
2006年 北里大学大学院卒
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
早期発見、早期治療を心がけ、健康で心豊かな人生を歩んでいただくことを願っており、内科・消化器内科を中心に幅広い情報の発信に努める。
アライグマが持つ寄生虫『アライグマ回虫』は、人にも影響を与えることがあります。
日本では今のところ、人への感染事例はありませんが、アメリカでは感染した人が死亡したケースもあります。また、日本国内でも、アライグマ回虫の寄生した、野生のアライグマが発見されています。
この記事では、アライグマ回虫症の症状や予防法、万が一感染してしまったときの対処法を解説します。
アライグマ回虫について
1.アライグマ回虫とは?
アライグマにみられる寄生虫
『アライグマ回虫』は、北米に生息しているアライグマによくみられる寄生虫です。
成虫はアライグマの小腸に寄生し、2~3週間で、感染力を持つ卵を産むまでに成長します。
アライグマ回虫は、約2mmと、肉眼でも確認できる大型の回虫です。体力もあり、感染した動物の体内を活発に動き回ります。
口から摂取すると、人の体内でも繁殖する
この卵を、人や鳥類などが口から摂取すると、幼虫が急激に成長し、体内で繁殖します。それから中枢神経系に移動し、重篤な脳機能障害などを残すこともあります。
2.アライグマ回虫症とは?
アライグマ回虫による感染症
『アライグマ回虫症』は、先に解説したアライグマ回虫がヒトに感染することで起こる感染症です。
寄生虫は、もともと特定の動物にしか寄生することができません。しかし、アライグマ回虫は、感染すると幼虫のままで繁殖をしたり、体内を動き回ったりします。それによりあらわれる症状を 『幼虫移行症』と呼びます。
失明などの後遺症や、死に至る可能性も
先にも解説したように、アライグマ回虫症にかかると、重篤な症状があらわれることも多いです。アメリカでは死に至った例もあります。他に、失明などの後遺症が残る可能性もあります。
3.感染経路について
アライグマ回虫症は、寄生虫を持ったアライグマからの経口感染がほとんどです。感染を防ぐような特効薬はありません。
また、人から人への感染報告は今のところないです。
4. アライグマ回虫症の症状
風邪に似た症状や錯乱、視力障害など
アライグマ回虫症は、『咳』や『発熱』など、風邪にも似た症状があらわれます。
また、「うとうと」とした状態の『傾眠』や、『錯乱』、『視力障害』などの症状も、短い期間で重篤化しがちです。
中枢神経系に影響が及ぶと…
中枢神経系に影響が及んだ場合は、歩けなくなる、会話ができなくなるなどの症状があらわれる可能性もあります。
体内に入ったからといって、必ずしも発症するわけではない
しかし、体内に入ったアライグマ回虫が、必ずしも感染や発症をするというわけではありません。まれに、幼虫が「から」をかぶった状態で人の体内に入ることがあります。その場合は、運動能力や繁殖能力が低いので、感染や発症はしにくいといえます。
5.野生でなくても要注意!
野生アライグマの場合、感染しているかどうか判断できないので、特に注意が必要です。
かといって、野生でなければ一概に大丈夫であるとも言い切れません。
もし感染してしまったら…対処法
感染しないように気をつけるのが一番ですが、万が一に備えることも大切です。
1.少しでも早く病院へ!
万が一感染してしまったら、少しでも早く病院へ行きましょう。
近くの内科で相談することをおすすめします。アライグマとの接触など思い当たる節があれば、まずは電話で相談しても良いでしょう。必要であれば、その後大きな病院を紹介してもらうこともできます。
2.検査方法
アライグマ回虫症の可能性がある場合は、『脳脊髄液』や『血清検査』などで、『特異抗体』があるかどうかを調べます。特異抗体とは、特定の異物と結合して、それを生体内から除去する物質のことです。
特異抗体が確認されれば、アライグマ回虫症だと診断されます。
目に症状があらわれた場合は、顕微鏡で虫が見えるケースもあります。虫が確認されれば、診断の決め手となります。
3.治療法
感染後1~3日は「抗線虫薬」が有効
感染後1~3日ほどであれば、『抗線虫薬』が有効で、アライグマ回虫が中枢神経系へと達する前に食い止め、駆除できる可能性があります。
幼虫が中枢神経系に達すると、治療が効かない
一方、幼虫が中枢神経系に達している場合は、薬による治療の効果がほとんどみられません。
そのため、一刻も早く薬を服用することが非常に大切です。
アライグマ回虫症の対策について
1.予防法。近所にアライグマが…
居住地の近くでアライグマを見かける、アライグマが生息している、といった場合は十分に注意する必要があります。
むやみにエサを与えない!
アライグマをなるべく家に近寄らせないようにしましょう。アライグマは一度エサをあげてしまうと、家に懐いてしまう習性があります。むやみにエサをあげないようにしてください。
触る場合は必ず手袋を
触れ合うような場合は直接の接触を避け、手袋をするなどの対策をしましょう。
アライグマの糞には特に注意
また、アライグマが糞をする場所には近づかないようにしてください。もし家の近くに糞をしていたら、砂などをかけておいて、手で触らないようにしながらビニール袋に入れ、処分しましょう。
2.ペット飼育は禁止
アライグマのペット飼育は禁止されています。
3.海外旅行先で動物と触れ合った場合
出国や入国のさいの『検疫』を必ず受けるようにしましょう。
もし、アライグマと接触し、アライグマ回虫症に感染しているおそれがある場合は、事前にそのことを伝えておきましょう。
まとめ
アライグマ回虫が人に感染することは、ほとんどありません。
とはいっても、海外での前例があるので注意するに越したことはありません。日本にも野生化しているアライグマはいますが、アライグマ回虫症に関する知識は広まっていないのが現状です。
万が一、感染が疑われるような場合は、すぐに病院を受診しましょう。
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