
2006年 北里大学大学院卒
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
早期発見、早期治療を心がけ、健康で心豊かな人生を歩んでいただくことを願っており、内科・消化器内科を中心に幅広い情報の発信に努める。
『小児肥満』は、食生活の欧米化やライフスタイルの変化によって、近年増加傾向にあります。ここ30年の間に肥満傾向の子どもは2~3倍に増えています。
「成長期だから太っていても大丈夫」と思っていませんか?小児肥満を放っておくと、病気にかかるリスクが高まります。
この記事では、小児肥満の原因や治療法、小児肥満度の算出方法について解説します。
小児肥満について
1.小児肥満とは?治療は必要?
小児肥満は、病気が原因でない「単純性肥満」
肥満には、2種類あります。
1つは、病気など何らかの原因がある『二次性肥満』、もう1つは病気などが原因でない『単純性肥満』です。
このうち小児肥満の多数は、後者の単純肥満です。摂取エネルギー量が消費カロリー量を上回った結果、余分なエネルギーが体内に脂肪として蓄積した状態だと考えられます。
病気を引き起こすことも!早めの治療を
『小児肥満』は、子どもの『メタボリックシンドローム』を発症する危険性があります。
その他にも病気を引き起こす可能性があり、早めに治療することをおすすめします。
2.小児肥満度の計算方法
小児肥満の算出方法は3通りあります。
乳幼児(3ヶ月~5歳):カウプ指数
乳幼児(3ヶ月~5歳)の発育状態の程度をあらわすのが『カウプ指数』です。
カウプ指数は、『体重(kg)÷身長(cm)²×10⁴』で算出します。18~20未満が肥満ぎみ、20以上が肥満です。
学童期:ローレス指数
学童期の肥満度をあらわすのが『ローレス指数』です。
ローレル指数は、『体重(kg)÷身長(cm)³×10⁷』で算出します。145~160未満が肥満ぎみ、160以上が肥満です。
乳児と学童共通:肥満度
『肥満度』は、乳児と学童の両方に共通して使える計算式です。
肥満度は『(実測体重-標準体重)/標準体重×100(%)』で算出します。幼児は肥満度15%以上が肥満傾向児です。学童は、肥満度20%以上が肥満児になります。
3.小児肥満で治療が必要なワケ
小児肥満の状態が続くと、次のリスクがあります。
生活習慣病やメタボリックシンドロームを起こす
小児肥満も、大人の肥満と同様に、『生活習慣病』や『メタボリックシンドローム』を引き起こす可能性があります。
さらに動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞のリスクも
生活習慣病である『糖尿病』や『脂質異常症』、『高血圧』にかかると、子どもの頃から『動脈硬化』が進行することもあります。
動脈硬化が進行すると、『脳卒中』や『心筋梗塞』になる可能性も高まります。
膝や腰などに負担がかかる
肥満の状態が続くと、膝や腰などにも負担がかかります。
主な病気として考えられるのは、『椎間板ヘルニア』『腰部脊柱管狭窄症』『腰椎分離症』『変形性腰椎症』『変形性膝関節症』などになります。
大人になっても肥満が続く…
小児肥満だと、大人になってからも肥満の状態が続きやすいです。
子どもの頃に、悪い食習慣や運動不足が定着すると、なかなか抜け出せません。こうした生活習慣のまま大人になると、病気にかかる可能性が高くなります。
小児肥満の原因
小児肥満の原因は大きく分けて3つ考えられます。
1.遺伝的要因
1つ目の原因は『遺伝的要因』です。
家族に肥満の人が多い場合、『肥満遺伝子』を持っている可能性が高く小児肥満になることも多いです。
2.食事内容と時間
2つ目の原因は、食事の『内容』と、食事を『とる時間』です。
近年、日本でも欧米型の食事が増え、『脂質』の摂取量が増加する傾向にあります。
また、共働きの家庭が増えたことで、夕食の時間も遅くなっています。それにともない、間食の量も増えてしまいます。
3.ライフスタイル
3つ目の原因は、ライフスタイルです。
運動不足に注意!
家の中でゲームをして遊ぶなど、外で体を動かす機会が減り、運動不足の子どもが増えています。それにより、消費エネルギー量を摂取エネルギー量が上回り、余分な脂肪が蓄積されて小児肥満を引き起こします。
ストレスから食べ過ぎる子どもも…
また、ストレスを多くかかえる子どもも増えています。そうしたストレスのはけ口が、食事になっているというケースもあります。
小児肥満の治療
1.小児肥満は何科へ行くべき?保険は適用される?
小児肥満は、小児科で相談を
小児肥満が気になる場合は、小児科で相談しましょう。
多くの場合、治療には保険が適用される
肥満症と診断されれば多くの場合、保険が適用されます。しかし、健康上問題がない場合や、脂肪吸引や脂肪溶解注射など美容目的の外科的施術は保険適用がありません。
治療は主に、『食事療法』と『運動療法』です。医師や管理栄養士などの指導のもと、生活習慣の改善をおこないます。
2.食事療法
食事の量や、内容について見直す
食事療法では、摂取するエネルギー量のコントロールをおこないます。
消費エネルギーを、摂取エネルギーが上回らないようにする必要があります。また、高脂質な食事が多い場合は、食事内容も見直します。
子どもの場合は特に、単純に食べる量を減らす減量方法にならないように注意してください。必要な栄養素をしっかり摂りながら、脂肪を減らすように工夫しましょう。
食べるタイミングや食べ方も重要!
加えて、食事をとるタイミングや、食べ方の改善も重要です。
夕食は遅くなりすぎないようにしましょう。食事をとるタイミングや、それにあわせた間食の取り方についても指導していきます。
また、食事のときは良く噛んで食べることも意識しましょう。早食いの防止になり、食べ過ぎ防止、消化促進が期待できます。
3.運動療法
子どもの場合は成長期でもあるので、筋肉をつけながら減量することが大切です。そのため、食事療法と併せて運動療法もおこないます。
さまざまな遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましいとされています。実施する頻度は肥満度や足腰の状態によって変わるため、医師と相談しましょう。
運動習慣をつけることで、余計な皮下脂肪を減らすとともに、筋肉をつけて成長も促します。また、子どもの頃からしっかり筋肉をつけることで、大人になってから太りにくい体を作ることもできます。
まとめ
小児肥満は、近年の食生活やライフスタイルの変化により、増加傾向にあります。
小児肥満を放っておくと、大人になってからも肥満が継続したり、生活習慣病を引き起こしたりする可能性があります。そのため、早めに肥満を解消することが大切です。
大人がサポートしながら、生活習慣の改善につとめましょう。
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