ですが、重症になると肺の発達がうまくいかず自力での呼吸ができない状態になります。

先天性横隔膜ヘルニアには、3種類あって、原因はまだ明らかになっていませんが、ほとんどのものは遺伝性がないと考えられています。

※『指定難病』とは
原因がわからず、治療法が確立されていないため、長期療養が必要な難病を指します。患者さんに負担が大きいことから医療費助成を受けることができます。難病の中でも、国が指定した病気で、患者数が国の人口の0.1%以下という診断基準があります。

ボックダレック孔ヘルニア

横隔膜の後ろ側(特に左)に穴があいているのが、ボックダレック孔ヘルニアです。ボックダレック孔ヘルニアは、先天性横隔膜ヘルニアの中でも一番多く、重症の呼吸困難、呼吸不全のリスクが高まります。生まれてすぐに症状がでやすいので、生まれたらその場で人工呼吸を装着することもあります。

傍胸骨孔(ぼうきょうこつこう)ヘルニア

本来であればしっかり肋骨にくっついているはずの横隔膜が、骨とくっつく力が弱くなって外れると、臓器がはがれた部分から入り込んでしまいます。これが傍胸骨孔ヘルニアです。

横隔膜の図

傍胸骨孔ヘルニアは自然に治ることはないものの、あまり症状がなく、成長してから胸部X線で初めて気づくことも多あります。治療後の経過も比較的良いです。

食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア

食道が通る穴に胃の一部が入り込んでしまうのが食道裂孔ヘルニアです。これは、逆流性食道炎、栄養障害、発育障害のリスクが高くなります。

2.成人の横隔膜ヘルニア

大人 横隔膜 ヘルニア

成人してからの横隔膜ヘルニアには、先天性のものが症状として出た場合と、事故やケガによって横隔膜が傷ついてしまった、または横隔膜にダメージを与える生活習慣を長年つづけていた場合に発症することがあります。強く何度も咳をすることでも横隔膜ヘルニアになる場合があります。

事故やケガが原因となる横隔膜ヘルニアは、すぐに症状がでるものもあれば、数年後に発症することもあります。

また、2章の『先天性のヘルニア』として紹介した食道裂孔ヘルニアは、後天性でも発症することがあり、後天性で発症する率は高めです。これは太り過ぎ、猫背などの生活習慣が原因で発症し、中年以降の女性に多い傾向があります。

また、妊娠により横隔膜ヘルニアになってしまうこともあります。原因は、胎児の成長にともない、腹腔(ふくこう:胃、小腸、大腸などの内臓が入っている空間)が圧迫されてしまうからです。

成人になってからの横隔膜ヘルニアは、逆流性食道炎や胸焼けなどを伴うことが多いです。さらに、外傷性の場合はそこに胸部の痛みも出てきます。

横隔膜ヘルニアの治療法

治療 横隔膜 ヘルニア

1.薬物療法

逆流性食道炎や胸焼けが起きている場合は、胃酸を抑える薬として胃酸分泌抑制剤を使用します。

2.外科的療法

外科的療法では、簡単にいうと、とび出した臓器を元の位置にもどし、再発しないよう穴があいている横隔膜の処置を行います。

先天性の場合

先天性の場合は、手術はもちろん、手術前後の管理も重要となります。生まれてすぐは人工呼吸をして酸素吸入をおこないます。

心臓の働きを助ける薬や肺高血圧の場合は肺の血管を広げる肺血管拡張剤を使用することもあり、呼吸や循環状態が安定したあとに手術をおこないます。

重症の場合は人工肺を装着することもあります。直視下開腹手術(ちょくしかかいふくしゅじゅつ)という、肋骨の下あたりのおなかを切る開腹手術です。

横隔膜の穴が大きければ人工布を使って、横隔膜の代用としていきます。近年は手術の負担を減らすために、内視鏡下手術も導入されてきています。

後天性の場合

外傷によって起こることが多く、緊急手術で破裂した部位を縫い合わせる治療が多くあります。そのほかの症状があれば適宜治療していきます。

まとめ

大人 子供 横隔膜ヘルニア

横隔膜ヘルニアは、呼吸器感染を起こすと重症化しやすいため、日常生活での感染予防に気をつけたいものです。

先天性横隔膜ヘルニアは、3/4の人が存在します。さらに新生児をすぎて発症した場合では、ほとんどの人が日常生活に戻れるほどに回復します。

症状が軽ければ、治療後の経過もよく、重症例では繰り返し呼吸器系、気管支系、消化器系など後遺症が続くこともあります。

患部を温存する場合や、治療をしたとしても定期的に主治医に状況報告、相談をしていく必要があります。

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