『副腎がん』は稀に生じるがんです。発見が遅れる傾向にあり、気づいた時にはステージ2以上のことも珍しくありません。
この記事では、副腎がんの症状や治療法、転移などについて解説します。
副腎がんとは
1.副腎がんって?どんな病気?
『副腎がん』は、生命維持のホルモンを産出する『副腎』に、悪性の腫瘍ができる病気です。
副腎は、左右の腎臓にひとつずつ存在する、小さな臓器です。副腎にできる腫瘍はほとんどが良性ですが、その中で100万人に2人の確率で副腎がんを発症します。
また、副腎がんは、女性の方が発症率が高いです。
2.副腎腫瘍とどう違うの?
副腎腫瘍は、悪性と良性両方のできものの総称
腫瘍とは、いわゆる『できもの』のことです。副腎にできものが生じた状態を、『副腎腫瘍』といいます。腫瘍には良性のもの、悪性のもの療法が含まれます。
良性であれば、体に悪さをしないことがほとんど
良性であれば、体に悪さをすることはほとんどなく、症状がないことも多々あります。ときに、ホルモンバランスを乱すこともあります。
悪性の場合に、副腎がんとなる
悪性の場合は「がん」となり、腫瘍に対して治療をおこなう必要があります。
3. 副腎がんの症状とは?
がんの進行により、腫れや触ったときの痛みが生じる
副腎がんに特有の症状はありません。しかし、がんが進行し、腫瘍が大きくなることで、目に見えて腫れている、触ると痛むなどの症状があらわれます。
そのほかお腹の痛みや吐き気など
そのほか、お腹の痛みや便秘、吐き気などが生じることもあります。
ホルモンバランスがくずれ、糖尿病や高血圧になることも
また、副腎はホルモンを産出する臓器でもあります。
そのため副腎にがんができることで、ホルモンバランスがくずれ、『糖尿病』や『高血圧』などの生活習慣病を引き起こすことがあります。
4.副腎がんの5年生存率
副腎がんの予後はあまりよくありません。5年生存率は、ステージ1~2では45-60%、ステージ3では10-25%です。
副腎がんの検査
1.何科で相談するべき?
体に不調を感じたら、まずは内科へ
体の不調を感じたら、まずは近くの内科で相談しましょう。
副腎がんが疑われるようであれば、詳しい検査が必要になるため、総合病院などの紹介状を書いてもらいましょう。
内分泌内科に行くのもひとつの手
また、CTやMRIなどの検査をおこなっている、総合病院の内分泌内科へ直接行くのもひとつの方法です。
2.副腎がんの検査方法
副腎がんの検査では、『血液検査』や『尿検査』、『CT』、『MRI』を用います。
血液検査や尿検査で、ホルモンについて調べる
血液検査や尿検査から、ホルモンの値の変動や、体の中で分泌されたホルモンが、尿に出ているかを調べます。
CTやMRIで、副腎がんや体の状態を調べる
CTやMRIでは、副腎がんの大きさや状態を知ることが出来ます。転移があるかどうかも含め、体の状態を調べます。
副腎がんの治療法
1.外科手術
副腎がんは、手術がもっとも有効な治療法です。
特に、副腎がんから多臓器への転移がなければ、まず手術をおこないます。手術で完全に切除できれば、予後の改善も見込めます。
また、状態により、がん細胞だけでなく、腎臓や周りの臓器を切除することもあります。その場合は、術後、薬物療法などを併用します。
2.化学療法
がんが進行しており、手術が難しい場合におこなう
化学療法は、手術ができないほど転移や病状が進行していた場合に、ホルモン分泌をおさえたり、症状を緩和したりするためにおこないます。
「ミトタン」という薬剤を使用して治療する
化学療法には『ミトタン』という薬剤を使用します。ミトタンは抗がん剤ではなく、副腎にできた腫瘍を縮小させる内分泌療法薬です。
食欲不振や吐き気など…8割の人に副作用が
8割ほどの人に副作用が起こります。主な副作用は、食欲不振や吐き気です。また、消化器官や肝機能に障害が起こる可能性もあります。そのほか、眠気やめまいなど、神経に副作用が出ることもあります。
がんの状態によっても、ミトタンの適量は異なります。症状や、副作用の出かたによって、量を調整しながら治療します。
副腎がんは、転移や再発する?
1.副腎がんの転移について
腫瘍の大きくなる速度が速く、転移しやすい
副腎がんは、腫瘍が大きくなるスピードが速く、比較的転移しやすいです。転移しやすい部位は、『腎臓』や『脾臓』、『肝臓』などの周囲の臓器や『リンパ』です。
先に解説したように、外科手術で完全に除去できれば、再発する可能性は低くなります。
ほかのがんが転移し、副腎がんになっていることも
また、ほかのがん細胞からの転移で、副腎がんになっているということも考えられます。先に解説したように、転移しているかどうかは、MRIなどを使って確認します。
2.副腎がんの再発について
副腎がんは再発する可能性があります。
手術などの治療を一通り終えても、一定期間は定期的に検診を受け、再発がないかどうかを確認する必要があります。再発については、CTを使って確認します。
まとめ
副腎がんは珍しいがんで、発見が遅くなりがちです。
発見された時には、ステージ2以上であることが多く、手術を必要とします。手術も簡単ではありませんが、有効な治療法がほかにない、というのが現状です。何か気になることがあれば、すぐに病院へ行って、検査を受けましょう。
また、副腎がんの診断を受けたら、医師と相談しながら、しっかりと治療に取り組みましょう。