気付かぬうちに忍び寄る…「僧帽弁膜症」とは?3つの症状と治療法

僧帽弁膜症
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岡村 長門

監修

岡村クリニック

院長: 岡村 長門 先生

【職務経歴】
戸田中央総合病院
埼玉医科大学
公立昭和病院
岡村医院
岡村クリニック

多くの人が、自分がかかっていることに気付かない…『僧帽弁膜症(そうぼうべんまくしょう)』は、静かに忍び寄る心臓の病気です。

この記事では、僧帽弁膜症の症状や合併症、治療法について解説しています。

僧帽弁膜症について

1.僧帽弁膜症とは

僧帽弁膜症とは、心臓の中にある仕切りである『弁』のひとつ、『僧帽弁(そうぼうべん)』がうまく働かなくなってしまう病気です。

心臓の『弁』は心臓の中に4つ存在しており、血液の逆流を起こさないようにしている器官で、僧帽弁は主に左心房と左心室の間の血液の流れを調節する働きがあります。

2. 僧帽弁膜症の3つのパターン

僧帽弁膜症

僧帽弁膜症は、病状によって3種類に分けられます。

どの症状も、弁の障害から全身に送り出される血液の量が減り、心臓に負荷がかかります。症状が進むと心不全を引き起こします。

僧帽弁狭窄症

『僧帽弁狭窄(きょうさく)症』は、弁の間がすぼまって狭くなり、血液が流れるのに余分な抵抗がかかる状態です。

僧帽弁閉鎖不全症

『僧帽弁閉鎖不全症』は、弁の閉まり具合が悪くなり血液が逆流することのある状態をいいます。

両方の症状をあわせ持つ、狭窄兼閉鎖不全症

一つの弁で両方の症状をあわせもつ場合は、両方の名前を合わせて『狭窄兼(きょうさくけん)閉鎖不全症』と呼びます。

3. 他の病気が引き金に!僧帽弁膜症を発症する原因

僧帽弁狭窄症の原因

僧帽弁狭窄症は、子供の時にかかった『リウマチ熱』の後遺症として発症します。

以前は、子供時代にかかったリウマチ熱が原因で中年以降になってから発症する人が大半を占めていましたが、医学の進歩によってリウマチ熱の治療が迅速に発展し、僧帽弁狭窄症を発症する患者数も少なくなりつつあります。

それでも、やはり中年から高齢者の方には症状がみられることがあります。

僧帽弁閉鎖不全症の原因

加齢や『心筋虚血(しんきんきょけつ)』、感染症などが原因で発症します。また、リウマチによる原因が全体の1/3にのぼります。

ほかに『僧帽弁逸脱症』や『腱索断裂(けんさくだんれつ)』と呼ばれる症状が原因になって発症します。

『腱索』とは、僧帽弁を左室側から引っ張っている「ひも」のようなものです。
何らかの原因によって、この一部が伸びたり、切れたりして弁を支える力が弱くなることがあります。それにより弁の一部が左房側に落ち込んで、逆流が起きる状態が、腱索断裂です。

4. 合併症のリスク

僧帽弁膜症

心房細動(しんぼうさいどう)

僧帽弁膜症が引き起こしやすい合併症は、『心房細動』です。
これは、心臓のペースメーカーの役割を果たしている『洞房結節(どうぼうけっせつ)』の動きがうまく伝わらなくなる病気です。

心室の収縮が不規則になり、脈も不規則でやや速くなります。

動脈塞栓(どうみゃくそくせん)

上記で解説した心房細動によって、左房のなかに血栓ができると、血栓が血液中に流れだし血管をふさぐことがあります。
これによって、『動脈塞栓(そくせん)症』も同時に発症します。

自覚症状について

僧帽弁膜症

1.僧帽弁狭窄症のばあい

初期症状は『呼吸困難』

最初に出現する症状は、運動時の呼吸困難です。

女性は、妊娠とあわせて症状が現れ、病気の発見にいたることも珍しくありません。

また、かぜやインフルエンザなどの呼吸器感染から続いて呼吸困難が発生するケースもあります。

悪化すると咳や血液が混じった痰がでる

僧帽弁狭窄が進行すると、心不全の症状が強くなっていきます。

たとえば、夜に臥床することができないことや、発作性の呼吸困難などがあげられます。また、咳や痰の症状が悪化し、時には血液を含んだ痰が出ることもあります。

さらに悪化すると肝臓が腫れる・お腹に水がたまる

心不全に引き続き、肺高血圧(心臓から肺に向かう血液の血圧が高くなった状態)も見受けられる場合は、体の抹消部のむくみ、肝臓が膨れる、腹部に水分が溜まるなどの症状も出現するようになります。

2.僧帽弁閉鎖不全症のばあい

ゆっくり進行する場合は自覚症状がほぼ無い

閉鎖不全症の場合は、ゆっくり進行すると自覚症状がほとんどありません。そのため、病気の存在に気付かない方もとても多いです。

また、僧帽弁狭窄症とは異なり、心不全の症状はあまり見られません。

しかし、重症になると、少し体を動かしただけでも疲労感や呼吸困難があらわれます。

危険!病気が急速に進行する場合

急速に病気の悪化が進行すると、体が変化についていけません。症状が重い場合は命にかかわることまであります!

突如あお向けに寝た時に呼吸が苦しく感じる、肺の中に水分が溜まる『急性肺水腫』などの、急性の心不全症状が出現します。

咳込む、冷汗、唇や指先が青白くなるなどの症状も同時に起こります。

僧帽弁膜症の治療について

僧帽弁膜症

1.内科的治療

軽症~中等症の場合は、経過観察

軽症から中等症の弁膜症で自覚症状がない場合は、とくに治療をせずにレントゲン検査や、心臓超音波検査などで経過観察をします。

「たかが経過観察だ…」なんて軽視してはいけません。なぜなら、何年か後に進行してくるケースがあるからです。

中等症以上は薬でなおす

心臓の機能に異常がおこっていないのであれば薬で治します。

薬を処方する目的は、自覚症状を軽減することや、心筋の機能を維持することです。

重症の場合は外科手術をおこなうことも

投薬などの内科的な治療だけでは改善が難しい場合は、手術による治療が必要です。

2.僧帽弁狭窄症の外科的治療

僧帽弁膜症

どの術式で手術をおこなうかの判断は、弁の状態をみてから判断されます。手術には『人工弁に置き換えてしまう方法』と、『弁を切開して広げる方法』の2つがあります。

人工弁に置き換える

傷んだ弁を人工弁に置き換える、『僧帽弁置換術』が基本の手術です。

《適応されるケース》

・中等度以上の僧帽狭窄の場合

・弁の壊れ方が激しくて修復不可能な場合

・なるべく手術時間を短くしたい場合

・僧帽弁が石灰化している場合

弁の狭い部分を切開して広げる

弁の状態によっては僧帽弁を温存し、狭くなっている部分を切開して広げる手術をおこなうこともあります。この手術を『交連切開術』とよびます。

《適応されるケース》

・中等度以上の僧帽狭窄の場合で自己の弁を温存したいときに選択される術式

メイズ法による心房細動の外科手術

合併症として現れやすい心房細動の治療を僧帽弁手術の際に同時に施行されることがあり、術前から心房細動を伴った方に、試みることがあります。

《適応されるケース》

・開心術が必要で、メイズ法による回復が見込める場合

3.僧帽弁閉鎖不全症の外科的治療

僧帽弁膜症

僧帽弁閉鎖不全症の手術には、『弁を修復する手術』と、『人工弁に置き換える手術』、『メイズ法による外科的手術』の3つがあります。

弁を残して修復する

自分の弁を残して修復することで逆流を抑える手術です。

正しく機能しない部分を切除したり、人工の腱索を使って、傷んだ組織を修復したりします。

また、弁の輪郭が崩れていることも多いので、かたちを矯正するために人工のリングを縫い付けることもあります。

《適応されるケース》

最終的には、手術時に実際に弁を見て決定します。

病変の位置や形状から、リウマチ性でない場合には弁形成術が選択されることが高いです。

人工弁に置き換える

狭窄症で行われる手術とおなじで、傷んだ弁を取り除いて新しい人工弁と置き換える「僧帽弁置換術」が採用されることもあります。

《適応されるケース》

・弁の広範囲に感染がみられる場合

・弁の損傷が激しい場合

・手術時間を短縮したい場合

メイズ法による心房細動の外科手術

合併症として現れやすい心房細動の治療を僧帽弁手術の際に同時に施行されることがあり、術前から心房細動を伴った方に、試みることがあります。

《適応されるケース》

・開心術が必要で、メイズ法による回復が見込める場合

4.カテーテルによる治療(循環器内科での治療)

おもに僧帽弁狭窄症に対してカテーテルを使った治療がおこなわれます。

足の付け根からカテーテルを挿入し、カテーテルの先端についたバルーンを使って弁の狭くなった部分を押し広げます。

《適応されるケース》

・心臓内に血栓がない場合

・症状が重度でないこと

弁の硬さなどから総合的に判断して治療が行われます。

心臓手術に比べて患者さんの負担は少ないですが、治療が安全に行えるかどうか、慎重に検討していく必要があります。

まとめ

僧帽弁膜症は、ご本人が病気だと気付かないまま過ごすケースも多い病気です。

リウマチ熱にかかったことがある方や、心雑音(心臓かおかしな音がすること)があるといわれた方は、検査自体は、痛みもほとんどなく、それほど手間もかからないので、ぜひ一度お近くで心臓超音波検査を受けてみて下さい。

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