
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
平成26年よりKO CLINICに勤務
平成29年2月より小田原銀座クリニックに勤務
日常生活の中でちょっとした不注意により起きてしまう「やけど」。やけどには様々な種類がありますが、いずれも早く冷やすなどの応急処置が大切です。
応急処置を行うことにより、症状が進行することを防ぐだけでなく、痛みを和らげ、感染を防止する効果も期待できます。この記事では、やけどをした場合の正しい応急処置についてお伝えしていきます。
やけど直後の応急処置
1.やけどの範囲が小さい場合
基本は、水道水で冷やす
やけどの症状の進行を防ぐために、やけどをしたらできるだけ早く水道水の流水で冷やします。
指や足のやけどは、1時間程度冷やすことで、よりやけどの進行を抑えて痛みを和らげる効果があります。
冷やしたほうがいいからといって、アイスノンなどの保冷剤や氷などを直接患部にあてると、皮膚が冷えすぎて凍傷を起こしてしまったり、保冷剤が傷口にくっついてしまったりすることがあるので避けましょう。
流水では冷やしにくい部分のやけど
顔や耳、目など流水では冷やしにくい場所は、タオルに保冷剤や氷などを包み、こまめに替えながら冷やします。氷水で冷やしたタオルを用いるのも良いでしょう。
胴回りなど体のやけどで、直接水をあてられない場合は、その部分にタオルをかぶせ、上から水を流します。
2.やけどの範囲が大きい場合
衣類の上から冷やしましょう
体の広い範囲にやけどを負ってしまい、流水で冷やせない場合は、洗面器に水をため、やけどをしたところを浸して冷やします。
衣類を無理に脱がそうとすると、皮膚が一緒に剥がれてしまうことがあります。
また、やけどをした部分にできた水ぶくれが破れることもあり、場合によっては痛みが強くなり治療期間も長引くことがあります。
ですから、やけどが広範囲にわたる場合、衣類はそのままで、衣類の上から冷やしましょう。
やけどの場所、範囲によっては浴槽を用いても
やけどを冷やすには、水道水を流し続けることが一番いいのですが、場所ややけどの範囲によっては、浴槽を用いる方法があります。
目安時間は20~30分で、疼痛(とうつう)というズキズキとうずくような痛みが和らぐまで行いましょう。冷やす面積が大きいと、体温が下がりすぎる場合があり、注意が必要です。
始めはやけどを負った患部全体を冷やし、寒いと訴えていたり、ふるえたりする場合は冷やすのをやめて、体を毛布などで包み保温します。
やけどが深く、広範囲に及ぶ場合は、速やかに病院へ
やけどの程度によっては、生命が危険と判断される場合があります。やけどが深く、広範囲にわたる場合は、速やかに病院を受診することが大切です。
冷やした後の処置。アクセサリーは外して
痛みや熱っぽさが和らぐまで冷やしたら、清潔なガーゼでやけどの部分をゆるくおおいましょう。やけどを負ったところは腫れてくるので、指輪などのアクセサリー類は取り外しておきます。
やけどの範囲が広くなかったとしても、痛みが強い、熱が引かない、水疱ができるなどの症状がある場合は、我慢せずに皮膚科を受診しましょう。
自分でやけどの処置をするときの注意点
自分でやけどの処置をする場合に注意するポイントについて解説します。
1.水ぶくれ(水疱)ができた場合
水ぶくれを破らないように注意!
冷やす時に、水ぶくれを破らないように注意しましょう。やけどをした皮膚は、細菌に感染しやすい状態といえます。水ぶくれが破れることで細菌感染しやすくなり、細菌感染すると損傷が深くなり、治りにくくなってしまいます。
水ぶくれが破れた場合は、表面の薄い皮をはがずに、清潔なガーゼで覆い、速やかに病院を受診します。
自己判断で薬は塗らないで!
患部を冷やしても痛みが強いなどの症状があれば、何もつけずに、速やかに病院を受診することが望ましいです。
自己判断で薬をつけてしまい、症状が悪化し治療期間が長くなる、やけどの深さの診断が難しくなることがあります。
2.皮膚を乾燥させない
やけどの皮膚を乾燥から防ぎ、保護をする目的で、「湿潤療法」(しつじゅんりょうほう)もおすすめです。
湿潤療法とは、ワセリンを患部に塗り、その上からラップを貼る方法です。
自分で処置する場合は、軽度の表皮やけど(1度熱傷)程度の場合にとどめましょう。
やけどの診断は、医師でも難しいと言われています。水ぶくれができたり、痛みが続いたりするようであれば、すみやかに病院を受診してください。
3.湿布を貼るのはやめましょう
やけどをした部分に湿布を貼ると、皮膚に水ぶくれができてしまう、湿布にくっついてしまうなど、やけどが悪化することがあります。湿布はやけどに効果はありませんので、湿布は用いないようにしましょう。
まとめ
やけどには、日常生活でおこる軽いものから、酸、アルカリの化学物質が付着しておこる化学熱傷などさまざまですが、いずれの場合も、早く対処をすることでその進行を防ぐことができます。
子供のやけどの多くは、家庭内のポットの湯や炊飯器の蒸気、お風呂や火遊びなどが原因といわれています。特に湯たんぽなどで起こる低温やけどは、痛みがそれほどなかったとしても、深く進行している場合があるので注意が必要です。
やけどをしたら慌てずに冷やし、患部を保護した上で皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。