風邪をひいてしまったら、初期の段階で早く確実に治したいと思う人が多いのではないでしょうか?
病院を受診した場合、症状によって風邪薬が処方されることが多いと思いますが、「AMR臨床リファレンスセンター」の『抗菌薬意識調査2018』によると、患者さんの30.1%が風邪で受診をした際には「抗菌薬」を処方して欲しいと思っているそうです。
通常、ウィルス性の風邪やインフルエンザの場合、抗菌薬は効果がありません。では、必要のない抗菌薬を服用することで、身体へのリスクはないのでしょうか?
そもそも抗菌薬とは何なのか、どのようなときに使用するものなのか、薬剤師の石上和子先生にうかがいました。
【参考URL】http://amr.ncgm.go.jp/infographics/008.html
抗菌薬とはどんな薬?抗生物質との違いは?
抗菌薬はどのような薬なのか、よく耳にする「抗生物質」と同じものなのかについて石上先生が解説してくれました。
「抗菌薬とは、細菌を攻撃することで増殖を抑える薬です。化学的に作られた薬を抗菌薬といい、細菌という微生物から作られた薬が抗生物質とされています。
しかし、抗生物質も大きい枠で見れば抗菌薬となるので、両方とも同じ意味で広く使われています」
化学的に作られたものか、微生物から作られたものかによって呼び名は変わるのですが、どちらも同じ意味で抗菌薬とされているわけです。
風邪には抗菌薬が効かない理由
風邪に抗菌薬が効かない理由について、石上先生はこう説明してくれました。
「一般的な風邪は、ほぼウィルスの感染症です。抗菌薬は細菌に対して効果を発揮するのでウィルス性の風邪には効果がありません」
抗菌薬は必要なときだけ服用するのが適切
必要のない抗菌薬を飲んだときのリスクについても気になるところです。
石上先生によると、「抗菌薬は、下痢や発熱と言った副作用が出る場合もあります。さらに大きな問題となっているのが、抗菌薬の不適切、不必要な服用により生まれる『薬剤耐性菌』です。
薬剤耐性菌は、自身が生き残るためのさまざまな変異を行い、抗菌薬が効かない細菌に変化してできる菌です。このような菌を生まないためにも、抗菌薬は本当に必要なときにだけ使用したい薬といえます」
子どもや妊婦さんが抗菌薬を使用する場合
子どもや妊婦さんが抗菌薬を使用されるケースはあるのでしょうか?
石上先生は、「子どもや妊婦さんでも抗菌薬を処方されることがあります。子どもの場合は溶連菌感染症や中耳炎、風邪(ウィルス性)の二次感染による気管支炎や肺炎などに使用することが多いです。
妊婦さんの場合、検査で細菌感染が見つかった場合に抗菌薬を使用することがあります。個人の体質にもよるので、その場合には産科医と相談して薬を選びます。
また、気管支喘息や糖尿病の合併症による『細菌性肺炎』の際に、抗菌薬としてペニシリン系、マクロライド系の抗菌剤(抗生物質)が使われることがあります」
抗菌薬を使用する際の注意点
抗菌薬を服用する場合の注意点については、「抗菌薬は身体に悪影響を与えている菌を殺したり増殖を抑えたりするために処方されます。
症状が治まったからといって、自己判断で服用を中止すると効果がありません。抗菌薬を服用する際は医師の処方を必ず守り、心配なことがある場合には確認してから使用するようにしましょう」
抗菌薬はお医者さんの指示にしたがって、本当に必要なときにだけ服用することが大切です。
また、抗菌薬に対する正しい知識を身につけ、どんなときに必要なのかを理解することが薬剤耐性菌の発生を防ぎ、その結果、自分の身体を守ることにつながります。
取材協力:管理薬剤師・石上和子先生