医師が解説!肝臓の働きや、肝臓がんなどの病気の治療・予防法

肝臓
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監修:簡野晃次医師

さまざまな肝臓病

肝臓の働き

肝臓の働き

肝臓は人間の体の中で最も大きな臓器です。肝臓は、腸で吸収、分解され、肝臓に運ばれたタンパク質や糖質、脂質を合成し、体に必要な別の成分に変える代謝という働きをしたり、肝臓に貯蔵したりします。

また、代謝の際に不要になったものを胆汁酸として排泄する働きや、体に入った毒素や異物を解毒する働きなどもあります。

このように、代謝・解毒・排泄を担っている肝臓は、沈黙の臓器と呼ばれます。肝臓の一部の機能が低下しても、残りの正常な部分がカバーしてくれるため、肝臓に障害が起きても自覚症状が現われにくいからです。

そのため、万一、肝臓病になって症状が出てきた場合、かなり病状が進行してしまっている場合が多いようです。また、再生能力が高く、手術で3分の1切り取っても再生することができます。

主な肝臓病

肝臓病の主なものには肝炎、肝硬変、肝がんなどがあります。

肝炎

A型肝炎

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された水や生の魚などの飲食物を口にすることによって感染します。急性がほとんどで、慢性化することはありません。東南アジアなどに滞在している間に感染することが多いのですが、現地の人は幼児期に感染して免疫を持っているため、成人がこの病気にかかることはほとんどありません。

しかし、日本人がそういう地域へ行くと、免疫がないためにA型肝炎を発病することがあります。けれども、A型肝炎ウイルスにはワクチンがあるので、A型肝炎になりやすい地域に行く前に予防接種をすることでA型肝炎を防ぐことができます。

B型肝炎

B型肝炎とC型肝炎は、ウイルス性の肝炎です。感染経路としては、B型肝炎は医療従事者などの針刺し事故や、覚せい剤などの薬物を打つ注射器の使い回しなどによる血液感染、性行為、母子感染があげられます。ウイルスに感染してから発病するまでの期間は1~6ヵ月で、慢性化することもあります。

B型肝炎

C型肝炎の感染経路は、輸血や血液製剤の使用、医療従事者などの針刺し事故など主に血液感染です。しかし、献血で供給された血液のHCV抗体(C型肝炎ウイルス抗体)を検査できるようになってからは、輸血などによる感染はほとんどありません。潜伏期間は、1~5ヵ月です。

B型肝炎は、大人になって初めて感染した場合、慢性することはまれですが、C型肝炎の場合は慢性化することがよくあります。慢性化してしまうと、自然治癒は難しく、長い年月をかけて慢性肝炎から肝硬変、肝細胞がんへと進行する場合が少なくありません。

しかし、現在はインターフェロンなどの治療法もありますからむやみに心配することはありません。血液検査などでC型肝炎ウイルスが見つかったり、疲れやすいなどの自覚症状がある場合は、一度病院を受診することをおすすめします。

肝硬変

肝硬変とは、肝臓の細胞が破壊され続けてそのために線維が増え、肝臓が萎縮して硬くなり、肝臓の機能が低下してしまう病気です。

肝硬変の原因

昔は肝硬変の原因の大半はアルコールだといわれていました。しかし、C型肝炎が発見されてからは、肝硬変の最大の原因はC型肝炎であり、全体の約70%弱にも上ることがわかってきました。2番目に多いのはB型肝炎で約20%弱、3番目がアルコールで約10%程度です。

ほかに自己免疫性肝炎なども肝硬変の原因としてあげられます。

肝硬変は、初期の頃にはほとんど自覚症状がなく、進行すると全身倦怠感や疲れやすい、食欲がないなどの症状が出てきます。さらに悪化して肝機能が落ちてくると、黄疸や腹水、女性化乳房(男性の乳房が大きくなってくること)など、さまざまな症状が現れてきます。

肝臓がん

肝臓からがんが発生した原発性肝臓がんには、肝細胞ががん化した肝細胞がんと、肝臓の中にある胆管の細胞から発生する胆管細胞がんとがありますが、肝細胞がんは日本など東南アジアやアフリカに多く、欧米には少ないといわれています。

男女比はだいたい7対3と男性の方が多く、男性のがんによる死因の第3位、女性の第4位に位置しています。

肝細胞がんの原因の約70%はC型肝炎で、B型肝炎は約20%で、肝硬変など慢性の肝障害からがんに進行するため、手術療法や放射線療法、化学療法などがんの進行度や合併症、全身状態に合わせた治療が行われます。

肝臓病を防ぐには?

感染に注意しよう

A型肝炎予防接種

肝臓病を防ぐには、まず肝炎ウイルスや汚染された食べ物に感染しないようにすることが大切です。A型肝炎が発病しやすい地域に行く場合は必ず予防接種を受け、現地での生ものの飲食は避けましょう。

B型肝炎やC型肝炎の場合は、血液感染や性行為感染に注意することが大切です。薬物依存者の間での注射器の使い回しや、無防備なセックスは危険です。入れ墨や鍼(はり)、ピアスの穴開けなども、道具の消毒が不十分だと感染が広がる恐れがあるので気をつけましょう。

供給血液のC型肝炎ウイルスの検査ができなかった1989年以前に輸血した人は、厚生労働省のホームページで医療機関が公表されていますので、気になる場合はチェックしてみましょう。

肝臓病を防ぐためのセルフケア

肝臓病を治療したり、予防したりするには、肝臓をいたわる食事をしましょう。肝臓の負担を減らし、健康を維持していくためには、栄養バランスのよい食事を1日3食きちんと食べることが大切です。

タンパク質を十分とる

肝臓はタンパク質や糖質など栄養素の代謝を担っています。その肝臓の機能が低下すると、肝細胞や代謝に関係する酵素がこわれてしまいます。肝細胞や酵素の主成分はタンパク質であり、これらを再生させるためには十分なタンパクを摂ることが大切です。

肝臓が弱っている時は、良質のタンパク質を1日に100g前後は食べるようにしましょう。

糖質や野菜もバランスよく食べる

脂肪肝(肝臓の中に脂肪が溜まった状態。生活習慣病を合併したり、心筋梗塞などを招きやすい)の場合は、糖質(炭水化物やお菓子、果物などに含まれる)を摂り過ぎないようにしなければなりませんが、糖質はエネルギー源として必要なものです。

ダイエットなどのために、糖質の摂り方が極端に少ないと、タンパク質がエネルギーとして使われてしまいます。そのため、糖質は1日に300~400gは摂るようにしましょう。野菜や果物もしっかり食べて、ビタミンを補給することも大切です。

アルコールは適量に留める

肝臓がアルコールを処理できる能力は、体重1kgあたり1時間に100~200mgです。アルコールを飲めば飲むほど肝臓に負担がかかってしまい、前の晩に飲んだアルコールが処理し切れなくて翌朝持ち越す、つまり二日酔いの状態になってしまうこともあります。

肝臓に負担をかけないようにするには、1日に日本酒1合、ビールなら中びん1本、ウイスキーならダブル1杯程度に留め、夜遅い時間まで飲まないようにしましょう。

便秘解消を

肝臓には、毒素を分解して解毒する働きがありますが、便秘になって腸内に有毒物質が発生し、それが肝臓に運ばれてきてしまうと、肝臓に負担がかかってしまいます。野菜や海藻など食物繊維の多い食品を食べたり、水分をしっかり摂ったり、適度な運動をしたりして、便秘を予防・解消しましょう。

心身の休息を

過労やストレスも肝臓病を招きやすいといわれています。規則正しい生活と十分な睡眠、ストレスの解消を心がけましょう。

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