
2002年 慶應義塾大学医学部を卒業
2002年 慶應義塾大学病院 にて小児科研修
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室勤務
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務
2017年 「なごみクリニック」院長に就任
小児科専門医・指導医
日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
臨床研修指導医(日本小児科学会)
抗菌化学療法認定医
全人的な医療を心がける。病気・障害と付き合い「地域に住む方が、健康面で安心して生活を続けるお手伝いをする、支える医療」を目指す。
「春になると花粉症がつらい!」あなたもそう感じていませんか?
花粉症やハウスダストなどが原因の『アレルギー性鼻炎』がどうして起こるのか、また舌下免疫療法などの治療法について解説します。
アレルギー性鼻炎について
1.アレルギー性鼻炎とは?
アレルギー性鼻炎とは、鼻で起こるアレルギー反応のことです。花粉症もこれに含まれます。
2.アレルギーが起きるしくみ
アレルギーは、身体の中に入ってきた細菌などの異物(『抗原』)に対抗する機能が過剰にはたらくことで起こります。
まず異物に対抗する「抗体」が作られる
花粉などの抗原が鼻の粘膜に付着し、粘膜内に侵入すると、白血球が『抗体』という物質を作ります。抗体は、同じ抗原が身体の中に侵入したときに、スムーズに排除する役割を果たします。
抗体は抗原にぴったり合う形で作られ、鍵と鍵穴にも例えられます。
続いて抗体が肥満細胞にくっつき全身に
そうして作られた抗体は、アレルギー反応を起こす物質を多く含んだ『肥満細胞』にくっつきます。肥満細胞は、気管支や鼻粘膜、皮膚など、体外と触れあう部分の組織の粘膜等に存在する細胞です。
抗原と何度も接触することで、抗体をくっつけた肥満細胞が次第に増えて全身に蓄積されます。この蓄積がある量を超えると、いつアレルギーが発症してもおかしくない状態になります。
その状態で抗原が侵入すると、抗体がそれをとらえて、体にアレルギー反応を引き起こします。
アレルギーを発症する人としない人がいるのはなぜ?
アレルギーを発症する人としない人がいるのは、もともとアレルギーを起こしやすい体質かそうでないかの違いです。アレルギーを起こすまでの年月についても同様です。
また、免疫バランスが崩れやすい生活をしていることで、アレルギーを発症しやすくなることもあります。
3.アレルギー性鼻炎の症状
アレルギー性鼻炎の症状は鼻や目、皮膚などにあらわれます。
鼻まわりの症状
さらさらとした水のような鼻水が出ます。鼻の粘膜が炎症を起こし腫れた状態が続くことで、鼻づまりもひどくなりがちです。また、くしゃみも出るようになります。
目の症状
かゆみ、充血、まぶたの腫れなどの症状がみられます。
皮膚の症状
顔や首、ときには全身がかゆくなることもあります。
全身の症状
まれに発熱します。また、アレルギー症状が原因でよく眠れず、日中ぼんやりしてしまうことがあります。
4.アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎を引き起こす抗原には、1年を通して存在する『通年性』のものと、『季節性』のものとがあります。
ダニやハウスダストなど、通年性の抗原
通年性の抗原によるアレルギーの人は、1年中鼻炎に悩まされます。ダニ、ハウスダスト、カビ、あるいは犬や猫の上皮(フケ)などが代表的です。ダニは糞や死骸にアレルギーを引き起こす性質があります。生きているダニそのものよりも、糞や死骸を吸い込んだ方がアレルギーを起こしやすいのです。
花粉症など、季節性の抗原
季節性抗原の代表は、植物の花粉です。季節性の抗原によるアレルギーの人は、特定の季節だけ鼻炎を発症します。
花粉症というと春のイメージが強いですが、夏や秋にもさまざまな花粉が飛んでいます。
<春>ハンノキ、スギ、ヒノキ、シラカンバ、コナラなど。
ヒノキとスギの花粉は構造が非常に似ており、スギ花粉症の人はヒノキにも反応することが多いです。
<夏>イネ科の花粉症が多くなります。
カモガヤ、ハルガヤオオアワガエリなど。花粉の構造がどれも似ており、検査をしてもどの植物の花粉症かはっきりしません。そのため『イネ科花粉症』と総称されることがあります。
<秋>ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどが飛びます。
アレルギー性鼻炎の治療法
アレルギー性鼻炎の治療には、アレルギー症状を抑える『薬物療法』と、アレルギー反応自体を起こらないよう働きかける『免疫療法』の2種類があります。
1.薬物療法
なるべく医師から処方を受ける
アレルギー性鼻炎の薬物療法には内服薬、点鼻薬、目薬の3つのタイプがあります。症状の出かたや強さ、年齢などによって薬の組み合わせは変わります。そのため市販薬を飲むよりも、医師の処方がおすすめです。
薬は症状がひどくなる前に!
アレルギー症状を抑える薬の多くは、効果が出るまでに時間がかかります。症状がひどくなる前に薬を使用しましょう。ひどくなってからでは、より多くの薬を使わなければならない場合もあります。
2.免疫療法
免疫療法とは?
免疫療法とは、免疫が花粉などのアレルゲンを敵とみなし排除しようとする働きに対して『敵ではないので排除しなくていい』と教え込む治療法です。発症している症状を軽くするだけでなく、アレルギーを起こす体質そのものの改善も期待できます。
免疫療法のしくみ
免疫療法の治療薬により、大量の抗原を体内に取り込みます。すると『樹状細胞』と呼ばれる細胞が抗原の情報をキャッチし、他の免疫細胞に情報を伝えます。樹状細胞は、白血球の中の免疫細胞の一部で、免疫細胞の司令塔の役割を担っています。
樹状細胞から指令を受けた『T細胞』が免疫の働きを制限し、アレルギー反応が起こりにくくなります。T細胞は、白血球の中のリンパ球の一種で、免疫反応にかかわる細胞です。
3.『舌下免疫療法』について
免疫療法は、これまでは注射で抗原を体内に入れる『皮下免疫療法』が主流でしたが、最近は『舌下(ぜっか)免疫療法』が中心になってきています。
舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法は、アレルゲンの成分を含んだ薬剤を口にふくみ、飲み込む方法です。自宅で受けられて注射よりも手軽なのが特徴です。
舌下免疫療法の副作用
舌下免疫療法では、服用後にアレルギー反応が起こるおそれがあります。
口の中の副作用としては、じんましんや発疹、下痢や花粉症の症状がでることがあります。まれにではありますが、強いアレルギー症状(アナフィラキシー)がでて、ショックを起こすこともあります。
4.免疫療法の治療期間
スギやハウスダストは2~3年
スギ・ハウスダストに対しての舌下免疫療法の治療期間は2~3年といわれています。通院は原則2週間~1か月に1回、服薬は1日1回です。
多くの人は2~3か月目で効果を自覚します。花粉症の場合、少なくとも2シーズンは治療を継続しましょう。
花粉症など季節性の抗原の場合でも、薬は1年中飲む必要があります。
治療を終えたあとも効果が続く
舌下免疫療法は、治療を終えたあとも効果が続きます。弱まることもありますが、再び舌下免疫療法を行えば、ほとんどの場合短期間で症状が改善します。
治療中もアレルゲンを身体の中に入れないように
ただし免疫療法を受けていても、アレルギーの原因となる、アレルゲンを体の中に入れない努力は必要です。大量のアレルゲンを吸い込めば、症状が軽くなっていても、アレルギー反応を起こしやすい鼻粘膜に再び症状が現れることがあります。
まとめ
アレルギー性鼻炎は、身体のいろいろな部分にやっかいな症状があらわれ、イライラの原因にもなります。また睡眠がとれず仕事や日常生活に支障がでることもあります。
アレルギー性鼻炎はなかなか自然には治りません。アレルギーの原因となる物質の診断を医師から受け、それに応じた治療を受けましょう。
そのうえで、アレルギーの原因となる物質を吸い込むことを避け、アレルギー反応自体が起きないようにすることも大切です。
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