医師監修!インフルエンザの予防接種、なぜ医院により値段が違うのか?

インフルエンザ
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いよいよインフルエンザの流行シーズンが到来し、すでにインフルエンザのワクチンを接種された方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はこのインフルエンザワクチンの接種費用をめぐる様々な問題についてお話したいと思います。

逃げられない在庫ロスと接種費用

インフルエンザワクチン1本にはだいたい1.1㏄くらいの量が入っています。大人に対する1回の摂取量が0.5㏄ですから、1本に大人2回分の量が入っているわけですが、インフルエンザワクチンには、開封したらその日のうちに使い切らなければならないという特性があるんです。

ですから開封した日に接種希望者が2人来れば何の問題もないのですが、1人しか来なければ半分は廃棄しなければならないんです。そのワクチン半分のために医療機関が医薬品卸に支払った仕入れ代金が回収されることはなく、まるまる医療機関の持ち出しになってしまうんです。

一方、ワクチンの接種費用はというと、65歳以上の高齢者については自治体がインフルエンザワクチンの費用の一部を補助しており、東京都の場合は2,270円が公費で補助され、高齢者自身の自己負担は2,200円となっています。要するに東京都におけるワクチン接種の公定価格は4,470円(その内自己負担2,200円)なわけです。

インフルエンザワクチンの接種は自費診療ですから、接種費用は公費補助の対象である高齢者などを除き、医療機関が自由に決めてよいことになっています。ワクチン1本の仕入れ値はだいたい2,100円くらいですから、仕入れ値と在庫ロス(場合によっては開封したものを廃棄しなければならないため)、医療機関の人件費などを考慮すると、接種費用は4千数百円、ちょうど東京都の公定価格くらいが妥当な水準でしょう。

患者集めのためにあえて赤字で接種する医療機関も

ところが、医療機関のなかには、ごく一部ではあるのですが、インフルエンザワクチンの接種を赤字覚悟の1,000円程度で実施しているところがあります。こうした医療機関は、赤字分を患者を集めるための「広告費」と考えているんです。

インフルエンザワクチンの接種が完全な自費診療であればいいですよ。でも公費補助対象の高齢者からは自己負担として2,200円をいただいているわけです。そうなると「あそこの医療機関は1,000円でやってくれるのに、2,200円もとるのはおかしくないか」「なぜ4,000円もかかるのか」と適正価格で実施している医療機関の方が非難を浴びてしまうわけです。

まあ、赤字覚悟で1,000円でやっていただいてもかまわないですが、そうであれば、「うちは赤字覚悟で低い料金でやっているんですよ」ときちんと説明してもらいたいものです。

さまざまな問題も突き詰めれば国の責任

インフルエンザワクチンの在庫ロスが避けられない理由はほかにもあります。インフルエンザワクチンの製造株(※成分構成を意味する医学用語。金融の株ではない)は、その年にどのタイプ(Aソ連型、A香港型、B型など)のインフルエンザがはやるのか、国立感染症研究所が検討し、検討結果を受けて厚生労働省が決定・通達しています。

このように製造株が毎年変わるので、「今年は買いすぎてあまっちゃったから来年使おう」ということができないんです。余ったら廃棄するしかありません。

だったらワクチンが足りなくなった医療機関に売ればいいじゃないかと思うかもしれませんが、医療機関は医薬品を販売することが法律上できません。

しかも、他の医薬品などと違い、インフルエンザワクチンの製造には時間がかかりますから、例えば、インフルエンザが当初の予測(インフルエンザワクチンの製造量も毎年、国によって決められています)に反して大流行し、在庫がなくなりそうだからと医薬品卸に頼んでも、すぐに納品されるという保障がないんです。だから医療機関は在庫ロスを覚悟で仕入れざるを得ないんですね。

私は、こうしたワクチンの特性をまったく考慮せず、自治体や医療機関すべてを委ねてしまっている国の姿勢にこそ問題があると考えています。

医療費を削減したいなら予防にこそお金をかけるべき

いま国は医療費を抑制しなければ医療保険がもたなくなるといって、医療費を削る政策を進めています。日本の医療保険は、病気になった場合にしか給付されず、インフルエンザワクチンのような予防接種、健康診断などのいわゆる「予防」は医療保険の給付対象外となっています。

でも考えてもごらんなさい、予防にお金をかけて病気にならないようにしたほうが、よっぽど医療費が節約できますよ。インフルエンザにかかったらそれこそ数千円の医療費が使われます。厚生労働省が一生懸命、医療費(診療報酬)を20円削って、30円削ってとやるよりも疾病予防を徹底する方が明らかに効率的ですよ。

ですから国が国策としてインフルエンザワクチンの集団接種を徹底する。児童であれば学校で集団接種をする。そうすれば個々の医療機関で在庫ロスが生じなくなりますし、不当な接種費用をとる医療機関もなくなる。今みたいに自治体によって、ワクチンの公定価格(公費で補助する金額と自己負担額)がバラバラだというおかしなこともなくなる。

インフルエンザにかかる人が少なくなるので国民にもメリットがありますし、国が望んでいる医療費の削減も達成できるわけです。国がこうしたことをしないからいけないんですよ。

あるいは、赤字だ、赤字だといっている医療保険者(健保組合など)。医療保険者が被保険者を対象に会社などで集団接種をすればいいのではないでしょうか。被保険者の使う医療費が減れば保険財政も楽になるわけで、無駄な保養所を建てるよりもよっぽど意味があることだと私は思います。

[2008.1.16公開]

筒野晃次医師のプロフィール

医師プロフィール写真

医師/簡野晃次
医療法人社団 友輝会 エルクリニック 理事長
医療法人社団 若草会 横須賀中央眼科クリニック 理事長
医療法人社団 スペクトラム会 東京血管外科クリニック CTO
―経歴―
昭和63年3月:日本医科大学卒業
昭和63年6月:日本医科大学付属病院形成外科入局
平成7年6月:西新井皮膚科形成外科院長就任
平成18年10月:医療法人社団友輝会エルクリニック理事長
平成19年4月:医療法人社団若草会横須賀中央眼科クリニック理事長
平成19年6月:医療法人社団スペクトラム会東京血管外科クリニックCTO

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